2013年3月12日(火)
主張
賃上げの機運
非正規雇用者の改善も同時に
小売りやサービス企業を中心に労働者の賃金を上げる機運がおこっています。日本共産党は「デフレ不況」から脱却するために、賃上げと安定した雇用の拡大を経済界に求めるよう政府に直接要請し、国会質問でも何度もとりあげてきました。この機運を全産業、全労働者に広げることが重要です。政府は、巨額の内部留保をもち十分な体力がある財界・大企業に正面から賃上げを要請するべきです。
一時金でなくベースアップ(ベア)をすること、パートなど非正規雇用の人を含めるなど全体を底上げする賃上げ対策が重要です。
対象は一部の正社員
口火を切ったローソンは、若い世代の社員3300人の年収を一時金で平均3%引き上げると発表しました。セブン&アイ・ホールディングスはグループ54社の社員5万3500人の賃上げです。傘下のイトーヨーカ堂の場合、賃金を0・26%(907円)底上げするベアを実施し、定期昇給(定昇)とあわせて平均5229円アップになるとしています。一部パートの時給も上げます。ファミリーマートは、社員2700人に賞与と定昇をあわせて2・2%増です。
この動きには、単に積極的というわけにはいかない大きな問題点が浮かび上がっています。ローソンが上げる3%は、ベアではなく、業績の変動で上げ下げできる一時金です。対象者も限られています。同社は、社員数が約6400人、店舗数は全国1万457店にのぼります。パート、アルバイトは約18万人といわれ、時給は各地方の最低賃金すれすれの金額です。ごく一部の正社員の一時金アップにすぎません。
セブン&アイHDは、賃上げ対象が5万人余ですが、社員数は1日8時間労働の非正規雇用者を含めて約13万4700人です。各店舗に正社員に倍するパート、アルバイトがいます。多数の労働者が賃上げの対象外です。それだけでなくイトーヨーカ堂は昨年、8600人の正社員を半減し、パートの比率を9割に高め、人件費を100億円削減する方針を打ち出して実行中です。こういう強引な人件費削減の一方で、もともと毎年自動的に上がる正社員の定昇とベアを合わせた1・5%増で労働者の生活が良くなるのか、首をかしげざるをえません。
異例なことですが、首相官邸のホームページに、安倍晋三首相の要請に応じて「報酬引き上げ」を実施した企業一覧の掲載がはじまりました。しかしいまの動きは、恒常的な賃上げになる回答をしたのはごく一部で、その何十倍ものパート、アルバイトの改善になっていないのが特徴です。これでは働く人の所得増で「デフレ不況」から抜け出す道は開かれません。
全体の底上げが重要
正社員と非正規雇用者との待遇格差がさらに広がり、増え続ける非正規雇用者が最低賃金に張りついた低い時給に据え置かれる状態を政治の責任で早く正さなければ、日本社会のゆがみがますます拡大します。政府は、大企業がもつ巨額の内部留保を一時金や賞与でなくベースアップに活用することを強く要請すべきです。さらにこのままでは放置されかねない非正規雇用者を含む全体の賃金を底上げするために、最低賃金の引き上げがどうしても必要です。政府が果たすべき重要な役割です。