2013年1月25日(金)
きょうの潮流
幕末から明治にかけての動乱期はドラマや映画の題材になりやすい。その多くは坂本龍馬や西郷隆盛といったヒーローものか、終わりゆく徳川幕府の悲哀をとりあげたものです▼同じ時代を描きながらも、ことしの大河ドラマ「八重の桜」は新鮮です。新島(山本)八重という、あまり光が当たらなかった女性を主人公にすえたのですから。会津藩の砲術師範の家に生まれた八重。その生き方には、「什(じゅう)の掟(おきて)」をはじめとする、会津武士の教えが色濃く反映しています▼この欄でも少し前に「什の掟」にある「ならぬことはならぬ」を引用しました。TPPへの参加交渉をめぐり、米国に対してものを言えない安倍政権にむけたものです。それについて「封建制度の教えを用いるのはよくない」という、ご意見をいただきました▼たしかに当時の教育は、主君に忠誠をつくす道が貫かれています。当然、それは「什の掟」にも表れているので、その意見には一理あります▼しかし「什の掟」には現代版があります。会津若松市がつくった「あいづっこ宣言」です。そこには「人をいたわります」「卑(ひ)怯(きょう)なふるまいをしません」「夢に向かってがんばります」といった、生きていくうえで大切にしてほしいことが書かれています▼「ならぬことはならぬものです」の意味は、悪いことはしない、自分のやるべきことはしっかりとやって生きるというもの。では、なにが悪いことか、自分のやるべきことは何なのか。それを問いかける言葉でもあるのです。