2013年3月13日(水)
きょうの潮流
北海道、岩手に次ぎ全国で3番目にひろい福島県。太平洋の沿岸部から新潟との県境にある奥深い山地まで、東西に長い。その中部に連なる安達太良(あだたら)連峰は四季折々に雄大な自然を楽しめ、温泉も豊富です▼ところが、原発事故による風評被害で観光客が激減。この冬のスキー客も通常の半分以下で、休業する宿や店も目立ちます。震災2年でマスメディアに大きくとりあげられることにも、町民の心境は複雑です▼ひとくちに福島といっても、それぞれの地で様相は異なります。進まない復興を前に、県民同士の支えあいはつづいています。客離れに苦しむ岳(だけ)温泉では、同じ二本松市で仮設生活をおくる浪江町の人たちを入浴に招待しています▼全国にひろがる絆に励まされながらも、被災者の不安は消えません。ふるさとをうばわれ、帰れる見込みもない。避難生活が長引くなか、新たな生活拠点を探そうにも、国や東電は責任をもたないのが現状です▼いまも原発20キロ圏内で立ち入りが制限されている警戒区域。その周辺をまわってみると、街は存在するのに人の気配がありません。目につくのは、除染の廃棄物。月日はたっているのに、生活のにおいがしない異様な光景は変わっていないのです▼楢葉(ならは)町で一時帰宅した初老の夫婦に出会いました。新築したばかりの家を残し、いわき市に避難。まだ家族も散り散りだといいます。「ここで生まれ、ここで育ち、ここでみんなに囲まれて逝くと思っていた。わたしたちの人生を返してほしい」