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2013年3月2日(土)

個人情報を国が収集・利用

政府 マイナンバー法案提出

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 政府は1日、日本で暮らすすべての人に番号を付け、幅広い個人情報を国が一元的に収集・利用する「共通番号制」(マイナンバー)法案を国会に提出しました。政府・与党は2016年からの利用に向けて、民主党などとも談合して今国会での成立をねらっています。

 共通番号制は、年金、医療や介護などの社会保障の給付、税金・保険料の支払いや所得情報など、これまで個別に管理されていた国民の個人情報を一つの番号で一元的に把握。給付と負担を連動させ、給付の削減や負担増を押しつけるのが狙いです。

 利用する分野は年金、労働、福祉、医療、住宅、税、災害など広範囲に及んでおり、国による一元管理と情報漏えいの危険性があらわになっています。

 同法案は、12年に当時の民主党政権が提出。自民、公明を加えた3党で修正合意していましたが、昨年秋の衆院解散で廃案となっていました。

 3党合意に基づいて出された今回の法案では、利用範囲に新たに公営住宅の管理や日本学生支援機構の奨学金利用を追加。施行後3年をめどに民間にも利用拡大を検討することが明記されており、際限のない利用拡大を招く危険性を抱えています。情報漏えい防止では、第三者機関を設置して立ち入り検査などを行うというほとんど実効性のない対策しか決めていません。

 政府はシステム構築に3000億円にものぼる費用が見込まれるとしていますが、これもとどまる保証は何もありません。

解説

社会保障削減がねらい

漏えいの防止できない欠陥

 国民の反対でいったん廃案となった「共通番号制」(マイナンバー)法案が、自公政権のもとで改めて提出されました。指摘されてきた問題点や危険性が和らぐどころかいっそう拡大するものとなっています。

 共通番号制について政府は、正確な所得が把握でき、低所得者対策に活用できるとして消費税増税とセットで必要としてきました。

 しかし、消費税増税が社会保障拡充のためではなく、大型公共事業の大盤振る舞いと大企業・富裕層減税の財源のためであることは、昨年来の消費税増税法案をめぐる審議と、自公政権が出した予算案を見ても明らかです。

 しかも、増税とセットだといっていた「低所得者対策」は存在しません。所得把握についても、民主党政権時代から「全ての取引や所得の把握は非現実的」と認めており、番号制の必要性はまったくありません。

 それでもこの法案を狙うのは、社会保障をさらに削減し、国民に税・保険料の負担を強いるためです。民主党政権時代から「税の執行を強化していくために重要な法案だ」(民主党政策調査会の田村謙治副会長=当時)と認めるとおり、給付の削減と税・保険料の徴収強化に利用するためです。今回の法案では民主党政権の法案よりさらに利用対象を拡大しました。

 しかも、膨大な個人情報が集まるだけに、ひとたび漏えいすれば重大な被害を招く危険性があります。すでに導入している米国や韓国では、他人による「なりすまし」やプライバシー侵害が多発しています。ところが、日本政府は「ありとあらゆる情報社会がそういう問題を抱えている」(内閣府)と開き直り、まともな対策もとっていません。

 社会保障の切り捨てを進めるだけで、必要性もなく、プライバシー侵害と情報漏えいの欠陥を抱えた法案は廃案にするしかありません。(矢野昌弘)


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