2013年2月9日(土)
「慰安婦」の悲劇忘れない 米国での取りくみ 3
撤去求める自民議員 新たな記念碑設置も
米国で最初の「慰安婦」記念碑を設置した東部ニュージャージー州パリセーズパークを、2012年5月1日、在ニューヨーク日本領事館の廣木重之総領事が訪ね、ジェームズ・ロトゥンド市長らに会いました。
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“見返り”を拒否
現地の韓国系米国人関係者やその時の地元紙の報道によると、席上、廣木総領事は町に桜の木や図書館の蔵書の寄贈などを持ちかけました。ところが、それは「慰安婦」記念碑の「額」を取り外すことのいわば“見返り”。市長は即座に拒否しました。
その直後の6日には、自民党の古屋圭司衆院議員、山谷えり子参院議員ら「自民党領土に関する特命委員会」の4人の議員が市長や同市の議員らに会い、記念碑の撤去を要求しました。
ロトゥンド市長がその後、会見で語ったところによると、3時間に及ぶ懇談の中で古屋議員らは、「慰安婦」の数として記念碑に書かれた「20万人以上」という数字が間違っていると主張。「慰安婦」は自ら進んで「兵士に奉仕した」などと述べたといいます。
「日本政府の記念碑への対応は残念です」と「韓国系米国人市民エンパワーメント」(KACE)のチェジン・パクさんは振り返って言います。
バーゲン郡の裁判所前には現在、(1)米国の「奴隷制」(2)1915〜23年のオスマン・トルコによる「アルメニア人虐殺」(3)1845〜49年にアイルランドで起きた「ジャガイモ飢饉(ききん)」(4)ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)―の犠牲者にささげた記念碑が建てられています。
しかしいずれも“加害者”とされる国の政府から撤去を求められたことはありません。「アルメニア人虐殺」にいたっては、トルコ政府が公式には認めていない事件です。
そしてニューヨーク州に記念碑が設置されるのは、この時の日本政府・自民党議員の撤去要求がきっかけでした。「韓国系米国人公共問題委員会」(KAPAC)会長のデービッド・チョルウ・リーさんが言います。
「このままでは」
「このままではいけないと思い、二つ目の記念碑をつくろうと呼び掛けたんです。2週間で実現しましたよ」
そして今、バーゲン郡で新たな「慰安婦」記念碑設置が進んでいます。(つづく) (ワシントン=山崎伸治 写真も)