2013年3月9日(土)
海外陸上輸送を容認
「邦人保護」で自衛隊法改定案
与党チーム
自民、公明両党は8日、「在外邦人の安全確保に関するPT(プロジェクトチーム)」を開き、海外で緊急事態が起きた場合、自衛隊が邦人を車両で陸上輸送できるよう、自衛隊法の改定を求めた提言をまとめました。
アルジェリアでの人質事件を念頭に置いたもので、来週にも安倍晋三首相に提出し、今国会中の改定を狙います。
現行法では、「輸送の安全」が確保されている場合に限り、自衛隊機や艦船(搭載ヘリコプターを含む)による邦人輸送が認められています。提言では、これに加えて自衛隊車両による陸上輸送を盛り込みました。
さらに、安全確保の有無に関わらず、「当該輸送を行う地域において、輸送を行うことが可能と認めるとき」などの表現に変える案も提案。現行規定と両論併記にしました。
武器使用基準の緩和については自公両党で折り合わず、「現行法で相当程度が対応可能とみられる」と踏み込みませんでした。一方、武器を使って保護できる対象者を、「保護の下」にあるとした現行法の規定を「管理の下」に変えるよう提案。これにより保護の対象が広がるとしています。提言では自衛隊法改定に加えて、「国際テロ」への対処を口実に「秘密保全の強化」を盛り込みました。
解説
実効性乏しく危険性高める
与党PTの提言は、アルジェリア事件を口実にした新たな自衛隊の海外派兵につながる動きとして警戒する必要があります。
ただ、どの国も外国の軍隊をそう簡単には受け入れません。とりわけアルジェリアは外国軍の介入を強く拒否しています。仮に陸上自衛隊の輸送部隊が受け入れられたとしても、ルートの確保や燃料の補給などの問題があり、未知の地ではほとんど不可能です。
また、自衛隊車両は攻撃対象になりやすく、邦人をかえって危険にさらすとの指摘もあります。与党PT案は実効性に乏しいといわざるをえません。(竹下岳)