2013年1月31日(木)
きょうの潮流
トップ選手たちの勇気ある訴えでした。柔道女子のロンドン五輪日本代表をふくむ15人が、代表監督ら指導陣から暴力やパワハラをうけていたと、日本オリンピック委員会に告発していました▼柔道連盟の記者会見によると、合宿などで殴ったり、蹴ったり、棒で小突いたり…。集合時間に遅れた、指示通りにできなかったとの理由で。関係者の話では、負傷の選手を無理やり試合に出させたり、見せしめのように殴られた選手もいたそうです▼暴力を容認する柔道界の体質は根深い。過去何年も学校や町道場で絶えなかった柔道事故の多くは指導者の体罰やしごきが原因で起きています。ジュニアからトップまで、闇のひろがりがみえます▼そのなかで現役の選手が声をあげ、立ち上がった意義は大きい。指導者には絶対服従の環境に置かれ、選手としての生殺与奪も握られているのですから。実際、泣き寝入りしてきた選手も少なくありません▼指導者の体罰は相手のためによかれと思っているケースがあります。だからこそ、それをなくしていくには、周りがどんな理由があっても許さないという毅然(きぜん)とした態度を示すことが肝心でしょう▼日本の柔道界には「柔道ルネッサンス」と名付けた、人間教育の試みがあります。相手を尊重し、自分の人格を形成していく、柔道の原点に立ち返ろうという宣言です。その最初の宣言は、「指導者自らが襟を正し、『己を完成し、世を補益する』ことを実践します」。一人ひとりが胸に刻むときです。