2013年3月7日(木)
チャベス大統領死去
変革は銃でなく投票で
自主的な地域統合に貢献
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5日に死去したベネズエラのチャベス大統領は、軍事政権の弾圧や武装闘争の影響の強かった中南米地域において、政治変革を「銃弾ではなく投票箱を通じて」実現する流れを定着させ、米国いいなりを拒否した自主的な地域統合の推進に貢献した点で特筆される政治家でした。
ベネズエラは1958年以来続いた二大政党による支配のもとで、豊富な石油収入が一部の富裕層やそれに連なる政治勢力に握られ、国民の大多数が貧困に苦しんでいました。こうした古い支配体制の腐敗を厳しく批判し、貧困層の救済を唱えて98年の大統領選で初当選を果たしたのがチャベス氏でした。
翌年発足したチャベス政権は、新憲法を制定し、国民生活向上のための改革に着手しました。チャベス政権は、国民投票や各種選挙を連続的に実施し、改革の是非を国民に問いながら変革を進める姿勢を貫いてきました。政権発足以来、昨年の大統領選まで少なくとも12回の投票・選挙を実施、そのうち11回で勝利し、国民の支持を確認してきました。
2002年に既得権の侵害を脅威と見なした大土地所有者や財界と軍の一部が結託したクーデター事件が発生。チャベス大統領は一時拘束されたものの、民主主義を守れと立ち上がった広範な国民の抗議行動を背景に職務に復帰を果たしました。
国営石油公社の一部幹部による特権的な支配を改変し、石油収入の多くを国庫に入れることに成功した後は、無料の診療所設置や識字運動、奨学金支給による就学率の向上などの社会開発計画を次々具体化しました。
外交面では特に南米諸国連合(UNASUR)など、中南米の自主的な統合で積極的なイニシアチブを発揮。11年の中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)創設では首脳会議の議長を務めました。
近年では、政権与党幹部に関わる汚職や政策推進上の不効率さ、凶悪犯罪の横行などの問題も抱えていました。
中南米では、ベネズエラの変革に続いて、ブラジル、アルゼンチン、ボリビアなど新自由主義からの脱却と対米自立を主張する勢力が大統領選で勝利を収めていきました。投票を通じた変革を重視するというチャベス政権の姿勢が、各国の変革に少なからぬ影響を与えたことはまちがいありません。 (菅原啓)
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