2013年1月27日(日)
安倍政権
35人学級見送る
条件整備の後退鮮明
政府は26日までに、文部科学省が求めていた2013年度から5年間で公立小・中学校の全学年で35人学級を実現する計画を見送る方針を固めました。
長年の国民の運動と日本共産党の国会などでの要求によって、民主党政権下の11年度から小学1年については法改正で35人学級が実現、12年度は予算措置によって小学2年の35人学級が全国でほぼ実現しています。
文科省はさらに、13年度からの5年計画で中学3年までの35人学級実現をめざし、初年度分として13年度予算の概算要求(政権交代後の再提出)で113億円を盛り込んでいました。
それに対し、財務相の諮問機関である財政制度審議会は、▽「費用対効果の観点」から少人数学級の効果が明らかでない▽公務員の人件費削減が求められている―などとして、教職員定数の改善に難色を示していました。
安倍政権は、「教育再生」を「経済再生」と並ぶ「最重要課題」としていますが、中3までの35人学級の実現計画見送りは、自公政権での教育条件整備の後退を鮮明にしています。
圧倒的な国民の願い止めるのは許せない
全日本教職員組合(全教)の今谷賢二書記長の話 少人数学級の実現は圧倒的な国民の世論です。せっかくスタートした歩みを止めるのは許せません。
貧困と格差の広がりなど、子どもたちの心配な状況にきちっと目を向け、教育を受ける権利を最大限に保障するために、少人数学級を前に進めることは不可欠です。非正規教職員の問題を解決するためにも国が計画を持って改善を進めていくことが重要です。
「財政効果」や「対費用効果」で議論されるべき中身ではありません。日本の教育予算は世界でも最低水準なのに、そこを切り詰めるのでしょうか。
少人数学級実現に、今後も力を尽くしたい。
解説
35人学級実現見送り
教育重視いいつつ出し渋り
文部科学省は昨年、2013年度から17年度までの5年間で、中学3年生までの全学年で35人学級を実現するための教職員定数改善計画をつくっていました。
それに対し、21日に出された財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の報告書では、少人数学級の「費用対効果」を問題にし、「学級規模と学力、いじめ・不登校、暴力行為の発生件数の間に密接な関係は見いだせない」などとしています。
少人数学級について文科省の検討会議がまとめた報告(12年9月)は、教育現場の実情を、「かつてないほど…学級担任の負担は増大している」と指摘。教育関係団体だけでなく、全国知事会、全国市長会などからも定数改善の要望が出されていることにふれ、「子どもたち一人一人にしっかりと向き合い、質の高い行き届いた授業、生徒指導等を行っていくために」、教員定数の改善をすすめることが「必要不可欠である」としています。
少人数学級の効果についても、学力の向上や出欠、不登校の改善例を示し、分析を積み重ねていくことを求めています。
安倍政権が設置した教育再生実行会議の委員の中でも、小学校教諭の経歴を持つ貝ノ瀬滋氏や河野達信氏らは、「きめ細かい指導の充実のために30人程度の学級定数改善が必要」「1学級当たりの児童生徒数を少なくすることは有効」と求めています。
教育の効果は、すぐに数値で結果が出るものではありません。安倍政権が「教育再生」を内閣の最重要課題とするなら、「投資」を出し渋ることはできないはずです。(斎藤瑞季)