2013年2月22日(金)
福島第1汚染水
除去装置試運転を容認
規制委会合
原子力規制委員会の東京電力福島第1原発の廃炉までの作業を監視・評価する専門家会合が21日開かれ、敷地内のタンクに貯蔵している約25万トン(5日現在)に達する放射能汚染水から62種類の放射性物質を除去する「多核種除去装置」(ALPS)の試験運転について「やむを得ない」とする評価案を示しました。出席した専門家も「方向性について」了承しました。しかし、同装置で除去できない放射性のトリチウムの取り扱いや、装置で発生する高線量の2次廃棄物の保管問題、汚染水が漏えいした場合の安全対策など課題は山積みです。
「海へ放出」東電断念せず
現在、1〜3号機原子炉内の溶融した核燃料を冷やすため1日400トン近くの水が注水され、燃料に触れた汚染水は原子炉建屋地下やタービン建屋地下に約10万トンたまっています。さらに地下水が建屋地下に1日400トン流入して、汚染水の量が増加しています。
東電はこれをポンプでくみ出し、セシウム吸着装置で放射性セシウムなどを減らした水は、再び原子炉の冷却に利用しています。それ以外の水はタンクに貯蔵。これには、人体に影響がある放射性ストロンチウムが1立方センチ当たり10万ベクレルなど高濃度の放射性物質がなお含まれています。
東電はタンク容量を70万トンまで計画していますが、2年半後には不足するといいます。このため東電はALPSを運転し、タンクの汚染水から62種類の放射性物質を除去して、タンクの水を入れ替える計画です。
当初、同装置の試運転は秋の予定でしたが、処理で新たに発生する高線量の2次廃棄物を保管するポリエチレン製容器の安全性が問題になり、規制委は落下試験などによる容器の強度が確認されるまで、運転を許可しませんでした。
専門家会合に示された評価案では、放射性ストロンチウムなどを含む汚染水を25万トンも貯蔵しておくよりも、装置で処理する方がより危険度が低いとして、ALPSの試験運転への移行は「やむを得ない」としました。
ただ、運転した場合、敷地境界の放射線量が高くなることも示されています。
また評価案は、2次廃棄物を保管する容器の落下試験を現場の実態に沿って実施することや、汚染水が漏えいした場合に事態を収拾する体制の実現可能性や、装置で新たに発生する高線量の2次廃棄物を20年間貯蔵する際の容器劣化などの問題などについて早急な検討を東電に求め、試験運転はその確認が完了してからとしています。
ALPSの運転については地元の漁業関係者が反対しており、先月、東電が処理水を海に放出する方針を明らかにして、怒りの声が上がっていました。
東電はこの日も「関係者の了解なしに海へ出さない」と述べ、海への放出計画を断念していません。
しかし、専門家からは、装置でほとんど除去できない放射性のトリチウムが国の基準の数十倍含まれることを明記しない姿勢を疑問視する声がありました。