2013年2月20日(水)
きょうの潮流
いま一番勢いのあるスポーツ選手といえば、女子ジャンプの高梨沙羅(たかなしさら)さんでしょう。W杯の個人総合優勝。しかも16歳4カ月の史上最年少で、ジャンプでは日本人初の快挙です▼はにかんだ笑顔にあどけない表情。ところが、スキー板をはくと、がらりと感じは変わります。取材した同僚記者は「周りをよせつけない雰囲気をまとう」。今季14戦中8勝。条件がちがうジャンプ台で安定した力を発揮できるのも、抜群の集中力があるからか▼もう一つ、彼女がもっているのは、152センチの小柄な体にみなぎる向上心です。なにしろ、追い求めるものに限界がない。これだけの好成績をあげていながら、「着地はまだまだ」と、きびしい自己評価をつけるほどですから▼「ジャンプのまち」で知られる北海道上川(かみかわ)町で生まれ、8歳で味わったという空中を飛ぶ楽しさ。宙を舞うような感覚にみせられ、より長く飛んでいたい―その思いをもち続けています▼2人のサラ。高梨選手には2歳年上のライバルがいます。昨季のW杯で初代総合優勝者になった米国のサラ・ヘンドリクソン選手。今季はひざの手術の影響で出遅れましたが、沙羅さんは「私より数段上」と目標にしています。一方のサラさんも「沙羅のジャンプはすばらしい」▼互いの存在が、高みへと押し上げてくれる。フィギュアスケートの浅田真央、キム・ヨナ両選手の関係もそう。弱肉強食社会の相手を蹴落とす競争とは異なる、ともに励みとする人間らしい競り合いをそこに感じます。