2013年1月29日(火)
きょうの潮流
2007年9月10日に開かれた第168回臨時国会。所信表明演説に立った安倍首相は「職責を果たす」ことを誓いながら、わずか2日後に辞任。それから5年余、ふたたび所信に立った安倍首相は自分の信念を巧妙に隠していました▼前の政権のときは「美しい国」を連発し、「戦後レジームからの脱却」をかかげ、現行の憲法を敵視しました。ところが今回は封印。もっぱら国民の危機感をあおり、みずからを「危機突破内閣」と名付けています▼しかし日本が直面する危機は、もとはといえば自分たちの党が招いたものです。最近、得意気に口にする「三本の矢」も「金融緩和は効果がなかったし、大型公共事業は借金の山をつくっただけ、規制緩和による経済成長は小泉『構造改革』の焼き直しだ」(日曜討論で日本共産党・市田書記局長)▼これでは、いくら「強い経済を取り戻そう」「誇りと自信を取り戻そう」と威勢よくいわれても、なんの展望も描けないでしょう▼政権交代で野に下って3年半。自民党も安倍首相も「真摯(しんし)に国民の声に耳を傾けてきた」はず。しかし原発やTPPの推進をみても、やろうとしていることは多くの国民の願いに背を向けるものばかり▼「額に汗して働けば必ず報われ、未来に夢と希望を抱くことができる、まっとうな社会を築いていこう」。国民にそう呼びかけた安倍首相。それを実現するためには、国民の声を都合よく聞く政権ではなく、しっかり聞いた声を政治に生かしてこそではないでしょうか。