2013年3月6日(水)
環境・格差など重視
中国全人代始まる 温首相が報告
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【北京=小林拓也】中国の第12期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第1回会議が5日、北京の人民大会堂で開幕し、今大会で引退する温家宝首相が最後の政府活動報告を行いました。
温首相は、大気汚染などが問題となっている環境対策では、「経済発展と資源・環境との矛盾が日増しに激しくなっている」と指摘。「大気・水・土壌などの大衆の切実な利益に関わる突出した環境汚染問題を解決し、人民の健康を守る」と決意を表明しました。
また、「都市・農村間と地域間の発展の格差、住民の収入格差が大きい」と格差問題にも言及。所得分配の具体策を早急に打ち出し、「収入格差を縮小し、発展の成果をより公平に全人民に行き渡らせる」と語りました。
「住民の持続的で安定した収入増を促進」「内需の拡大」を強調したものの、昨年11月の中国共産党大会で打ち出した2020年までの収入倍増の具体策には触れませんでした。今年の経済成長率目標は昨年と同じ7・5%前後に設定しました。
また、「一部の人々の生活は困難だ」と述べ、年金受給額の1割引き上げ、最低生活保障受給者の補助基準引き上げ、児童養護施設の整備、重病患者の医療保障確立など社会保障を充実させる方向を提起しました。
民主主義の面では、「人民に権力を監督させ、太陽の下で(オープンに)権力を運用させる」と強調。汚職・腐敗問題について、「権力が過度に集中し、制約を受けていない状況を制度面から改変し、清廉潔白な政府をつくる」と表明しました。
温首相はまた、「発展に依然として多くの矛盾と問題が存在している」と言及。政府の仕事の欠点や不足により生じたものもあり、「国家と人民に対し強い責任感をもって、問題を速やかに解決し、人民の期待を裏切ってはならない」と呼びかけました。
報告の最後に、「偉大な祖国にはかつてないほど明るい展望がある」と習近平党総書記ら新指導部にエールを送りました。全人代の会期は17日まで。閉会後、李克強氏が新首相として記者会見する予定です。
国防予算、10・7%増
25年連続2桁の伸び
【北京=小林拓也】5日開幕した中国の全国人民代表大会にあわせて財政省がまとめた2013年の中央・地方予算案報告によると、中国の13年の国防予算は前年実績比10・7%増の7406億2200万元(約11兆1100億円)に達しました。実績比では3年連続の2桁増。当初予算比では約10・5%増で、25年連続の2桁増になります。
中国の国防費は米国に次ぐ世界2位の規模となり、過去6年で2倍以上に急増しています。
温家宝首相は政治活動報告で「国防と軍隊の現代化推進を加速し、強固な国防と強大な軍隊を建設し、国家の主権・安全・領土を断固として守る」と強調。また、「国家海洋権益を守る」とも表明し、周辺諸国との領土問題で強固な姿勢を示しました。