2013年3月7日(木)
きょうの潮流
「反米の闘士」といわれたチャベス・ベネズエラ大統領が米大統領とあいさつをかわして握手をした。記者席でもどよめきがわき、変化への期待に包まれました▼2009年4月17日、カリブ海の島国トリニダード・トバゴで開催された第5回米州サミット開幕直前のこと。その年の1月に就任したばかりのオバマ大統領が、会場のホテル内でチャベス大統領に歩み寄り、握手をしたのです▼翌18日の朝、今度はチャベス大統領が南米諸国連合とオバマ大統領との首脳会談の席上、1冊の歴史書をオバマ氏に贈りました。この本は、ウルグアイの評論家、エドゥアルド・ガレアーノ著の『収奪された大地―ラテンアメリカ五百年』。米国や欧州諸国が中南米への経済的政治的介入の過程を解明した著作でした▼チャベス氏は1999年に大統領に就任して以来、対米自立のもとでの南米での地域統合を推進。南米諸国連合もその一つ。その首脳との会談にも乗り出したオバマ氏に対し、「理性的な男だ。前任者とは違う」と語っていました▼それから2年後の11年6月にみずからのがんを告白。12年10月の大統領選で4選を果たしたものの就任宣誓式を行うことができないまま激動の生涯に終止符を打ちました▼米国の中南米専門家マイケル・シフター氏はチャベス氏の死去にあたって外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』(電子版)で「中南米地域で誇りと政治的な自信を呼び起こし、左翼革命の夢に生気を回復させた」と語っています。