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2013年2月20日(水)

「いじめ」のない学校と社会を

共産党の提案と取り組み

教育・社会の改革と重ね

党いじめ問題対策チーム責任者・書記局長代行

山下芳生さんに聞く(下)

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 ――「いじめ」解決を支える条件整備にもふれていますね。

 「提案」では、教員の「多忙化」解消などの条件整備、深刻なケースに対応する「いじめ防止センター」の設立、「いじめ」防止に関する法制化、教育行政の数値目標化を止めるなどの施策の改善をあげています。

 法制化は、学校などで安全に生きることを子どもの権利として重視し、それを保障するための学校の安全義務、行政の義務を定めるものです。同時に、子どもへの厳罰化など間違った方向の法制化を批判しています。 

 ――根本的な対策として、教育や社会の改革も呼びかけていますね。

 はい。それが大きな二つ目の柱です。

 「いじめ」が深刻化し、日常化しているのは、子どもたちが強いストレスの下におかれ、過去とは比べられないような、いら立ちを抱えているからではないか、と考えました。

 その一つが教育のあり方です。受験競争が低年齢化し、お稽古ごとも増え、「時間的ゆとりがない」という子どもが4割います。国際的な調査では、「孤独を感じる」という子どもの割合が日本はダントツに高く、「ありのままの自分でいい」という自己肯定感情も低いです。また勉強が分からない、つまらないということも大きなストレスの原因になっています。

 社会に目をむければ、国民の中に「貧困と格差」が急速にひろがっています。競争万能の考え方が社会に浸透し、人間的な連帯が弱まり、弱い立場の人々を攻撃するような風潮も強まりました。それを正当化するため、競争に負ける方が悪いという「自己責任論」の考え方も広がっています。

 こうしてみると、社会自体が「いじめ社会」とも言うべき傾向を強めていると言えます。親たちのゆとりも奪われ、子育てへの不安も強まっています。

 このように社会全体がギスギスしていることは、子どもにいい影響を与えるはずがありません。

 のびのび育つべき多くの子どもたちが、いら立ちをためこんで、孤独感につつまれている。これは、競争的な教育制度や社会のあり方が、子どもの成長といよいよ相いれなくなっていることを示していると思います。

 ――社会や教育の改革とともに、子どもの参加を強調していますね。

 子どものいら立ちや孤独感の裏には、「自分らしく生きたい」「本音で語り合える友だちがほしい」などの前向きな願いや鋭い正義感があると思うんですね。その力が発揮されることを信頼しよう、と。

 そのためには、子どもの声に耳をかたむけ、子どものさまざまな社会参加を保障することが大切です。これは子どもの権利条約の精神とも合致するものです。

体罰は許されない

 ――暴力・体罰の問題も深刻です。

 大阪の高校部活で教員の暴力により生徒が自殺するという痛ましい事件が起こりました。この事件は氷山の一角で、いまだに教育の場で暴力・体罰が少なからずあることを示しています。

 肉体的な苦痛や恐怖で子どもに言うことをきかせることは、成長途上の子どもの体だけでなく、心に複雑で深い傷を残します。体罰や暴力を教育の場でおこなうことは絶対に許されません。しかし、政界の一部には体罰を肯定する風潮があり、克服される必要があります。なぜ体罰がいけないのか、多くの方々と根本から考えあい、なくしていきたいと思います。

 スポーツ界での暴力も重大な問題です。人間的な営みであるスポーツと人間性に反する暴力とは相いれません。多くの一流選手が、暴力は競技力向上にも有害だと告発していますが、とても共感できます。

 ――今後のとりくみについてお願いします。

 「いじめ提言」は、いじめ被害団体、研究者、保護者、教職員、教育行政、識者など多くの方々から歓迎されています。

 提言を読んで話し合ったり、すべての校長先生や教職員に郵送したり、教育委員会の方と懇談するなどのとりくみが始まっています。こうしたとりくみをさらに発展させたいと思います。

 3月16日に予定されている中央委員会主催の「いじめ問題シンポジウム」は幸い、多彩な方をパネリストとしてお招きすることができました。実り多い集いとして成功させたいと思います。

 (おわり)


いじめシンポ パネリスト

 小森美登里さん NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事

 1998年、高校入学間もない一人娘の香澄さんをいじめによる自死で失う。いじめのない社会をめざし、2002年、同プロジェクトを立ち上げる。

 福井 雅英さん 北海道教育大学教職大学院教授

 中学校教諭を経て現職。「子どもカンファレンス」を提唱。札幌市生徒の自殺に関する調査検討委員会委員長。

 山下 芳生さん 日本共産党書記局長代行・参院議員

 党いじめ問題対策チーム責任者として、提案「『いじめ』のない学校と社会を」を取りまとめる。

 ほかに教員、青年のパネリストを予定しています。


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