2013年2月17日(日)
「道徳」教科化提言へ
教育再生会議 いじめ・体罰を論議
安倍晋三首相肝いりの政府の「教育再生実行会議」(座長・鎌田薫早稲田大総長)は15日に首相官邸で開いた第2回会合で、いじめ・体罰問題について議論しました。道徳を教科として位置付けることを求める意見が大勢を占めたとして、今月中に予定する次回会合で安倍首相に提出する提言に盛り込む方針です。
鎌田座長は終了後の記者会見で「教科化すべきだとの意見が大勢ということを踏まえて提言を取りまとめる」と述べました。
会合冒頭のあいさつで、安倍首相は「道徳教育の充実は大切」と強調するとともに、「スピード感を持っていじめ対策を充実し、与党とも連携して法制化につなげたい」と発言しました。
道徳の教科化は、第1次安倍内閣が設置した「教育再生会議」も提言しましたが、世論や学校現場の批判で断念された経緯があります。
また、委員から「文部科学省がいじめや体罰の定義、範囲を明確にすべきだ」との意見が出たことを受け、下村博文文科相は終了後の会見で「できるだけ早めに示したい」と述べました。
実行会議は、次回会合からは教育委員会制度改革の議論を始め、4月中にも提言を出す予定。
解説
「愛国心」植え付け
安倍晋三首相は、第1次安倍内閣で教育基本法を改悪するとともに、「教育再生会議」を設置。同会議は数次にわたる提言を出し、第2次報告で、道徳の教科化を求めました。しかし、世論の批判で、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)も実施を見送りました。
市民道徳を学校で教えることは大事です。しかし、それは上から「規範意識」を教え込むことで身につくものではありません。
「道徳」を教科にすれば、国が検定する教科書などで、時の国家や政府の特定の価値観を押し付けることになります。憲法の「思想・良心の自由」に反することです。
しかも、安倍首相が狙うのは「命をなげうっても守るべき価値が存在する」(首相の著書『美しい国へ』)といった「愛国心」や復古的な価値観の植えつけです。
学校教育においても、道徳教育は特定の時間のみで行われるものではありません。児童生徒が学校生活を送る中で、現実生活に即して子ども自身が考える中で全体として育まれるものです。(下渕雅史)