2013年2月3日(日)
主張
公務員賃金削減
政府は賃下げの強制を改めよ
政府は、地方公務員の賃金を7月からさらに7・8%引き下げることを地方自治体に求め、2013年度予算案の地方交付税を減額しました。昨年、民主党政権が実施した国家公務員賃金の引き下げに準じたものです。民間の賃金も1997年をピークに年間59万円下がっており、働くものの所得は落ち込むばかりです。安倍晋三首相は所信表明演説で、国民の所得が失われていることを経済危機の要因にあげ、「突破にまい進」するといいました。それなら自治体に公務員の賃下げを強制し、政府が主導して国民の所得を奪おうとするやり方は改めるべきです。
地域経済を疲弊させる
公務員は、ことし1月から退職金の大幅削減が開始され、地方では「駆け込み退職」による混乱がおこっています。そのさなかの政府の予算措置に全国知事会など地方6団体は「極めて遺憾である」という共同声明を発表しました。「地域経済の再生なくして、日本経済の再生なし」という国と地方の共通認識に反するといいます。
いま地域経済は、電機大手を中心に工場の閉鎖、縮小の嵐がふきあれ、深刻な事態になっています。たとえばソニーが岐阜県美濃加茂市にある工場をことし3月で閉鎖します。2400人の雇用が失われようとしています。県と関係市町村が対策本部を設置して、失業の危機にある労働者の相談に応じ、緊急雇用創出のために5億円の予算を組んで対応しています。
これらはほんの一端です。全国のいたるところで自治体が苦闘しています。そのときの地方公務員賃金の引き下げは、自治体の努力に冷水をあびせ、地域経済を疲弊させ、再生を困難にするものです。
政府のやり方が乱暴で、ルールに反していることも問題にしなければなりません。地方公務員の賃金は、自治体が独自に自主的に条例をつくって決定するのが地方公務員法で定められた原則です。職員団体との交渉にも応じなければなりません。国が一方的に下げ幅を決め、実施を強制する前提で地方交付税を減額するのは、この原則をふみにじる行為です。
ルール違反は、前の民主党政権が、国家公務員の賃金を引き下げたときも同様でした。国家公務員の賃金は、労働基本権を奪った代償として、人事院という第三者機関の勧告にもとづいて決めるという国家公務員法の規定さえ無視し、民主、自民、公明の3党が議員立法で強行しました。公務員賃金は、このように憲法と公務員法を乱暴にふみにじり、法治国家の根幹を揺るがすやり方の連続で引き下げられてきました。
所得の減少を断つ決断を
公務員と民間労働者の賃金は、引き下げの悪循環におちいっています。民間では「ベースアップはだめ」「定期昇給は凍結」という財界による賃金抑制と、派遣労働など低賃金、身分不安定な非正規雇用の増大で減り続けています。
公務員も賃下げだけでなく、住民サービスの分野を中心に低賃金の非正規雇用化がすすみ、「官製ワーキングプア」という深刻な状況を生み出しています。
民間と公務の賃下げの連鎖による所得の減少を断つことが重要です。地方公務員の賃下げ予算撤回はその第一歩です。デフレ不況からの脱出のために、いま政府に求められているのはこの決断です。