2013年2月28日(木)
全16州 大学授業料無償化へ
徴収の2州が廃止方針
バイエルン州 有権者の14.4%署名
ドイツ
ドイツ全州で大学授業料が廃止されることが決定的になりました。ドイツでは州レベルで、学生に大学授業料を課すかどうかや授業料の額などが決められますが、全16州のうち大学授業料を徴収していた2州で相次いで廃止の方針が明らかになりました。(片岡正明)
1月20日に州議会選挙が実施された北部のニーダーザクセン州では、与党だったキリスト教民主同盟(CDU)が後退し、敗北。大学の授業料無償化を掲げる社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党が1議席差で過半数を占め、連立政府をつくることで合意しました。連立協定に大学授業料の無償化が盛り込まれることは確実視されています。
南部のバイエルン州では、学生たちが長年、大学授業料の無償化を要求していました。今年1月には、州政府に無償化を求める国民請願署名に取り組み、短期間に有権者の14・4%にあたる署名を集めました。
国民請願は、2週間以内に有権者の10%以上の署名を集めた場合、州議会に採択を求めることができる制度。議会が拒否した場合は、州の住民投票が行われます。
国民請願署名の勢いを見た与党、キリスト教社会同盟(CSU)と自由民主党(FDP)のトップは23日、署名の内容を認める法案を議会で通すことで合意。今年9月に行われる総選挙をにらんで方針を転換したと報道されています。
2州とも、これまで1学期(半年)ごとに300〜500ユーロ(1ユーロ=約120円)徴収していた授業料を今年9月の冬学期から廃止する方向です。
バイエルン州の場合は、大学授業料の無償化にとどまらず、職業教育に通う学生に年1000ユーロ支給することや、保育料の減額なども含まれます。
ドイツでは1960〜70年代に、社会的弱者にも教育の機会を与えるよう求める学生や青年の運動が高まり、72年から大学授業料は無償化されました。ところが2005年に憲法裁判所が学費徴収を全国一律に禁止する法律を無効と判断したことから、授業料を徴収する州が一時は半数近くになりました。
授業料徴収の流れを変える力になったのが、グローバル化や政府の構造改革によって広がる格差と不公平感を背景に盛り上がった国民の運動です。バイエルン州では、学生や労組を中心に大学授業料廃止同盟がつくられ、住民運動が広がりました。