2013年2月24日(日)
「聖域」確保 保証なし
TPP交渉参加へ
安倍晋三首相は22日、オバマ米大統領との首脳会談で環太平洋連携協定(TPP)に関する「共同声明」を発表し、交渉参加へ向けて動きだしました。
(北川俊文)
国民への公約裏切り
「共同声明」は、日本がTPP交渉に参加する場合、「全ての物品が交渉の対象になる」ことを確認しました。また、交渉参加国首脳(9カ国=当時)が2011年11月12日に発表した「TPPの輪郭」に示された「包括的で高い水準の協定を達成する」ことも確認しました。つまり、「共同声明」は、例外なしに関税と非関税障壁の撤廃を目指すTPPの基本に変わりがないことを再確認したのです。
言葉のすり替えで
一方、「共同声明」は、「最終的な結果は交渉の中で決まっていく」「TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」とも述べています。
これをもって安倍首相は、「『聖域なき関税撤廃』ではないことが確認された」とし、交渉参加の決定を急ぐ構えです。
しかしこれは、言葉のすり替えで国民を欺くものです。
「聖域なき関税撤廃」が問題になるとき、国民の関心事は、日本の経済と国民生活に重大な影響のある品目を「聖域」として関税撤廃の対象から外せるかどうかです。「共同声明」は、全ては交渉の結果しだいだというにすぎず、「聖域」を担保するものではありません。
TPP交渉は、関税分野だけで行われているのではありません。だからこそ、自民党は先の総選挙で、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」を含む6項目(別項)を公約に掲げました。
「『聖域なき関税撤廃』ではないことが確認された」という安倍首相の強弁をもってしても、TPP参加は、自民党自身が国民に公約した6項目への裏切りです。国民皆保険制度、食の安全安心の基準、投資家対国家紛争(ISD)条項への反対などは、ほごにされてしまいます。
主権尊重ルールを
自民党が掲げた6項目の公約を果たすなら、TPP交渉には参加しないという選択しかありません。
同時に、6項目が全てだというわけではありません。
TPP交渉は、投資、金融、知的財産権なども含む21分野にわたる広範な交渉です。貿易や投資の「自由化」の名で弱肉強食の市場原理主義、規制緩和至上主義を参加各国に押し付けるものです。
日本の経済・社会制度、農業・食料政策などが外国との協定によって変えられるTPPのような協定ではなく、各国の経済主権や食料主権を尊重した貿易ルールの確立を目指すことこそ必要です。
総選挙で自民党が公約した6項目
(1)政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうようなISD(投資家対国家紛争)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。
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