2013年1月29日(火)
生活保護 根拠なき引き下げ
暮らしの最低ライン後退
政府は、生活保護費のうち生活費に当たる生活扶助を3年間で段階的に引き下げることを決めました。96%の世帯が引き下げられます。なかでも子どもの数の多い世帯が一番の打撃を受けます。(西沢亨子)
引き下げには根拠がありません。
政府は、厚生労働相の諮問機関が出した「検証結果」を踏まえて見直したとします。この検証方法は、最も所得の低い1割の世帯の消費水準と比べるやり方です。
しかし、日本では生活保護水準以下の所得の世帯のうち生活保護を利用しているのは15%程度にすぎません。保護を利用できる水準なのに利用していない漏給率がヨーロッパ諸国に比べ格段に高くなっています。それを放置したまま低所得層との比較で生活保護基準を決めれば、基準が下がるのも当然です。
生活保護が保障すべき「最低生活費」を計る方法は、ほかにもいくつかあります。厚労省の社会保障審議会の部会には部会の委員によって別な検証結果が報告されました。それらではいずれも、現在の生活保護水準は低すぎ、引き上げが必要だという結果がでています。
さらに、政府が今回用いた方法でも、高齢者世帯などは引き上げが必要だという結果がでていました。60歳以上の単身世帯では4・5%の引き上げが必要でした。ところが政府は、「物価が下落している」という口実を持ち出してそれらの世帯まで引き下げようとしています。
しかし、物価指数を下げているのはビデオやデスクトップパソコン、テレビなど、生活保護世帯、ことに全体の約半分を占める高齢者世帯には縁遠いものが中心です。それをもって最低生活費を下げれば、暮らしがたちゆかなくなります。
厚労省の部会の委員からも、引き下げには慎重であるべきだという意見がでていました。
生活保護基準の引き下げは、国民生活全体の最低生活ラインを下げ、暮らしを支える“岩盤”を壊します。07年に世論の力で引き下げを許さなかったように、引き下げをストップさせる世論を急速に広げることが求められています。