2013年1月25日(金)
いじめ対策で提言へ
教育再生会議が初会合
政府は24日、教育改革を議論する「教育再生実行会議」の初会合を首相官邸で開きました。座長の鎌田薫早稲田大総長ら有識者のほか、安倍晋三首相、下村博文文部科学相、菅義偉官房長官が出席。安倍首相は教育を「経済再生」と並ぶ「最重要課題」だとし、「最終的な大目標は、世界トップレベルの学力と規範意識を身に付ける機会を保証することだ」とあいさつしました。まずはいじめ対策について話し合い、2月中をめどに提言をまとめる方針です。
実行会議は第1次安倍内閣が2006年に設置した「教育再生会議」を事実上、復活させたもので、月2回程度のペースで開催するとしています。
いじめ対策では、文科相が「いじめ防止対策基本法」を28日召集の通常国会の会期中に議員立法で成立させるよう各党に呼び掛ける考えを示しています。実行会議では、基本法のたたき台を検討するとしています。
首長と教育委員会の関係など教委制度についても4月中の提言を目指します。文科相はこれを受け、中央教育審議会(文科相の諮問機関)での議論を経て、14年の通常国会に関連法の改正案を提出したい考えです。
実行会議ではこの他、▽大学の在り方▽グローバル化に対応した教育▽小中高校と大学の「6・3・3・4制」の学制▽大学入試―を議題とします。
会議の公開は冒頭の首相と座長のあいさつまでで、文科省の説明によれば、同日の会議では委員から「戦後教育は権利と自由ばかり強調してきた。道徳教育に注力すべきだ」との発言や、道徳を教科化すべきだとの意見が相次ぎました。
解説
非公開・拙速議論に疑問
教育再生実行会議の議論は非公開とされています。24日に官邸で開かれた初会合も、マスメディアに公開されたのは冒頭の首相、文科相、座長のあいさつのみ。議事録が公開されるのは1〜2週間後といいます。
最初のテーマとされているのは、いじめ問題ですが、2月中旬に予定される次回の会合は1時間半で議論は終了。あとは下村博文文科相と鎌田薫座長でとりまとめ、議員立法で国会提出する意向の「いじめ防止」法案に反映させるといいます。
教育問題では、教育専門家や現場の教職員、父母を含めた国民的な議論が欠かせません。限られたメンバーで非公開で議論して拙速にまとめたものが、教育現場の改善につながるのか疑問です。
会議の顔ぶれも、その心配を拡大します。座長の鎌田氏は教育学ではなく民法の専門家です。副座長の佃和夫・三菱重工会長は、「国を愛し」「自衛隊支援協力を目的とする」全国防衛協会連合会の会長で、軍需産業の立場から武器輸出三原則の見直しや改憲論議を求めている人物です。
このほか、▽日本の侵略戦争を肯定する「新しい歴史教科書をつくる会」元会長の八木秀次氏▽愛媛県知事として「つくる会」教科書を県立学校で採択した加戸守行氏▽沖縄戦で集団自決強要はなかったとする曽野綾子氏▽改悪教育基本法に「愛国心」を盛り込むことを主張した全日本教職員連盟の委員長の河野達信氏▽戦後民主教育は「自由と権利ばかり強調されて、義務や責任が十分に教えられていない」とする塾経営者の佐々木喜一氏―などが委員に名を連ねます。
国民の前に議論を公開すべきです。
(西沢亨子)