2013年2月11日(月)
第6回中央委員会総会
志位委員長の幹部会報告
志位和夫委員長が9日、第6回中央委員会総会でおこなった幹部会報告は次のとおりです。
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参加されたみなさん、インターネット中継をご覧の全国のみなさん、おはようございます。私は、幹部会を代表して、第6回中央委員会総会への報告をおこないます。
まず冒頭に、昨年12月にたたかわれた衆議院選挙で、日本共産党を支持していただいた有権者のみなさん、奮闘してくださった支持者、後援会員、党員のみなさんに、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。
6中総の任務は、現在の情勢と日本共産党の任務、総選挙の総括と教訓を明らかにし、5カ月後に迫った参議院選挙・東京都議会議員選挙での日本共産党躍進のための方針を提起することにあります。
1、現在の情勢を大局的にどうつかむか
報告の第一の主題として、現在の情勢を大局的にどうつかむかについてのべます。
政治の表層では逆流が激しいが、深部で古い政治の矛盾が蓄積
第2次安倍政権、日本維新の会――日本の前途にとってきわめて危険
さきの総選挙では、自民党と公明党が、3分の2を超える議席を獲得し、3年半ぶりに自公政権が復活しました。第2次安倍内閣が、弱肉強食の新自由主義の全面的な復活をめざし、憲法9条改定を現実の政治日程にのせようとし、さらに過去の侵略戦争を美化する「靖国」派をその中枢にすえていることは、日本の前途にとってきわめて危険なものであることは、いうまでもありません。
くわえて、日本維新の会という、憲法改定と新自由主義の突撃部隊ともいうべき反動的潮流が、衆院で第3党の地位を占めたことも、重大であります。
こうしていま、日本の政治は、その表層だけをみれば、反動的逆流が猛威をふるっているようにも見えます。
古い体制は崩壊的危機――深部では変革のエネルギーが蓄積されている
同時に、日本社会の深部の矛盾――すなわち支配勢力と日本国民との矛盾がどうなっているか。そこに目を向ければ、日本が形式のうえで独立国となった1952年以来、60年間続いた自民党型政治――大企業・財界の利益を国民生活の上に置く「財界中心の政治」、日米軍事同盟を外交と内政の絶対不可侵の指針と仰ぐ「アメリカいいなりの政治」――二つのゆがみを特徴とする古い政治の矛盾が蓄積し、あらゆる分野で行き詰まり、耐用年数が尽き、土台から腐り、文字通りの崩壊的危機に陥っていることが明瞭となってきます。
その全体を綱領の立場でつかみ、反動的逆流を恐れず正面から立ち向かうとともに、日本社会の深部で蓄積されている変革のエネルギーに信頼をおき、未来への大局的な確信をもってたたかうことが、いま何よりも大切であります。
「財界中心」――働く人の所得が減り続け、経済成長が止まった
一国の経済全体が停滞・縮小している「例外国家」に
「財界中心の政治」という点で、古い政治のゆがみはどこまできたか。
それがもたらした最も深刻な危機は、日本を、長期にわたって国民の所得が減り続け、経済が停滞・後退するという「成長しない国」としてしまっていることにあります。
日本の働く人の所得・雇用者報酬は、1997年を起点として、14年間に88%まで落ち込みました。同じ時期に、欧米諸国の雇用者報酬が1・3倍〜1・9倍程度とどこでも増えていることと比較して、賃下げが続いている日本社会は、発達した資本主義国で他に類を見ない異常なものとなっています。
この動きと連動して、日本の国内総生産(GDP)は、97年以降の14年間に、90%まで落ち込みました。こんなことが起きているのも、発達した資本主義国で日本だけです。欧米諸国も、さまざまな経済的矛盾や危機を抱えていますが、同じ時期に国内総生産は1・4倍〜1・8倍程度と、低成長ながら経済成長が続いています。長期にわたって、一国の経済全体が停滞・縮小している国は、日本だけです。「働く人の所得が減り続け、経済成長が止まった」――この点で日本は、文字通りの「例外国家」といわなければなりません。
日本では国と地方の長期債務残高――借金の総額は、国内総生産比で196%となり、主要国で最も高い水準となっています。これをもたらした原因は、直接には、大型公共事業への巨額の財政バラマキ、大企業・金持ち減税ですが、根本には、長期にわたる経済の停滞・後退と、それによる税収の減少という問題があります。
根底に「ルールなき資本主義」――60年間で欧州との格差が拡大
なぜ日本がこうした「例外国家」に落ち込んだか。その根底には、国民の暮らしと権利を守るルールがいまだに確立していない――「ルールなき資本主義」の国という問題があります。
自民党型政治が続いた60年間、この同じ時期に、ヨーロッパ諸国などでは、暮らしを守るルールづくりがすすみ、とくに1993年の欧州連合(EU)発足後は、ヨーロッパ規模での労働条件改善の仕組みがつくられていきました。
ところが、日本では、国民のたたかいによる貴重な成果もありますが、全体として暮らしを守るルールがないか、あっても弱く、とくに1990年代以降は、わずかにあったルールも「規制緩和」の名のもとに取り払われるという事態がすすみました。そのために、異常な長時間労働、不安定雇用の拡大、最低水準の最低賃金、男女の賃金格差、低すぎる社会保障給付、大企業と中小企業との取引の不公正など、あらゆる面で、欧州諸国との格差が大きく広がりました。
「ルールなき資本主義」と、そのもとで大企業・財界が、目先の利潤のみを追い求めて、社会的責任を無視した身勝手な行動をおこなってきたことが、日本経済の基盤をいよいよ脆弱(ぜいじゃく)にし、矛盾と危機を累積させ、ついに経済成長という当たり前の経済目標とも矛盾する異常な行き詰まりを引き起こしてしまっているのであります。
「アメリカいいなり」――この体制のもとではあらゆる問題が解決不可能に
世界に例のない米軍の治外法権的特権と沖縄の植民地的実態
「アメリカいいなりの政治」という点では、古い政治のゆがみはどこまできたか。
その矛盾は、在日米軍基地の実態に集中的にあらわれています。日本には、戦争が終わって68年もたつのに、いまだに132もの米軍基地が存在し、数々の治外法権的特権を行使しています。こんな国は世界にありません。
とくに、沖縄のような地域――もともと民有地だった土地を無法に強奪し、そのうえに基地を建設し、長期にわたって外国軍基地が居座り続け、たえまない事故・犯罪などを繰り返し、住民の命と安全を危険にさらし、暮らしと経済のまともな営みすらままならない、こんな地域は世界のどこにもありません。それは、沖縄県民が告発しているように、「いまだに占領地でもあるかのごとき」実態――植民地的実態というほかないものです。
とりわけ、2010年以降、普天間基地の「県内移設反対」が県民の文字通りの総意になったにもかかわらず、日米両政府はこの総意を無視して、「辺野古移設」を押し付け、欠陥機オスプレイ配備まで強行しました。沖縄県民の島ぐるみの意思が、じゅうりんされ続けているのです。日本の一つの県の総意を、丸ごとじゅうりんする国が、民主主義の国といえるのか。このことがいま、厳しく問われています。「アメリカいいなりの政治」と沖縄県民、日本国民との矛盾は、いまや限界点をはるかに超えています。
異常な「アメリカいいなり」でも日本は世界の「例外国家」に
「アメリカいいなりの政治」のゆがみは、食料とエネルギーという経済の根幹において、主権をアメリカにがっちりと握られている状態にも象徴的に示されています。
アメリカからの農産物輸入自由化の要求に屈し続けた結果、日本の食料自給率は主要国で最低の39%にまで落ち込みました。日本が「原発列島」とされたのも、日米原子力協定によって原発と濃縮ウランを押し付けられた結果であり、今日も日本にある濃縮ウランの実に73%はアメリカからのものです。食料とエネルギーという、日本国民が生きていくうえで不可欠であり、根幹であるものが、二つながらにアメリカにがっちりと押さえこまれ、自主性を喪失していることも、世界に類例のないことであります。
異常な「アメリカいいなり」という点でも、日本は、今日の世界において文字通りの「例外国家」といわなければなりません。
安保絶対の戦争日本か、9条を生かした平和日本かがいやおうなしに問われる
その根源には、日米安保条約=日米軍事同盟を絶対不可侵とする体制があります。世界を見れば、この半世紀で、多くの軍事同盟が解体、機能不全、あるいは弱体化に陥り、軍事同盟のもとにある国の人口は、世界人口の67%から16%へと激減しました。ところが、同じ時期に、日本では、世界の大勢にまったく逆行して、軍事同盟の強化がすすめられました。この古い枠組みのもとでは、基地問題も、沖縄問題も、食料・エネルギー問題も、あらゆる問題がもはや解決不能に陥っているのであります。
さらに、軍事同盟強化の道は、日本国憲法第9条といよいよ両立しえなくなっています。軍事同盟強化による戦争日本の道を選ぶか、憲法9条を守り生かした平和日本の道を選ぶか。その選択がいやおうなしに問われるところまで、「アメリカいいなりの政治」の矛盾と危機は深刻になっているのであります。
安倍政権の致命的弱点――「危機突破」を標榜しながら打開策なし
二つのゆがみに縛られ、危機を打開する方策を何一つ打ち出せない
それでは安倍政権は、これらの危機に対応する力をもっているでしょうか。安倍政権の最大の致命的弱点は、「危機突破内閣」を標榜(ひょうぼう)していますが、60年続いた自民党型政治の二つのゆがみがつくりだした危機を打開する方策を何一つもちあわせていないことにあります。
たとえば、深刻なデフレ不況からどう抜け出すか。そのための打開策を打ち立てようとすれば、デフレ不況が深刻化した原因と責任を明らかにすることが、不可欠の前提になるはずです。わが党は、衆議院の代表質問で、この問題をただしましたが、首相から返ってきた答弁は、「デフレ不況に陥った原因は、デフレ予想の固定化にある」――“みんながデフレになるだろうと固定的に「予想」するようになってしまったためにデフレが起こっている”というものでした。平たくいえば、不景気の原因は、国民の「気」のせいだということになります。これはおよそ、国民生活の実態からかけ離れた「珍論」というほかないではありませんか。
働く人の所得が減り続けたことがデフレ不況の原因であること、労働法制の規制緩和による非正規雇用の拡大が所得低下の大きな要因であること、働く人の所得を増やすことが日本経済の好循環を取り戻すカギであることは、政治的立場や経済学の違いを超えて、いまや共通の認識になりつつあります。ところが、「財界中心の政治」に縛られているために、この当たり前の事実を見ることができないのであります。
ですから、「アベノミクス」などと仰々しく宣伝している対策も、新しい中身は何もありません。「三本の矢」といいますが、無制限の金融緩和、大型公共事業のバラマキ、大企業応援の「成長戦略」――そのどれもがすべて過去の自民党政権がおこない、破たんが証明ずみのものばかりです。「危機突破」どころか、逆に危機と矛盾を激化させるしかないでしょう。
「危機突破」どころか、危機をつくりだした張本人
オスプレイ配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去という沖縄県民の総意にどうこたえるかを聞いても、返ってきた答弁は、「沖縄の声によく耳を傾け、信頼関係を構築する」ということだけでした。沖縄の総意を踏みにじる行為を繰り返してきたために、今日の行き詰まりが起こっているのに、それへの反省も打開策もまったくありません。
だいたい自民党は、経済問題でも、外交問題でも、原発問題でも、あらゆる分野で今日の危機をつくりだした張本人であります。安倍晋三氏も歴代自民党政権の担い手の一人として、危機に直接の責任を負っています。あらゆる危機をつくりだしてきた張本人が、そのことへの反省もなしに「危機突破」といっても、笑止千万というほかないではありませんか。
政権の中枢に「靖国」派――危険性とともに不安定さともろさ
くわえて、安倍政権は、過去の侵略戦争を美化する「靖国」派をその中枢にすえているという大問題をもっています。わが党は、安倍首相が、歴史を偽造する「靖国」派の主張を、政府の立場にすることを絶対に許さないという立場で、論陣を張っていきますが、この問題は、安倍政権の抱える特別に深刻な問題として、いつそれが具体的な危機となって噴出するかわからない不安定さともろさを、この政権の特徴の一つとしています。
日本共産党は、安倍自公政権の危険性を直視しつつ、恐れずに正面から立ち向かい、その致命的弱点に切り込み、政治の根本的転換を迫る論戦とたたかいに、大いに意気高くとりくむ決意であります。
新しい政治への大変革が求められる時代――綱領的確信をもってのぞもう
政治の表層の動きは、ジグザグもあるし、逆向きの変動も起こります。しかし、日本社会の深部を見るならば、「アメリカいいなり」、「財界中心」という二つの異常なゆがみを特徴とする古い政治は、国民との矛盾が蓄積し、崩壊的危機に立ち至っています。
60年間続いた自民党型政治のもとで、日本は、経済の衰退という点でも、基地国家という点でも、世界に他に類のない「例外国家」に落ち込んでいます。この道に決して未来はありません。
こうして現在の情勢を大局的に見れば、日本が新しい政治への大変革が求められる時代に入ったことは疑いありません。そして、支配勢力と国民との矛盾が存在するかぎり、国民的な規模でその解決を求めての探求と模索が続くことは不可避であります。
日本共産党の綱領がさし示す民主的改革の方針は、現在の危機を前向きに打開する唯一の活路となっています。情勢にどんなジグザグの展開があろうとも、それは必ず国民多数の声となりうる、科学的生命力をもつものです。このことへの揺るがぬ深い確信をもって、激動の情勢に働きかけ、危機打開の道を国民に語り、日本の進路を語り合おうではありませんか。
2、参議院選挙にむかう国政の焦点と日本共産党の立場
報告の第二の主題として、参議院選挙にむかう国政の焦点と日本共産党の立場についてのべます。
総選挙では、自民党が「勝利」しましたが、国民のくだした審判は「民主党政権ノー」であり、自民党の掲げた政策が信任されたわけでは決してありません。総選挙で問われた政治課題は、どれも決着がついていないし、いっそう切実な課題となっています。
わが党は、あらゆる分野で、国民の利益に立って、国会での論戦に全力をあげるとともに、国民運動との共同の発展のために力をつくします。そうした活動をつうじて、以下の諸課題を、参議院選挙にむけて攻勢的に争点に押し上げ、国民に正面から問うていきます。
被災地復興を文字通りの最優先課題に
「生活と生業に必要な公的支援」をおこなわせることは最大の要
まず被災地復興の問題です。東日本大震災から2年を迎えようとしていますが、被災地では、いまだに約32万人もの方々が苦しい避難生活を強いられています。
復興をすすめるうえで、5中総で提案した「国の災害政策の三つの根本的転換」――(1)「個人財産の形成になってはならない」という姿勢を根本からあらため、生活と生業(なりわい)に必要な公的支援をおこなうことを基本原則にすえる、(2)事業者の「規模」や「競争力」を口実に「上からの線引き」によって、支援に差別を持ち込むことをやめる、(3)被災者を見捨てる「期限切れ」での支援打ち切りをやめ、生活と生業の再建を最後まで支援し、被災者とともに歩む姿勢を明確にする――を、自公政権に対しても、引き続き強く求めていきます。
わけても「生活と生業に必要な公的支援」をおこなわせることは最大の要であります。とくに、「住まい」の問題では、生活再建支援法による支援額と対象を大幅に拡充し、必要な災害公営住宅を建設することが急務となっています。「生業」の問題では、中小企業再建を支援する「グループ補助金」の大幅拡充とともに、再建意欲のあるすべての小零細事業者を対象にした直接助成制度を新たに創設することを求めてたたかいます。
募金とボランティア支援を強めることを心から訴える
大震災からの復興は長期にわたるたたかいとなります。わが党は、広範な人々・団体と力をあわせ、すべての被災者の方々が「安心して住み続けられる故郷(ふるさと)」を取り戻すまで、ともに力をつくして頑張り抜きます。党として呼びかけた被災地への支援募金は10億1千万円を超え、政党のとりくみとしては最大となっています。全国からのボランティア支援はのべ3万3千人を超えました。大震災2年にあたり、被災地に対する募金とボランティア支援を引き続き強めることを、中央委員会総会として心から訴えるものであります。
働く人の所得を増やし経済危機打開を
働く人の所得を増やす政策転換か、破たんが証明済みの大企業応援か
つぎは経済危機への対応の問題です。
経済危機をめぐっては、デフレ不況の最大の原因が働く人の所得の落ち込みにあることを直視して、働く人の所得を増やす政策に転換するのか、それとも、安倍内閣が喧伝(けんでん)している「三本の矢」に示されるような、破たんが証明済みの大企業応援策をすすめるのか――この二つの道の対決がするどく問われています。
政府は、働く人の所得を増やす政策への転換をというわが党の提起に対して、「成長戦略で企業の収益を向上させれば、雇用の拡大や賃金の上昇をもたらす好循環を生み出す」などという旧態依然とした「トリクル・ダウン」理論(おこぼれ理論)で言い訳をしています。しかし、大企業が利益を上げても、「雇用の拡大や賃金の上昇」につながらない――働く人の賃金が下がり続けてきたことは、この十数年の事実によって証明されていることではありませんか。
デフレ不況から抜け出す「三つの決断」を政府に求める
日本共産党は、政府に対して、デフレ不況から抜け出すために、つぎの「三つの決断」を求めます。
第一は、デフレ不況打開に逆行する消費税大増税、社会保障大改悪の計画を中止することであります。
第二は、日本経団連の新たな賃下げ宣言、電機・情報産業の大企業による13万人首切りを許さず、賃上げと安定した雇用を実現することです。大企業の内部留保は、不況下でも積み上がり、260兆円にも達しており、その多くが有価証券などで運用されているだけの「余剰資金」となっています。こうした内部留保の一部を還元しただけで、賃上げと安定した雇用は十分に可能であります。そのことは昨日の笠井亮議員の衆院予算委員会の質疑で政府も事実上認めました。ならばこれを求めていこうではありませんか。
第三は、人間らしい暮らしを保障するルールづくりに踏み出すことです。雇用のルールを強化して非正規社員を正社員にする、中小企業への手当てをおこないながら最低賃金を抜本的に引き上げる、大企業と中小企業の公正な取引のルールをつくるなどの改革をすすめることであります。
消費税増税阻止、賃上げ、雇用・労働条件の改善のたたかいは、国民の暮らしを守るとともに、日本経済を深刻なデフレ不況から救い出す大義あるたたかいであります。その国民的意義を、すべての労働者と国民に伝え、国民の暮らしを守り経済危機を打開する大闘争を起こそうではありませんか。
社会保障大改悪の企てを許さず、拡充をはかる
「経済提言」で示した抜本的対案をかかげ、国民的なたたかいの発展を
安倍自公政権が計画する社会保障の連続大改悪とのたたかいも、国政の重大争点となっています。自民党幹事長などが公言しているように、「毎年1兆円の社会保障費の自然増を抑えるために社会保障給付を縮小する」――小泉「構造改革」の毎年2200億円削減路線をより悪い形で復活させようというのが、その狙いであります。
すでに自公民の3党合意で設置された「社会保障制度改革国民会議」が始動し、社会保障の全分野での給付抑制・予算削減の方針づくりが本格化しています。その最初の標的とされているのが、生活保護の切り下げ・改悪であり、それを突破口にしながら、介護、医療、年金、保育などの制度改悪にのりだそうとしています。
日本共産党は、昨年2月に発表した「社会保障充実、財政危機打開の提言」(「経済提言」)で、医療・年金・介護など社会保障を段階的に再生・拡充する、その財源は、消費税に頼らない別の道――応能負担の原則に立った税財政の民主的改革、国民の所得を増やす経済の民主的改革によってまかなうという、抜本的対案を示しています。この対案を掲げ、消費税増税阻止、社会保障改悪の攻撃を許さない国民的なたたかいの発展に力をつくします。
支配勢力の思想攻撃にたいし、社会的連帯で反撃を
そのさい、支配勢力の思想攻撃とのたたかいは重要であります。とくに、高齢者を現役世代と対立させる、生活保護受給者をその他の国民と対立させる、公務員労働者を民間労働者と対立させるなど、国民同士を「叩(たた)きあう」ように仕向けるわなを打ち破っていくことが大切です。また、その根底にある「自助・共助」論――自分たちの失政・悪政が生み出した貧困と生活苦の責任を、国民の「自己責任」「家族責任」に転嫁し、国民の権利としての社会保障とそれを増進する国の責務を放棄する議論を打破するたたかいが重要です。
国民のどの層にかけられた攻撃も、国民全体への攻撃、憲法25条で保障された生存権への攻撃ととらえ、社会的連帯で反撃し、社会保障改悪をはね返し、充実への道を開くたたかいをすすめようではありませんか。
「即時原発ゼロ」を国民の多数派に
国民多数の声に背く安倍政権の原発推進政策
原発問題についてのべます。
安倍政権は、原発再稼働の推進、新増設の容認、原発輸出の推進を公言し、民主党政権が打ち出した「2030年代原発稼働ゼロ」というきわめて不十分な方針すら白紙に戻す立場を打ち出しました。
しかし、「少なくとも過半の国民は、原発に依存しない社会の実現を望んでいる」ということが、国民的議論の結果を分析した政府の認識であります。わが党が衆議院の代表質問で、「この到達点は、自民党政権に交代したからといって、変わらないはずだ」とただしたのにたいして、首相は、否定することができませんでした。そうであるならば、あからさまな原発推進政策は、福島の悲惨な大事故の体験を経て「原発ゼロの日本」を求める国民多数の声にまっこうから背くものといわなければなりません。
「即時原発ゼロ」と「再稼働反対」、福島再生のたたかいを一体に
「原発ゼロの日本」をめざすたたかいの今後の方向としては、「即時原発ゼロ」を国民の多数派にするためのたたかい、再稼働を許さないたたかい――この二つのたたかいを、一体にすすめていくことが、最大のカギとなっています。
また、いまなお15万人余の方々が先の見えない避難生活を余儀なくされている福島の苦しみに心をよせ、「収束宣言」を撤回させ、除染・賠償をはじめ、「安全・安心の福島県」をとりもどすまで、すべての過程で国と東京電力に責任をもたせるたたかいを、ともにすすめることが大切であります。
安倍政権は、原子力規制委員会が7月にも制定するとしている「新安全基準」をもとに、原発再稼働を強行しようとしています。しかし、「新安全基準」(骨子案)は、(1)福島原発事故の原因が究明されていないもとで、小手先のとりあえずの対策を並べただけのものであり、(2)地震対策も、原発の真下に活断層が走っていても「露頭」(地表に現れた断層)がなければ設置を認めるという骨抜きの内容とされ、(3)そもそも福島原発事故のような大量の放射性物質を外部に放出する過酷事故を想定しながら、「世界最高水準の安全」と強弁するという根本的な自己矛盾を抱えたものとなっています。もともと、原発は、過酷事故を想定した対策の実証実験をおこなうことが原理的にできません。ですから、客観的な「安全基準」を設定すること自体が原理的に不可能です。「安全な原発」などありえません。わが党は、「新安全基準」という新しい「安全神話」をテコに再稼働を強行しようという企てに厳しく反対してたたかい抜く決意を表明するものです。
日本こそ「原発のない世界」へのイニシアチブの発揮を
人類は、スリーマイル、チェルノブイリ、フクシマと3回の原子力大災害を体験しています。私たちは、やがて「原発ゼロ」は世界の大勢になると考えるものです。すべての原子炉を廃炉にし、「核のゴミ」を処分する――これらは人類の英知を結集してとりくむべき巨大プロジェクトになるでしょう。福島原発事故を体験した日本こそ、「原発のない世界」にむけて、国際的プロジェクトをすすめるイニシアチブを発揮すべきであります。
TPP参加阻止、食料主権・経済主権の確立を
自民党に公約を守らせ、 なし崩しの参加を許さない
TPP(環太平洋連携協定)問題をめぐって、緊迫した情勢が続いています。
安倍首相は、わが党の参議院の代表質問にたいして、「公約で明記したとおり、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉に参加しません」とのべながら、「国益にかなう最善の道を求めてまいります」と、参加に含みを残す答弁をおこないました。しかし、TPPは、2国間のFTAなどと根本的に違い、「例外なき関税撤廃」を大原則としており、自民党が公約を守る限り、参加はできません。自民党に公約を守らせ、なし崩しの参加を許さないたたかいが重要であります。
TPPは破たんずみの時代逆行と、アメリカの「属国」への道
首相は、「自由貿易体制の強化」を強調しますが、TPPが「自由貿易」「投資の自由化」の名で押し付ける市場原理、規制緩和至上主義は、世界でも失敗し、破たんずみの時代逆行の道にほかなりません。各国の経済主権を尊重した民主的で秩序ある投資と貿易のルールづくり、自国の食料のあり方はその国で決めるという食料主権の尊重こそが、国際的な流れであります。
また首相は、「諸外国の活力をわが国の成長に取り込む」といいますが、アジアでは、中国、韓国、インドネシア、フィリピンなどが不参加と、TPPは少数派です。TPP参加は、「アジアの成長」を取り込むものではなくて、日本がアメリカのいっそうの「属国」になる道にほかなりません。
世界の流れにてらしても、TPP合理化論は、どれも成り立つものではありません。農林漁業者、医療関係者、消費者など、広範な諸団体としっかりスクラムを組み、この亡国の企てを断念させるまで奮闘しようではありませんか。
沖縄県民の総意に、日本国民がどうこたえるか
沖縄と本土との連帯したたたかいをさらに強めよう
普天間基地の閉鎖・撤去、「基地のない沖縄」をめざす沖縄県民の総意に、日本国民がどうこたえるかが問われています。ここでは二つの点を強調したいと思います。
一つは、沖縄と本土との連帯したたたかいをさらに強化することです。十数年にわたって辺野古の美しい海に杭(くい)一本打たせなかったのは、沖縄と本土のたたかいの共同の成果ですが、こうしたたたかいをいっそう強めようではありませんか。かつて沖縄の本土復帰闘争のさいには、「沖縄展」を全国各地で開き、沖縄の現状を学ぶなかで連帯が広がりましたが、そうした創意的なとりくみを大いに開拓していこうではありませんか。何よりもオスプレイの被害は、日本列島全土に及びます。オスプレイ配備撤回を、文字通りの国民的闘争に発展させようではありませんか。
「外交ビジョン」を生かし、安保廃棄の国民的多数派を
いま一つは、根本的な問題解決の道が日米安保条約廃棄にあることを明らかにし、安保廃棄の国民的多数派をつくっていくための努力をはかることです。日米安保条約をなくしてこそ、米軍基地の重圧から日本国民が解放されるだけでなく、日本が憲法9条を生かした平和の“発信地”となり、東南アジア諸国連合(ASEAN)ですでに実現している軍事に頼らない“平和的安全保障”が可能になるという展望が開けてきます。「沖縄の苦難は、安保のためには仕方がないのか」――国民のなかにはこうした声もあります。そういうもとで、安保をなくしたらどういう展望が開かれるかを、広く国民のなかで語り、怒りの矛先を安保に向けていくことは、沖縄と本土が連帯して事態を前向きに打開していくうえでも、きわめて重要であります。
わが党の「外交ビジョン」――「日米安保条約をなくしたらどういう展望が開かれるか」を、沖縄問題の解決のためにも、縦横に活用していただくことを訴えるものです。
憲法を守り生かす国民的大闘争をよびかける
きわめて危険な状況――同時に国民世論、アジアと世界の世論に逆行
安倍政権が、憲法9条改定を、現実の政治日程にのせることを公言していることは、きわめて重大であります。
まず集団的自衛権の行使にむけた解釈改憲と、憲法96条が定めた憲法改定の発議要件の緩和をおこない、外堀、内堀を埋めた上で、宿願の憲法9条改定によって「国防軍」を書き込む。これが彼らの改憲スケジュールであります。その狙いは、米国と共同して海外で戦争をする国に日本をつくりかえることにおかれています。
国会の状況をみれば、自民・公明にくわえ、維新の会、みんなの党などが、憲法96条改定に賛成するなど、衆議院では改憲派が3分の2を占める危険な状況がつくられています。しかし、どんな世論調査でも、過半数の国民が「9条改定に反対」と答えるなど、国民のなかでは改憲派は少数です。くわえて、日本の憲法改定の動きに対して、アジアと世界から強い警戒と懸念の声が起こっていることは重要であります。
9条を守り生かしてこそ、アジアと世界から本当の信頼を得ることができる
憲法9条は、侵略戦争と植民地支配によって、アジアと世界に甚大な犠牲をもたらした反省にたって、日本が二度と再び侵略国にならず、世界平和の先駆になるという「国際公約」であります。またここには、ヒロシマ・ナガサキを体験した日本国民の「核戦争という地獄は、世界のどこでも二度と繰り返してはならない」という思いが込められています。世界とアジア、日本の平和の思いが凝縮し、結晶した宝が憲法9条であります。世界に誇るこの宝を守りぬき、生かした自主自立の平和外交をおこなってこそ、日本はアジアと世界の平和に貢献し、本当の信頼を得ることができます。
憲法改悪のあらゆる企てに反対し、国民的大闘争によって戦争勢力を包囲しましょう。「9条の会」をはじめとする草の根の運動を発展させ、憲法9条を守り生かす声を揺るぎない国民的多数派にするために全力をつくそうではありませんか。
子どもと教育の危機をどう打開するか
「いじめ」をなくすために――「提案」を活用した多種多様な懇談を
いじめ、体罰の問題が、大きな社会問題になっています。
日本共産党が、昨年11月に発表した提案「『いじめ』のない学校と社会を」は、この問題で社会が二つのこと――(1)目の前の「いじめ」から、子どもたちのかけがえのない命、心身を守り抜く、(2)根本的な対策として、なぜ「いじめ」がここまで深刻になったかを考え、その要因をなくす――にとりくむことを提案しました。
この提案は、いじめ被害団体の方々、研究者、保護者、教職員、教育行政、識者など多くの方々から歓迎され、多種多様な懇談が始まっています。こうしたとりくみを、参議院選挙にむけてさらに発展させましょう。党中央として、3月にシンポジウムを開催し、全国のとりくみを交流し、解決の道をともに探求するとりくみをおこないます。
子どもたちを守るために、解決の道を語りあい、共同を広げよう
大阪の高校部活での教員による暴力・「体罰」により生徒が自殺する痛ましい事件が起こりました。この事件は、「氷山の一角」であり、「体罰」が教育の場に少なからずあることを示しています。子どもの命と安全を守るべき教師が、どんな理由であれ「体罰」という名の暴力をふるうことは、絶対に許されません。「体罰」は、学校から全面的に排除・一掃されねばなりません。政界の一部にも「体罰」を肯定する風潮がありますが、国民の代表者による暴力肯定はきびしく非難されるべきです。スポーツ界での暴力も根絶されなければなりません。
「いじめ」、「体罰」など、子どもたちのかけがえのない命を脅かし、発達を損なう問題を、どうなくしていくか。これは日本社会の大問題であり、その解決は私たちおとなの責任であります。日本共産党は、学校、地域、社会の各分野で解決への道を語り合い、共同を広げることを心からよびかけるものです。
小選挙区制・政党助成金の撤廃、民意が反映する制度への抜本改革を
比例削減の策動を打ち破り、比例代表制もしくは中選挙区制への抜本改革を
衆議院議員定数の削減問題は、重大な局面を迎えつつあります。自公民3党は、昨年11月、いま開かれている通常国会終了までにこの問題について必要な法改正をおこなうことに合意しています。比例定数削減は、民意を切り捨て、少数政党を国会から抹殺しようとするものであり、この策動を打ち破るために全力をあげます。
同時に、民意の反映する選挙制度への抜本的改革をめざす運動を大いに起こしていきたいと思います。昨年の総選挙の結果は、自民党が4割の得票で8割の議席――「虚構の多数」を獲得したことに象徴される、小選挙区制の害悪を最も深刻な形で示すものとなりました。この結果を受けて、選挙後、小選挙区制に対する批判が、政治的立場の違いをこえていっせいに噴き出しています。日本共産党は、小選挙区制を撤廃し、比例代表制への抜本的改革を提案するとともに、定数3〜5人の中選挙区制に戻すことも、民意の反映を保障する方向での抜本的改善につながるものとして選択肢にするという立場でのぞみます。
憲法に反し、政党を劣化させる政党助成金は即時撤廃せよ
政党助成金への批判も強まっています。この制度が、支持していない政党への税金投入を強制する憲法違反の制度であることにくわえて、政党の劣化の重大な一因となっていることにも批判が広がっています。調べてみますと、この18年間で政党助成金を受け取った政党は28党にのぼりますが、そのうち21党がすでに解散しています。これらの政党の中には、政党助成金を受け取ることのみを事実上の目的に結成された党も数多くありました。自民党、民主党、みんなの党などの財政の7〜10割が政党助成金で賄われている実態も、本来の政党の姿とかけはなれた異常なものというほかありません。日本共産党は、政党助成金を拒否している唯一の党として、この制度の即時撤廃を求めてたたかうものであります。
3、東アジアの平和・安定・友好にかかわって――三つの国際問題
報告の第三の主題として、東アジアの平和・安定・友好にかかわる三つの国際問題についてのべます。
北朝鮮問題の解決のために
安保理決議を順守し、これ以上の挑発行為をおこなわないことを強く要求する
まず北朝鮮問題の解決のために何が大切かという問題です。
北朝鮮は、昨年4月、12月と、2度にわたって、国際社会の批判と反対を無視し、「ロケット」発射をおこないました。これは「弾道ミサイル技術を使用した発射」の中止を求めた国連安保理決議1874に違反し、地域の情勢を悪化させる行為であり、許されるものではありません。
この間の経過をふりかえりますと、一昨年12月、金正日総書記の死去にさいし、私は、「一国の首脳の死として哀悼の意を表する」とのべるとともに、後継指導部が「国際社会の責任ある一員としての道をすすむことを願う」と表明しました。さらに昨年2月、米朝協議において、北朝鮮が核実験、ミサイル発射、ウラン濃縮活動の凍結に合意したことについて、前向きの一歩だと注目しました。
しかし、その後、北朝鮮は、2度にわたる「ロケット」発射を強行し、いま、3度目の核実験計画が伝えられています。国連安保理は、1月22日に、決議2087を採択し、「ロケット」発射を非難するとともに、「さらなる発射または核実験」がおこなわれた場合には、「重大な行動をとる決意」を表明しています。わが党は、北朝鮮が、安保理決議を順守し、これ以上の挑発行為を繰り返さないことを、強く要求するものであります。
「人民生活の向上」を求めるなら、核開発を放棄し、国際社会の責任ある一員に
北朝鮮指導部の最近の発言をみますと、「経済強国の建設」を「最も重要な課題」と位置づけ、「人民生活の向上」を強調しています。同時に、同じ発言のなかで、軍事力の強化を他のすべてに優先させる「軍事優先思想(先軍思想)」を強調し、「ロケット」発射の「成功」を自賛しています。
しかし、「人民生活の向上」と「軍事優先思想」にたった核・ミサイル開発路線とは両立するものではありません。北朝鮮指導部が、本気で「人民生活の向上」を求めているのならば、核・ミサイル開発の放棄と、国際的な無法行為を清算することによって、国際社会の責任ある一員になることこそが必要であります。
国際社会がいったん到達した枠組みに復帰せよ
そのために国際社会がいったん到達した枠組みは存在します。6カ国協議の2005年の共同声明、2002年の日朝平壌宣言、2000年の南北共同宣言などです。わが党は、北朝鮮が、これらの国際的枠組みに復帰し、過去に到達した合意に立ち返り、誠実に履行することを、強く要求するものです。それは、アジアの平和と安定に寄与するだけでなく、北朝鮮自身の安全と利益にもかなうものとなるでしょう。
国際社会は、この問題の解決にあたって、一致して行動し、平和的・外交的解決に徹することが何よりも重要であります。わが党は、国際社会が、この立場を堅持して問題解決にあたることを、あらためて強く求めるとともに、党としても可能な行動をおこなうものです。
尖閣問題解決のための三つの原則を提起する
「提言」を発表し、日中両国政府、国際社会に粘り強く働きかける
尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐって、私は、昨年9月20日、「外交交渉による尖閣諸島問題の解決を」と題する「提言」を発表し、日本政府および中国政府に、わが党の立場を提起するとともに、関係各国、国際社会に、粘り強く働きかけてきました。
「提言」では、尖閣諸島について、日本の領有は歴史的にも国際法上も正当であるとの見解を表明したうえで、日本政府の対応が「領土問題は存在しない」という立場をとり、それに拘束されて日本の領有の正当性を理をつくして主張することができず、中国側の主張にも反論できないという自縄自縛に陥っているという問題点を指摘しました。さらに、「提言」では、物理的対応の強化や軍事的対応論を、日中双方がきびしく自制すべきであることを強調しました。
冷静な外交的解決に逆行する動きを、きびしく戒めることを強く求める
その後も、日本と中国の両国間の対立と緊張が続いています。それは両国間の経済的・人的交流にも悪影響をおよぼしています。とりわけ憂慮され、絶対に避けなければならないのは、重大な不測の事態、軍事的衝突であります。
日本側から、尖閣諸島への公務員常駐の検討、尖閣問題を理由にした軍事力強化、軍事同盟強化の動きが起こっていますが、これらは冷静な外交的解決に逆行する動きであり、戒める必要があります。
中国側は、政府の監視船による継続的な日本の領海内の航行や、政府の航空機による領空侵犯をおこなっています。中国側にどんな言い分があったとしても、ある国が実効支配をしている地域に対して、力によってその変更を迫るというのは、今日の世界で紛争解決の手段として決して許されるものではありません。中国側によって、力によって日本の実効支配を脅かす動きが続いていることは、きわめて遺憾であります。
力対力の対応を続けるなら、それはエスカレートし、制御不能な事態を引き起こしかねません。冷静で理性的な話し合いこそが、問題解決の唯一の道です。日本共産党は、日中両国政府にたいして、日中関係を正常で友好的なものとするために、大局にたった、理性と決断を強く求めるものです。
三つの原則を一体的に踏まえた解決を提起する
わが党は、すでに発表した「提言」を踏まえつつ、つぎの三つの原則に一体的にのっとって、問題の解決をはかることを提起するものです。
第一は、日中双方が、領土に関わる紛争問題の存在を認め、冷静な外交交渉による解決をはかることです。
第二は、日中双方が、現状を変更する物理的対応、軍事的対応を、きびしく自制することです。
第三は、日中双方が、この問題を、両国の経済関係、人的・文化的交流に影響をあたえないよう努力をはかることです。
わが党は、こうした諸原則を一体的に踏まえた対話による解決が、問題解決の唯一の道であると確信するものです。そして、問題解決のために、党としても可能なあらゆる努力をはらう意思を表明するものであります。
歴史を偽造する逆流をゆるさない
安倍首相との論戦――就任前の歴史観を日本政府の方針にさせない立場で
歴史問題についてのべます。
安倍首相が、過去の侵略と植民地支配の誤りを認めた「村山談話」を見直し「安倍談話」に置き換えること、日本軍「慰安婦」問題について軍の関与と強制を認めた「河野談話」を見直すことを公言したことに対して、ニューヨーク・タイムズ紙が「安倍氏の恥ずべき衝動」との強い批判の社説を掲載するなど、国際的な批判が広がっています。
第2次世界大戦後の世界の秩序は、日本・ドイツ・イタリアがおこなった戦争は、不正・不義の侵略戦争であったことを共通の土台としています。安倍氏は、首相就任前に、過去の日本の侵略戦争と植民地支配を肯定・美化するさまざまな言動を繰り返してきましたが、それをそのまま安倍内閣――日本政府の方針とするならば、日本はアジアと世界で生きていく政治的・道義的地位を失うことになることを、わが党はきびしく警告し、それを許さない立場で論戦をすすめてきました。
衆院代表質問への答弁で「持論」を「封印」――逆流の国政への持ち込みを断念せよ
わが党は、衆議院の代表質問で、日本軍「慰安婦」問題をとりあげ、強制性を立証する文書がないことをもって、強制の事実はなかったとする「靖国」派の議論についてただしました。わが党は、「河野談話」は、もともと強制性を立証する文書を見つけることはできなかったことを前提に、「慰安婦」とされた人たちの証言の真実性にもとづいて、これは真実のものだと政府として判定して、政府として「本人の意に反して慰安婦とされた」――強制性を認めたものであることを、当時の政府担当者の証言を引いて指摘しました。そして、政府として「河野談話」を継承するという立場をとるかぎり、「強制性を立証する文書がないから強制の事実はない」という議論を肯定する余地はまったくないはずだとして、首相の見解をただしました。
安倍首相は、この指摘に反論できず、「首相としてこれ以上申し上げることは差し控え、官房長官による対応が適当だ」と答弁しました。これは、首相が、それまでの「持論」を、首相の立場としては「封印」することを、国会の場で言明したことを意味するものです。わが党は、首相がこの言明を守り、この問題での逆流を国政に持ち込むことを断念することを、強く求めるものであります。
日本軍「慰安婦」問題の解決のための提案
同時に、日本軍「慰安婦」問題の解決のためには、日本政府としてこの植民地犯罪について謝罪と賠償をおこなうことが不可欠です。韓国政府は、元日本軍「慰安婦」被害者の賠償請求権問題に関して、1965年の日韓請求権協定にもとづく両国政府間の協議を繰り返し日本政府に求めています。しかし、日本政府は「請求権の問題は解決済み」として、協議に応じる姿勢を示していません。
しかし、同協定第3条1項は、協定の解釈及び実施に関する両国間の紛争がある場合には、「まず、外交上の経路を通じて解決するものとする」としています。日本軍「慰安婦」問題が、被害者の告発によって明らかとなり、政治問題化したのは1990年以降のことであり、「解決済み」との日本側の主張は成り立ちません。日本政府は、日韓請求権協定第3条の規定にしたがい、韓国政府との協議に早急かつ誠実に応じるべきです。被害者の方々は、高齢となっており、この問題の公正な解決には一刻の猶予もなりません。
歴史はつくりかえることはできませんが、向き合うことはできます。歴史に誠実に向き合い、誤りは真摯(しんし)に認め、清算してこそ、日本は、アジア諸国民との本当の心通う友情を確立することができます。日本が抱えている領土に関する紛争問題をふくむ、アジア諸国との外交問題も、この立場を土台にすえてこそ、前向きの解決の道がはかられるということを強調したいと思います。
4、総選挙の総括と教訓について
報告の第四の主題として、総選挙の総括と教訓についてのべます。
選挙結果と総括の基本的立場――2中総決定にもとづく自己検討
総選挙の日本共産党の結果について
昨年12月におこなわれた衆議院選挙で、日本共産党は、5中総で決定した目標――「650万、議席倍増」をめざして奮闘しました。議席倍増という目標そのものは、「二大政党づくり」の動きが破たんに直面し、長年続いてきた古い政治が崩壊的危機に陥るもとで、党躍進は国民に対する責任であり、また躍進の客観的可能性が存在するもとで、掲げたものであり、積極的なものだったと考えます。残念ながら結果は、改選9議席から8議席に、比例代表の得票は前回総選挙で得た494万票(7・03%)から369万票(6・13%)への後退となりました。
同時に、私たちが4中総決定で「出発点」と位置づけた2010年参院選比例票の356万票(6・10%)と比べて、わずかではありますが得票・得票率ともに前進したことは、今後の前進の足がかりの一歩となるものであります。とりわけ東北ブロックでの勝利は、被災地復興の命綱を守り抜いた勝利として、きわめて重要であります。
2中総決定にてらし、参院選勝利に必要不可欠な教訓を明らかにする
12月17日の常任幹部会声明、1月4日の党旗びらきの「あいさつ」では、どうしたら本格的な前進に転じられるかについて、党内外の方々のご意見に耳を傾けつつ、自己検討をおこなう決意を表明しました。また、6中総にむけ、積極的な提案と経験を中央に寄せていただくようよびかけました。
この間、1200人を超える方々から、叱咤(しった)とともに激励のご意見が寄せられ、その多くは党活動改善の積極的提案となっています。わが党の前途を真剣に考え、ご意見を寄せていただいたすべての方々に心からの感謝を申し上げます。
総選挙の総括と教訓は、2010年参議院選挙から総括と教訓を引き出した2010年9月の2中総決定にたちもどり、この決定にてらして、それ以降の2年半の全党の努力と成果、問題点を明らかにするという基本的姿勢でおこないます。また、5カ月後に迫った参議院選挙での勝利にとって必要不可欠な教訓を明らかにするという立場でおこないます。
政策・宣伝活動について――積極的成果と今後の課題
政策論戦の基本は、2中総の教訓を踏まえ、積極的な意義をもつもの
まず政策・宣伝活動についてです。
今回の総選挙にむけて、日本共産党は、一連の政策提言――「経済提言」、「外交ビジョン」、「即時原発ゼロ提言」、「尖閣問題の提言」、「いじめ問題解決の提言」、「震災・災害政策の転換の提言」などを提起するとともに、それらを集大成し発展させた「総選挙政策 日本共産党の改革ビジョン」を掲げてたたかいました。
これらは、2010年参議院選挙を総括した2中総決定で、わが党の政策活動に、国民の新しい政治への「探求にこたえ」、政治の閉塞(へいそく)感を打ち破る「展望を示す」という点で、大きな弱点があったという痛苦の教訓をふまえた努力であり、全体として積極的な意義をもつものであったと考えます。
その内容は、参議院選挙にむけても、情勢に応じての発展は必要ですが、その基本点はそのまま使っていけるものとなっています。2中総の教訓を踏まえ、全党の英知を結集してつくった政策的到達点を、引き続くたたかいに活用していただくことを訴えるとともに、党中央としてさらに政策的探求の発展をはかる決意をのべるものです。
模索する有権者の気持ちにかみあった訴えへと、さらに改善の努力をはかる
同時に、今後の課題もあります。進路を模索し迷っている有権者の気持ちにかみあって、また、支配勢力が氾濫させている思想攻撃ともかみあって、日本共産党の改革ビジョンを伝えるという点では、党中央がおこなった政策・宣伝活動には、さらに改善が求められる課題があります。
たとえば、「財界中心の政治のゆがみをただす」という場合、多くの労働者・サラリーマンが、「まず企業が存続してこそ労働者の生活も成り立つ」と考えているときに、共産党は「企業経営などどうなってもいい」と考えているかのような誤解を与えることがあってはなりません。日本共産党の立場は、大企業に力相応の社会的責任と負担を果たしてもらう、そのために政治の責任で大企業の横暴を抑える「ルールある経済社会」をつくる、そうしてこそ、働く人の暮らしが良くなるだけでなく、企業経営にとってもまともな発展の道が開かれるというものであることを、誤解の余地なく、丁寧に、説得的に伝えていくことが大切です。この点では、有権者の反応などを踏まえて、選挙中も訴えの改善・発展の努力をおこないましたが、この点での力量を党中央としても、もっとつけなければならないと考えています。
また、「アメリカいいなり政治のゆがみをただす」という場合に、多くの国民の中には、「そうはいっても日本の平和をどう守るのか」という不安や懸念があります。北朝鮮や中国を含めた国際情勢への不安や懸念もあります。それにたいして、憲法9条を生かした自主自立の平和外交によってこそ問題解決の展望が開かれること、今日の世界は紛争の平和解決を可能にする世界であること、そして根本的には日米安保条約をなくしてこそ独立・平和日本への道が開かれ、日本の安全保障もたしかなものになることなどを、「外交ビジョン」などを縦横に使って、丁寧に、説得的にこたえていく努力が必要であります。
党中央として、そうした改善の努力をさらにはかり、激動の情勢のもとで進路を探求する国民の気持ちにかみあって、わが党の改革ビジョンを国民多数の合意にしていくために、いっそうの力を傾注する決意であります。
党の自力の問題――「国民に溶け込み結びつく力」について
「国民に溶け込み結びつく力」を強調したのはなぜか
12月17日の常任幹部会声明は、古い自民党型政治が崩壊的危機にあり、党と後援会の燃えるような奮闘があったにもかかわらず、わが党が議席を後退させた最大の原因が党の自力の問題にあることを、選挙戦の実際をふまえて明らかにしました。
そして、党の力の根源は、さまざまな困難に直面しその解決を求める各層の広範な「国民に溶け込み結びつく力」にこそあること、この力がいまの情勢が求めているものに比べればまだまだ小さいし、これまでより弱まっている面も少なくないことを指摘し、どこをどう改善すれば強く大きな党がつくれるか、中央自身も、全党のさまざまな努力から学んで方策を探求し、開拓と努力をはかる決意を表明しました。
あらためて私たちが「国民に溶け込み結びつく力」を強調したのはなぜか。それはこの力こそが、要求活動、党建設、選挙活動など、党があらゆる活動をすすめるうえで、その「力の根源」となっているからです。
この力を強めることと一体に、「国民の苦難軽減と安全のために献身する」という立党の精神に立った活動にとりくむこと、要求活動と党建設という「車の両輪」の活動をすすめること――この方向にこそ、党活動発展の大道があることを、お互いに肝に銘じて奮闘したいと思います。
この力が小さいし、弱まっている面も――選挙戦の実態はどうだったか
問題は、この力が、情勢の求めているものに比べればまだまだ小さいし、これまでより弱まっている面も少なくないことです。それは、私たちが選挙戦の全体を通じて痛感したことでした。いくつかの角度から私たちの活動の到達点がどうだったかについて報告します。
――国民への働きかけの質と量はどうだったか。質という点では、2中総決定を踏まえ、「結びつきを生かした対話と支持拡大」の努力が強められ、全国各地に貴重な先駆的経験が生まれました。しかし、それを全党の大勢にできたとはいえません。量という点では、衆院解散までに1千万の対話をめざしましたが、急な解散だったとはいえ、1千万の対話は投票日までかかり、選挙戦全体として、対話と支持拡大の数は、この間の国政選挙で最も低い水準にとどまりました。
――党員の活動参加、読者、後援会員への協力依頼はどうだったか。この間、2中総決定にもとづいて「実態のない党員」の解決の努力をはかり、全党員参加への努力が強められましたが、総選挙の活動に参加した党員は、6割台にとどまりました。「しんぶん赤旗」読者への支持・協力依頼は7割台から8割台、後援会員への支持・協力依頼は4割台から5割台でした。
――国民との結びつきの根幹・土台となる党員と「しんぶん赤旗」読者の陣地はどうだったか。3中総決定、4中総決定にもとづく「党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」で約2万人の党員を新たに迎えたことは、総選挙で大きな力を発揮しました。しかし、党全体では、党員の後退傾向がなお克服できていません。それは党費を納める党員が前回総選挙から1万人余後退したことにも示されています。読者は、前回総選挙時比で、日刊紙で89・7%、日曜版で86・7%で選挙をたたかいました。
国民との結びつきの根幹・土台となる、党員と「しんぶん赤旗」読者の陣地の後退傾向が克服しきれないままで選挙を迎えたのは、私たちの大きな弱点でしたが、問題はそれだけではありません。現に党がもっている国民との結びつき――党員がもつ結びつき、読者や後援会員など党の最も親しい友人との結びつきを、すべて生かしてたたかったかというと、ここには大きな弱点があった――党が現にもつ潜在的な力、可能性を引き出し切れていないことを正面からとらえる必要があると思います。
どうやって党の力の根源を強めるか――三つの角度からすぐれた経験に学ぶ
それではどうやって党の力の根源――「国民に溶け込み結びつく力」を強め、選挙戦の生きた力にしていくか。党旗びらきの「あいさつ」では、この力を広い視野で豊かにとらえ、総合的に発展させるうえで、何が大切かについて、三つの角度から私たちの活動に自己分析をくわえるとともに、全党のみなさんに積極的な経験と提案を寄せていただくことをお願いしました。このよびかけにこたえて、さまざまな先駆的経験の報告、活動改善の提案が寄せられています。
三つの角度から、全国のすぐれた経験に学び、参議院選挙に生かしたいと思います。
第1=一人ひとりの党員の結びつきを、どうやって党の結びつきに発展させるか
第一の角度は、一人ひとりの党員の結びつきを、どうやって党の結びつきに発展させるかということです。
党旗びらきの「あいさつ」で紹介した、「ヘラブナ釣り」の仲間など33人に支持を訴えた新入党員の経験は、大きな反響をよぶとともに、“こういう活動なら私たちの支部にもある”と同様のとりくみが全国からたくさん報告されています。
一人ひとりの党員の結びつきに光をあて、それを生かした活動にとりくんだ支部に共通しているのは、対話と支持拡大の規模がこれまでの数倍に広がるとともに、面識のある人たちだけに対話の内容も深く、しっかりと支持してもらえたという確信が広がっていることです。全国各地からの報告に接して強く実感したのは、わが党には、結びつきという点で、巨大な潜在的可能性がある、それを生かし切る活動をおこなえば、幾百万から1千万以上という規模の国民にわが党の声を直接、しっかりと届けることは可能だということでした。そうした力をわが党が現にもっていることに、まず深い確信をもつことが大切だと思います。
それでは、一人ひとりの党員がもつ可能性をくみつくすためには何が必要になってくるか。全国のすぐれた経験から二つの点を学びたいと思います。
一つは、党として、一人ひとりの党員の多種多様な結びつきに広い視野にたって光をあて、多面的な活動を保障し、激励していることです。毎週の支部会議での話し合いを大切にし、党員一人ひとりの多面的な結びつきと活動を評価しあい、励まし合って、気持ちよく活動しています。そうした多面的な活動を評価し、保障する「余裕」が大切です。趣味やサークルなどは、党活動と関係ないものと位置づけられ、「肩身の狭い」思いでとりくんでいるという報告も率直に寄せられました。そうした傾向を克服し、支部会議を軸に広い視野にたって多面的な活動を保障してこそ、党活動が豊かに発展するということが、大切な教訓だと考えます。
いま一つは、党として、一人ひとりの党員の「踏み切り」――成長を、温かく援助していることです。「踏み切り」への援助は、さまざまですが、支部会議で「近況報告」をおこない、それぞれの結びつきをどうやって党の結びつきに発展させるかを、自由に語り合うことは、大きな力を発揮しています。「綱領・古典の連続教室」の学習や日々の「しんぶん赤旗」を使っての学習、多種多様な「集い」にとりくむことも、「踏み切り」への力となっています。一人ひとりの条件に即して、「○○さんに頼まれたから」、「共産党のここが好きだけれど」など、踏み出しやすい形で「踏み切り」の背中を押すとりくみも大切です。
ある地区委員会は、「これならできるかも シリーズ」として、「きちんと説明できるか不安なあなたは…」、「自分には知り合いがいないと思っているあなたは…」、「何もできないと思っているあなたは…」など、“あなたにも、こんなこと、あんなことができる”と示し、「ワンフレーズ対話コンテスト」の活動者会議を開催するなど、生きた経験の交流に徹して、支部と党員の「踏み切り」を励ましています。こうした経験に大いに学びたいと思います。
第2=有権者の動向の変化にそくして、どうやって新しい結びつきを広げるか
第二の角度は、有権者の動向の変化にそくして、どうやって新しい結びつきを広げるかということです。
一方で、有権者と結びつくことに、客観的な困難が生まれているもとでも、新たな結びつきを広げる知恵と創意が生まれています。オートロック・マンションが急増しているある地区委員会では、党組織「空白」のマンション対策に系統的にとりくみ、地震対策から子どもの遊び場問題まで、マンション住民の関心と要求にこたえたシンポジウムを系統的に開くなかで、新しい結びつきを広げ、党の支持を広げています。
党組織「空白」の大学にたいしても、原発ゼロや震災ボランティアをよびかける大学門前や最寄り駅前での宣伝に系統的にとりくむなかで、党や民青同盟との結びつきをつくり、入党者を迎え、準備支部を結成した大学も生まれています。これらの開拓者的なとりくみに、全党が挑戦することを訴えるものです。
他方、とくに大震災以降、国民のなかで広がっている社会的連帯を求める新しい動きに注目した努力が報告されています。毎週金曜日の官邸前抗議行動に呼応した「原発ゼロ」を求める「金曜日行動」が、全国に網の目のように広がり、若い世代との結びつきが広がっています。各地で、「原発ゼロ市民ネットワーク」、「子育てネットワーク」などをたちあげ、若い世代、子育て世代との新しい結びつきを広げ、党の支持を広げている経験が生まれています。平和の問題でも、いくつかの大学で、教員や院生の協力をえながら「学生9条の会」が発足するなどの新しい動きが起こっています。これらはどれも、まったく新しい広大な人々との結びつきの可能性を感じさせるものがあります。
新しい結びつきを広げる活動で、ツイッターやフェイスブックなどインターネットのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電子メールが、大きな力を発揮しています。SNSは、直接の面識がない相手でもインターネットを通じて、互いに知り合い、つながり合う手段として、国民のなかに大きく広がり、巨大な力を発揮しつつあります。参議院選挙では、インターネット利用が解禁になる見通しであり、中央として適切な時期に全国的な交流会を開き、この媒体のもつ可能性を最大限に活用する活動に挑戦します。
第3=「国民に溶け込み結びつく」ことと一体に、党勢拡大の独自の努力をはかる
第三の角度は、「国民に溶け込み結びつく」ことと一体に、党勢拡大の独自の努力をはかるということです。
私たちは、3中総決定、4中総決定を指針に、1年余にわたって「党員拡大を中心とした党勢拡大大運動」にとりくみました。「大運動」は、64・7%の支部が入党を働きかけ、42・6%の支部が約2万人の新入党員を迎えるという、近年にないとりくみとなりました。「大運動」は、「実態のない党員」の解決という痛苦の反省にたって、「結びつきを基礎に『支部が主役』で」を合言葉にとりくまれたことが、きわめて重要でした。
「大運動」で入党した新入党員が、総選挙で新鮮な力を発揮して大奮闘し、その姿を見て、ベテランの党員もハラを決めて発奮するという経験がたくさん生まれたことが、全国からたくさん報告されています。新入党員は、入党という決定的な「踏み切り」を体験し、情勢と国民の変化を自ら体現しているだけに、少なくない同志が、“自分も変わったのだから他の人も変わる”という思いで、対話と支持拡大、党勢拡大で大胆な活動にとりくんでいます。人生の素晴らしい「踏み切り」をした新しい同志たちのこれらの奮闘は、素晴らしい出来事であり、みんなで拍手を送りたいと思います。
党旗びらきの「あいさつ」で紹介した和歌山県西牟婁郡白浜町の経験――「集い」を活動の軸にすえ、後援会員の拡大・後援会ニュースの定期発行と届けを系統的におこなうなど、有権者と日常的・系統的に結びつく努力に一貫して力をそそぐことと一体に、党勢拡大をすすめ、それを力にさらに結びつきを広げるという、“好循環”をつくりだしている経験は、大きな反響をよびました。
今回の総選挙で、比例の得票率「10%以上」を獲得した自治体・行政区は、99市区町村です。その9割は、有権者比で党員と日刊紙読者が0・5%以上、日曜版読者が2%以上という分厚い党勢を築いてたたかっています。この事実は、党の大きな躍進をかちとろうとするならば、分厚い党勢を築く以外に、他に安易な道はないことを示しています。
「溶け込み結びつく」ことと一体に独自追求をはかってこそ、党勢拡大はすすみますし、新たな党員や読者を増やすことによって、さらに「溶け込み結びつく」力を強めることができる。こうした“好循環”をつくりだすなかで、党勢拡大の新たな上げ潮をつくりだす仕事に全力をそそごうではありませんか。
選挙活動にかんするいくつかの問題について
「すべての小選挙区で候補者擁立をめざす」という方針にもとづく活動について
選挙活動にかんするいくつかの問題についてのべます。
今回の総選挙では、4中総の「すべての小選挙区で候補者擁立をめざす」という方針にもとづいて、沖縄2区をのぞく299の選挙区で候補者を擁立し、470万票、7・88%を獲得しました。このたたかいは、情勢にふさわしい、また今後に生きる、きわめて積極的な意義をもつものとなりました。
候補者としてたたかった多くの同志から確信に満ちた報告が寄せられています。政治論戦で堂々と他候補と切り結び支部のたたかいを激励したこと、各種団体との日常的な結びつきが強まったこと、地区委員長をはじめ機関役員の同志が候補者になることによって「政治と選挙に強い党機関へと成長する展望が見えた」ことなどであります。
勇気をもって立候補し、日夜奮闘されたすべての候補者の同志に、中央委員会総会として、敬意と感謝の気持ちをおくるものです。
克服すべき最大の困難の一つである財政の面でも、突破可能との確信をつかみました。全国の党員で支えられている「国政選挙供託金支援基金」によって、小選挙区候補供託金のうち6割をまかないました。総選挙躍進募金(供託金募金を含む)は、党員と支持者の熱い思いが寄せられて、全国で20億円をこえ、短期のとりくみとしては過去の実績を大きく上回りました。この教訓にたち、ひきつづき参議院選挙躍進募金にとりくむことをよびかけるものです。
いかにして国政選挙、とりわけ比例代表選挙を「自らの選挙」としてたたかうか
私たちが知恵と力を注いで克服すべき重大な問題点をここで提起したいと思います。選挙後、少なくない党組織や候補者から、「総選挙を『自らの選挙』としてたたかえたか。地方選挙に比べても力が入っていなかった」、「地方選挙と比べると、党員のやる気、本気度が違ってしまう。地方選挙並みに燃えれば、もう少し票が伸びるのにと思う」などの率直な自己検討が寄せられています。
今回の総選挙の比例票を、直近の地方選挙の得票と比較すると、比較可能な自治体の全国総計で、比例票は地方選挙票の78%にとどまっています。この事実は、国政の比例選挙と地方選挙との性格、条件の違いを考慮に入れたとしても、わが党が乗り越えるべき重大な問題を提起しています。
もちろん、この傾向は宿命ではありません。地方選挙票より比例票が上回っている自治体が2割近くあり、前進させた自治体の党組織からは、「地方選挙以上のたたかいができた」との確信が報告されています。地方選挙に比べて国政選挙に力が入らないというのは、綱領路線にもとづく多数者革命への根本姿勢が問われる問題であり、党中央から支部まで、真剣な自己検討をおこなうことが必要になっていると考えます。
そのさい、この問題には、主体的弱点とともに、現行選挙制度に伴う客観的困難が作用していることを直視しなければなりません。すなわち、党にとっては、現行制度は、小選挙区ではすぐには議席獲得が困難であり、比例代表は選挙区が広大なことから、どちらも「遠い選挙」に見えてしまう傾向が生まれます。さらに、有権者との関係でも、小選挙区で議席をすぐに争えない党、政権にすぐに関与しない党は、選択肢の外に置かれる傾向が、マスメディアの世論誘導ともあいまって、回を追うごとに強まっています。
こうした客観的困難のもとで、いかにして国政選挙、とりわけ比例代表選挙を「自らの選挙」とし、日常的なとりくみにしていくか。これは、国政選挙でわが党が勝利するうえで、きわめて重要な問題となっています。党中央として、この問題の打開のために知恵と力をつくしますが、すべての都道府県委員会、地区委員会、支部・グループのみなさんにも、「いかにして国政選挙に強い党になるか」についての探求と努力をよびかけるものです。
5、参議院選挙、東京都議選躍進にむけた方針について
報告の第五の主題として、参議院選挙、東京都議選躍進にむけた方針についてのべます。
参議院選挙での日本共産党躍進の意義――本格的な反転攻勢の選挙に
5カ月後に迫った参議院選挙で、日本共産党が躍進をかちとることは、今日の情勢のもとで党が果たしている国民的役割にてらして、きわめて重要な意義をもっています。
「防波堤の党」――「改憲・増税連合」のたくらみを阻もう
第一に、暮らし・平和・民主主義を破壊する逆流に正面から立ちはだかる「防波堤の党」――日本共産党の躍進は、現在の政党状況のもとで、きわめて切実な意義をもつものとなります。
安倍自公政権は、参議院選挙に勝つことをテコとして、宿願の憲法改定、大増税の実行などに、本格的に乗り出す構えです。そのときに、国会状況を見れば、憲法問題では、自公にくわえて維新の会、みんなの党などが「改憲連合」をつくり、衆議院の代表質問では維新の会が「憲法破棄」を自民党に強く迫るという事態も起こりました。一方、消費税問題では、自公民3党が、「3党合意」によって「増税連合」をつくっています。
「改憲・増税連合」が国会を覆うなかで、国民のなかに不安が広がり、「こんなときだからこそ共産党に頑張ってほしい」という声が保守層も含めて新たに寄せられています。国民の不安、期待にこたえて、日本共産党の躍進をかちとり、「改憲・増税連合」のたくらみを阻む力を大きくしていこうではありませんか。
「変革者の党」――新しい政治を求める国民的模索と探求の前進を
第二に、情勢は、新しい政治を求める国民の模索と探求にこたえる「変革者の党」――日本共産党の躍進を強く求めています。
多くの国民は、日本の現状に深い閉塞感をもち、その打開の道を真剣に探求しています。そのときに、現在の閉塞状況の根源に、「アメリカいいなり」「財界中心」という二つのゆがみがあること、このゆがみを断ち切る改革にとりくんでこそ展望が開かれることを、国政の舞台で明らかにしながら、その力を大きくすることは、国政の民主的改革にとって決定的意義をもちます。
日本共産党の躍進は、新しい政治を求める国民的模索と探求を前進させる、最大の保障となるものであります。
「国民共同をすすめる党」――国政を変革する統一戦線への一歩を
第三に、国民運動が歴史的高揚をみせるもとで、「国民共同をすすめる党」――日本共産党が国政での比重を高めることは、新しい統一戦線をつくる重要な一歩となります。
いまさまざまな分野で一致点にもとづく共闘――「一点共闘」が大きな広がりをみせています。「一点共闘」が互いに連帯しあい、新しい統一戦線への萌芽が生まれていることも、注目すべきです。
こういう状況をさらにすすめて、国政を変革する統一戦線をいかにしてつくるかが、新しい重要な課題となっています。今日の政党状況のもとでは広大な無党派の方々と日本共産党との共同が統一戦線の基本であり、それを担う組織として革新懇運動のいっそうの発展が強く期待されます。わが党も提唱者として、そのために奮闘したいと思います。同時に、そうした統一戦線の発展のうえでは、党綱領にも明記したように、日本共産党の躍進が「決定的な条件」となります。
来るべき参議院選挙を、「防波堤の党」「変革者の党」「国民共同をすすめる党」――日本共産党の本格的な反転攻勢の選挙とするために、全力をあげて奮闘しようではありませんか。
参議院選挙の政治目標、それを実現する可能性について
参議院選挙の政治目標について
参議院選挙で、日本共産党は、つぎの政治目標を掲げて奮闘します。
――「比例を軸に」を貫き、「比例代表で5議席絶対確保」を目標とします。比例代表での躍進の波をつくるなかで、選挙区の勝利に挑戦します。
――得票は、650万票に正面から挑戦します。この目標は、「それを実現するまで繰り返し挑戦する目標」とします。
――「成長・発展目標」をあらためて自覚化し、それへの接近、実現をめざします。大会決定で確認したように、「どの都道府県、どの自治体・行政区でも『10%以上の得票率』を獲得できる党をめざす。すすんだ都道府県、党組織では20%から30%以上の得票率をめざす。5%以下の県をなくすことも重要である」という立場で奮闘します。「5%以下の県」については、今回の総選挙で2010年参院選の24県から18県まで減らしました。この底上げ目標を実現することを、来るべき参議院選挙の目標にすえます。
――非拘束式比例代表選挙においては、「日本共産党」と党名での投票をよびかけることを基本にします。有権者との対話のなかで候補者での投票を望む方があれば、それを歓迎することは当然です。比例5人の議席を保障する手段として、党員については、活動地域の候補者名で投票するようにします。「全国は一つ」の立場で、すべての党組織が、「比例は日本共産党と書いて投票してください。5人の比例候補の全員当選を勝ち取らせてください」という訴えを基本にして、5人の全員当選に全国が共同で責任を負うという立場で、がんばろうではありませんか。
勝利の客観的条件――政党間の力関係は固定的でなく、きわめて流動的
この目標をやりきり、参議院選挙で勝利・躍進をかちとる条件はあるでしょうか。
もちろんこれは、容易な仕事ではありませんが、私はその条件があるということに、目をひらいてがんばろうではないかということを、訴えたいのであります。
その客観的条件・可能性として強調したいのは、総選挙の結果に示された政党間の力関係は、固定的なものでは決してないということです。「二大政党づくり」の動きが無残に破たんしたもとで、政党間の力関係はきわめて流動的なものとなっていることを、リアルにとらえることが大切であります。
自民党は、総選挙で勝利をおさめましたが、そこで示された民意は「民主党政権ノー」であり、自民党の政策・路線への支持ではありません。安倍政権の致命的弱点が露呈し、早晩破たんが訪れることは避けられないでしょう。
維新の会とみんなの党も一定の議席を得ましたが、ここに示された民意は、「自民も民主もノー」というものであり、これも彼らの政策・路線への支持ではありません。すでに国会論戦でも、両党の本質が、口では「改革」をとなえながら、自民党の補完勢力にすぎないことが、しだいにあらわになっています。
野党に転落した民主党はどうでしょう。民主党は「3党合意」に拘束され、政党としての政治的立脚点を見いだせないまま漂流しています。国民は、民主党が、公約を投げ捨て、「3党合意」で消費税増税・社会保障改悪の道を選択したことに、厳しい「ノー」の審判をくだしたのであり、「3党合意」の路線に拘束されている限り、民主党には未来はありません。
こうした政党状況のもとで、自民党型政治対日本共産党という対決構図が、これまでにもまして鮮明になる状況が生まれています。この客観的条件を生かした奮闘いかんでは、5カ月間という期間に政党間の力関係を変えることは可能であります。その可能性に挑戦しようではないかということを、訴えたいのであります。
主体的条件――持っている力をくみつくし、「比例を軸に」に徹すれば
それでは主体的条件はどうでしょうか。すでに総括でのべてきたように、総選挙の日本共産党の結果は、党のもつ潜在的力、可能性を出しつくしての結果ではありません。現に党がもっている国民との結びつきをすべて生かし、さらに広げながらたたかうならば、はるかに大きな力を発揮できる主体的条件をわが党はもっています。地方選挙に比べても力が入らないという弱点を克服するならば、国政選挙での勝利の道が開かれてきます。
この点で、「比例を軸に」を名実ともに貫き、比例代表選挙で、他党としのぎを削りながら執念をもって一票一票をつみあげ、議席に結びつける活動に、他のどんな選挙と比べても、最大の力を発揮することができる党になれるかどうかは、参議院選挙の勝敗をわける問題です。
比例代表選挙は決して「遠い選挙」ではありません。参議院選挙の場合、全国どこでも、どの一票でも、5人の当選に結びつき生きるという点では、最も身近な選挙です。そして、「比例を軸に」を貫くということは、日本共産党の政策・理念・歴史を丸ごと語り、日本共産党を丸ごと支持してもらう人を増やすということであり、党綱領の多数者革命の実践そのものでもあり、日本共産党員として最もやりがいのある仕事であります。
総選挙の教訓を生かし、現に党がもっている力をくみつくし、「比例を軸に」に徹することに成功すれば、参議院選挙での躍進は可能だということに、大いに確信をもって新たなたたかいにのぞもうではありませんか。
参議院選挙躍進にむけた方針について――すべての支部・グループの同志に訴えます
すべての支部・グループに訴える――六つの活動にただちにとりかかろう
参議院選挙躍進にむけて、すべての支部・グループのみなさんに訴えます。つぎの諸項目をただちに具体化・実践しようではありませんか。
そのさい、日本共産党の三つの国民的役割――「防波堤の党」「変革者の党」「国民共同をすすめる党」という役割は、党中央や国会議員団はもちろん、地方党機関、地方党議員(団)、国民のなかで奮闘する支部・グループが、この役割を果たしてこそ、国民に日本共産党の値打ちが伝わっていきます。そのためのとりくみを大いに展開することを、よびかけるものです。
●すべての支部・グループが会議を開き、6中総決定を議論し、生活と「結びつき」の現状を出し合い、支持者名簿を整備しましょう。支持者名簿は、党としての結びつきの名簿と区別して、「マイ名簿」(個人としての結びつきの名簿)をつくることも大切です。
●すべての支部と党員が、「国民の苦難の軽減」という立党の精神に立って、多様な要求と関心にこたえた、多面的な活動にとりくみ、また、参加しましょう。要求にこたえた活動という場合、それを狭くとらえず、さまざまな趣味の活動、ご近所・職場づきあいなど、国民の願いにこたえた活動全体を広く視野に入れて大切にしましょう。
●得票目標と支持拡大目標を決め、広い有権者を対象とした声の宣伝やポスター張り、ビラ配布などの大量宣伝、「結びつき」を生かした対話と支持拡大に、ただちに足を踏み出しましょう。対話と支持拡大に、選挙直前にならないと力が出ないという悪弊を今度こそ克服し、「いまから直ちに」「繰り返し」「固めつつ広げる」という立場でとりくみましょう。党員の「踏み切り」――成長を援助するとりくみを、支部も党機関もさまざまな形でおこないましょう。対話と支持拡大と一体に、広く募金を訴えましょう。
●党員拡大を、党勢拡大の根幹に位置づけ、6中総を起点に、すべての支部が、新しい党員を迎えて参議院選挙をたたかいましょう。「しんぶん赤旗」読者拡大では、前回参議院選挙時の回復をめざし、全都道府県、全地区、全支部が、毎月、日刊紙、日曜版ともに前進をかちとり、党勢の上げ潮のなかで選挙をたたかいましょう。国民に「溶け込み結びつく」ことと一体の新しい独自追求をすすめましょう。読者拡大では、読者と人間的・政治的に日常的に結びつき、「減らさず、前進する」活動に挑戦しましょう。
●すべての支部が、「改革ビジョンを語り、日本の前途を語り合う集い」を、多種多様な形で開きましょう。単位後援会を確立し、要求にこたえた、楽しい多面的な活動をすすめましょう。後援会ニュースを発行し、後援会員との結びつき・協力依頼を不断に強めましょう。
●学習の強化は、「結びつきの強化」とともに、党の活力を高める二つの根本の力となります。新入党員学習、「綱領・古典の連続教室」を活用した学習、毎日の「しんぶん赤旗」を使った学習をすすめましょう。すべての党員が「しんぶん赤旗」日刊紙を購読することを、党の質的建設の要の一つと位置づけて、力をつくしましょう。
参議院選挙は、公示日が7月4日、投票日が7月21日(予定)と期日が決まったたたかいです。すべての支部・グループが、以上の六つの活動を、適切な節目標を決めて具体化し、ただちに臨戦態勢を確立してやりぬくことを心から訴えるものです。
「職場支部と若者が輝く選挙」を本格的に発展させよう
職場支部の活動としては、労働者のなかで、賃上げと安定した雇用を求めるたたかいに大いに打って出ましょう。この問題では、ナショナルセンターの違いを超えて、労働組合への「協力・共同」のとりくみに大いにとりくみましょう。職場門前の宣伝、「結びつき」を生かした対話と支持拡大をすすめましょう。労働者のなかで生まれている新しい前進の芽を大きく発展させるために、適切な時期に、党中央として、「参院選勝利 全国職場支部活動者会議」を開催し、全国のとりくみの交流と一大飛躍の場としていきます。
青年・学生のなかで、原発、震災ボランティア、憲法、雇用、学費など、さまざまな自発的な運動が広がるもとで、これらの運動と共同し、またそれに参加し、新たな結びつきと信頼を広げましょう。すべての都道府県・地区・支部が、民青同盟と協力して、若者を対象にした「集い」「トーク集会」を開くとともに、党や民青の組織のある大学で「集い」「トーク集会」を開きましょう。大学門前、最寄り駅前などでの学生向けの宣伝・対話を積極的にとりくみましょう。5月12日に計画されている「共青創立90周年記念講演会」を党としても重視して成功のために力をつくします。
総選挙で芽が出始めた「職場支部と若者が輝く選挙」を本格的に発展させるために、大いに知恵と力をつくそうではありませんか。
運動組織・団体との「協力・共同」のとりくみ
5中総決定にもとづく総選挙でのとりくみの成果について
各分野の国民運動が歴史的高揚をみせるもとで、総選挙では、5中総決定にもとづいて、運動組織・団体への「協力・共同の申し入れ」がとりくまれ、今後に生きる多くの教訓がつくりだされました。
自覚的民主勢力の諸団体が、自らの要求実現のために政治を変えるとりくみとして選挙を位置づけ、構成員に対して政党選択の基準、判断材料の提供をおこなうなどの活動を活発にとりくんでいただいたことに、感謝を表明するものです。
また、「一点共闘」で結びついた農林漁業団体、医療関係団体、商店会、各種の業界団体、業種別組織、町内会、老人会などに、はじめて「協力・共同の申し入れ」がおこなわれ、多くの諸団体で、親しい懇談となり、ポスターの掲示、役職員に対する宣伝物の配布、演説会にメッセージや祝辞を寄せてくれる、党候補の推薦を決めてくれるなど、新しい協力・共同が広がったこともうれしい出来事であり、感謝を表明するものです。
「協力・共同」のとりくみを、党支部のとりくみに発展させよう
参議院選挙は、各党も、とくに比例代表選挙で、業界代表など分野別の選挙を繰り広げています。参議院選挙にむけて、「協力・共同の申し入れ」のとりくみを、いっそう発展させるために知恵と力をつくしましょう。
「協力・共同」を発展させる根本は信頼関係の構築にあります。そのために、何より大切なのは、要求実現のために誠実に協力する姿勢を貫くこと、息長く日常的に対話と共同を続けることであります。
この活動をさらに発展させるために、予定候補者、党機関とともに、党支部が、機関や地方議員と協力してこの仕事にとりくみ、それぞれの運動組織・団体の基礎的単位にまで「協力・共同」のとりくみの裾野を広げるようにしたいと思います。運動組織・団体のなかに、党員を増やし、読者を増やすとりくみを開拓することもきわめて重要であります。
都議選と中間地方選挙のたたかい
東京都議会議員選挙は、告示6月14日、投票6月23日と、参議院選挙の直前にたたかわれ、連続する選挙となります。都議選の様相は、国政の激動が直接に持ち込まれ、自民、民主、公明とともに、維新、みんななどが大量に立候補する、多数乱戦の大激戦となっています。各党が東京の政治決戦を参院選の前哨戦と位置づけているだけに、都議選は一地方の選挙にとどまらず、国政選挙に準じる重大な意義をもつ選挙となっています。
国政と都政を一体に、党の値打ちを語ることを中心にすえた論戦をすすめていきますが、都政では、日本共産党以外のすべての政党が猪瀬都政の与党であり、「オール与党」対日本共産党の対決構図がいっそう鮮明です。東京都党組織の奮起を訴えるとともに、全党の力を結集して、まず首都の選挙で必ず勝利をかちとろうではありませんか。
参議院選挙までに前橋、大分、静岡、富山、松江、那覇、奈良など県都をはじめ、69市105町村で地方選挙がたたかわれます。一つひとつの中間選挙で必ず勝利し、得票を伸ばし、参院選勝利・躍進への波を起こしていこうではありませんか。
党機関の指導と活動の改善、国政選挙を日常化するための新しい方針について
報告の最後に党機関の指導と活動の改善、国政選挙を日常化するための新しい方針について、報告いたします。
「改善・刷新」にとりくんできた地区委員会の共通した教訓
2中総決定は、参院選の総括を踏まえ、党機関の指導と活動について改革方向を提起しました。「改善・刷新」に真剣にとりくんできた地区委員会からは、つぎのような共通した教訓が報告されています。
――「党機関は支部へ、支部は国民のなかへ」の立場で、地区委員長が先頭にたって支部の援助に入り、とくに情勢と党の役割の特徴がそれぞれの地域・職場でどうあらわれているかを確信をもってつかめるよう政治的援助を何よりも重視している。
――支部の「政策と計画」を尊重し、その自発性、自主性を大切にする姿勢を貫いている。同時に、支部から寄せられる悩みには最優先でこたえ、ともに解決するという血の通った関係が支部との間につくられている。
――結びつきを生かした多面的な党員と支部の活動を援助し、党勢拡大への援助も、結びつきを生かしておこなうという立場ですすめられている。「改善・刷新」に本格的にとりくんでいる地区委員会では、「党勢拡大大運動」で6割から8割の支部が新入党員を迎え、「しんぶん赤旗」読者拡大でも連続的な前進をかちとり、前回総選挙比でも2010年参院選比でも得票・得票率ともたしかな前進をかちとっている。
――党機関の体制強化を重視し、非常勤活動者の結集とともに、補助指導機関の確立のための努力をはらっている。
こうした先駆的な教訓に学んで、機関活動の「改善・刷新」のための努力を、継続的に強めることを訴えるものです。
なお、党中央の活動として、2中総決定にそくして、中間機関に過度の負担をかける報告や電話を戒めることを確認してきましたが、現状はなお弊害が克服されたとはいえない問題点もあります。この点でいっそうの改善の努力をはかります。
3月には「特別党学校」を開催し、次代をになう幹部を養成する活動を系統的に強化します。
条件のある小選挙区は、次期選挙の予定候補者をただちに決める
いかにして国政選挙、とりわけ比例代表選挙を「自らの選挙」とし、日常的なとりくみにしていくかは、きわめて重要な課題ですが、そのための努力の一つとして、新しい問題提起をしたいと思います。
現在の選挙制度のもとで、他党は、小選挙区単位に政党支部をつくり、小選挙区候補者がその代表者となり、日常的に事務所を構え、駅頭などで宣伝をおこなうなど、しのぎを削る活動をおこなっています。そして、衆議院選挙だけでなく参議院選挙でも、衆議院の小選挙区を選挙活動の基礎単位としてたたかう様相を示しています。それに対して、わが党の場合、小選挙区の予定候補を決めるのは選挙間際になることが多く、選挙が終わると活動が中断してしまうというケースが多いという問題があります。こうした状態の抜本的改善が必要であります。
そこで、つぎの衆議院選挙にむけて、条件のある小選挙区は、ただちに候補者申請をしてもらい、その地域での国政の顔として、日常的・系統的な活動をおこなうようにしたいと思います。活動は条件に応じて無理のないものとし、(1)定時定点の宣伝活動など有権者に直接訴える、(2)党を代表して、切実な要求実現のための懇談や申し入れなどの諸活動をおこなう、(3)国政事務所、国政ブロック事務所と連携し、地域の要求を国政につなぐ活動、政府交渉などに参加する――などを重視します。これらは専任の候補者でなくても、地区委員長や他の任務との兼任の同志、あるいはボランティアの同志であっても可能な活動です。こうしてできるだけ多くの小選挙区で、予定候補者が日常的・系統的に活動することは、国政選挙を「自らの選挙」とし、日常的なとりくみにしていくうえで、大きな力を発揮することは疑いないと思います。
そのさい、党中央として、各地域で党の顔として奮闘する予定候補者と、国会とを結ぶための体制と活動を抜本的に強化するようにしたいと思います。
来るべき参議院選挙を、参議院選挙の予定候補者、衆参国会議員、次期衆議院選挙の予定候補者、地方議員とその予定候補者を先頭に、すべての支部、党員が、後援会員と力を一つにあわせてたたかう、壮大なとりくみにしていこうではありませんか。
新しい政治への大変革が求められる時代、総選挙の教訓を生かし、国民に「溶け込み結びつく」力を強め、参議院選挙では必ず勝利・躍進をかちとり、第26回党大会を迎えようではありませんか。以上をもって、幹部会を代表しての報告を終わります。