2013年3月10日(日)
主張
福島事故2年
「原発ゼロ」の逆行は許さない
東日本大震災のあと、地震があるたびに原発に異常がなかったか気になるという方も、多いのではないでしょうか。震災で炉心が壊れ、建屋も爆発した東京電力福島第1原発の姿は、原発の危険性を人びとの目に焼き付けています。
東日本大震災と福島原発事故の発生から2年。10日には全国で「原発ゼロ」の行動も行われます。いまだに故郷に帰れない被災者に心を寄せ、支援を強めるとともに、震災の復興と原発からの即時撤退を求める行動を、全国から広げようではありませんか。
いまだ「収束」ならず
東日本大震災で大きな被害を受けた東電福島原発の現状が、事故の「収束」とは程遠いことは明らかです。震災が発生したとき運転中だった第1原発の1〜3号機は原子炉が壊れ、冷却できなくなって燃料棒が溶け出しています。放射線量が高く原子炉には近づけないので、どうなっているかさえくわしくわかりません。定期点検中だった4号機は原子炉の上の燃料プールに大量の使用済み燃料が残っており、爆発で破損した建屋の安全性が懸念されています。
壊れた炉心の核燃料も燃料プールの使用済み核燃料も冷却し続けなければならないため、注水された水が放射性物質で汚染されてたまり続けます。燃料プールから核燃料を取り出すのにも長い期間かかる見通しです。原発そのものを廃炉にするめども立っていません。その間も放射性物質が大気や水中に流れ続けます。
震災発生から9カ月で、当時の野田佳彦首相が原発事故は「収束した」と発表しました。しかしそれから1年あまりたち、安倍晋三首相でさえ「とても収束したとはいえない」と認めざるをえません。しかし、「収束」宣言そのものは撤回しようとしません。「収束」を前提に避難区域や除染計画などの見直しを進めており、責任を問われるのを恐れるからです。
福島原発事故は、原発がもともと過酷事故(シビアアクシデント)を起こす危険性をはらんでおり、いったん事故を起こせばコントロールする手段がないことを浮き彫りにしました。現在、福井県の大飯原発の2基をのぞくすべての原発は停止していますが、安倍首相は「安全」が確認された原発は再稼働させると明言しました。
福島原発事故の現状を見れば「安全」な原発などありえないのは明らかなのに、安倍政権は、民主党政権が打ち出したまったく不十分な「2030年代に原発稼働ゼロ」の目標さえ、「ゼロベース」で見直すとしています。
事故が起きる前は、過酷事故は起きないから「安全」だといいはり、事故の後は過酷事故が起きても「安全」対策をとれば大丈夫だと、いい逃れるのは、なにが何でも原発を稼働させるための「安全神話」そのものです。「原発ゼロ」の逆行は許されません。
「即時ゼロ」の実現こそ
原発は何年か先にゼロにすればいいというものではありません。「即時原発ゼロ」の実現こそ重要です。原発がわずか2基しか動いていなくても、昨年夏も今年の冬も電力がまかなえたことを見ても「即時ゼロ」は可能です。原発からの撤退を直ちに決断し、代替エネルギーの開発などに本腰を入れて取り組むことこそ、福島原発事故の教訓を生かす道です。