2013年2月17日(日)
米軍訓練移転経費
日米に“談合”疑惑
多国間演習に流用か?
日米豪3国共同演習に
沖縄県民に大きな被害と負担を強いている米戦闘機部隊の訓練をグアム島などに移転する問題で、日本政府による経費の負担が、多国間演習に流用されている疑惑が本紙の取材で浮上しました。しかもこの負担経費の流用は、日米両政府の“談合”のもとに行われている疑いが濃厚です。
訓練移転は、2006年の在日米軍再編での沖縄県民への「負担軽減」を理由に、米空軍嘉手納基地(沖縄県)、同三沢基地(青森県)、米海兵隊岩国基地(山口県)の戦闘機部隊の訓練を本土の自衛隊基地に「移転」し、実施するというもの。11年の日米安全保障協議では米領のグアム島のアンダーセン空軍基地などにも拡大することを合意。その費用の4分の3を在日米軍駐留経費負担特別協定(以下「特別協定」)で日本政府が負担することになっています。
その費用を目的外に流用することを日米政府で「談合」した疑いがもたれています。
米軍嘉手納基地所属の第18航空団がグアム島とその周辺区域で1月29日から今月15日の日程で実施中の「訓練移転」が「流用談合」の対象です。
防衛省が1月23日に公表した「訓練計画の概要」によれば「嘉手納飛行場からグアム等への訓練移転(単独訓練)」としてF15戦闘機(12機程度)、空中給油機、早期警戒管制機、人員260人程度を派遣し、グアム島のアンダーセン空軍基地とテニアンなどその周辺区域で戦闘機戦闘訓練をするとしています。このなかに「単独訓練」の表記があります。
同訓練の費用負担を決めた「特別協定」にもとづき日米合同委員会(11年1月20日)での合意は訓練対象を「二国間及び単独の訓練」と明記しています。
しかし今回のグアムでの訓練移転について、米軍(太平洋軍)は5日付のホームページで、嘉手納基地所属のF15戦闘機が、多国間演習である日米豪共同演習「コープノース2013」に参加している写真と記事を掲載しました。コープノースには、韓国軍もオブザーバーで参加しています。
本紙は「費用負担の日米合意は単独訓練のはず。これは多国間演習ではないか」と防衛省の見解を求めました。防衛省は、「F15の訓練移転は、グアムでの単独訓練というのが米側からの連絡。コープノース参加については承知していない。日本側が確認することはない。(訓練移転費用は)日本負担で処理される」と回答しました。
訓練移転に詳しい日本平和委員会の上原久志調査研究委員は日米両政府による「負担経費の流用談合」の疑いをこう指摘します。
「この時期にグアムでコープノースが計画されていることを知らないわけがない。しかし多国間軍事演習への参加による日本の費用負担を明記することを避けたはず。日本政府は、それを承知でアメリカのいいなりに『単独訓練』で押し通すことに暗黙の了解をしたのではないか」
日本は今年度予算に40億円の「訓練移転費」を計上しています。昨年度比で5倍という大盤振る舞いです。
莫大血税 強い怒り
嘉手納爆音訴訟団嘉手納支部の仲本兼作事務局次長(40)の話 自宅の目の前の嘉手納基地ではF15に代わって最新鋭のF22戦闘機が連日、すさまじい爆音をまき散らしている。負担軽減を口実に莫大(ばくだい)な血税が海外での米軍の戦争訓練に使われることに強い怒りを覚える。政府がやるべきは夜間飛行制限など住民に人間らしい生活を提供することだ。