2013年1月22日(火)
アルジェリア人質事件
軍事介入を口実 武器拡散も
「対テロ」戦略の破綻
【カイロ=小泉大介】多数の外国人死亡という最悪の事態をもたらしたアルジェリアの人質事件をめぐり、圧倒的な中東・アラブ世論は犯行におよんだ武装集団を無条件で糾弾しています。今回の事態は2001年の米同時多発テロ後に台頭した国際的な「対テロ」戦略の破綻を改めて示したものだとの指摘もあがっています。
「イスラム過激派組織は、米国や欧州が中東に武力で進出してくるのは自らの権益確保と地域支配のためだと宣伝し、組織を強化してきました。アフガニスタンやイラクでの戦争は支配そのものであり、過激派組織に対し、同じく武力で対抗する口実を今も与え続けているのです」
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本紙に対しこう語ったのは、アルクッズ中東研究センター(所在地アンマン)のヤヒヤ・クバイシ研究員です。
同氏は、過激派組織が勢力を拡大する共通の土壌に加え、アルジェリア人質事件の直接的な背景として、一昨年、隣国リビアでカダフィ政権打倒のために北大西洋条約機構(NATO)軍が行った軍事介入を挙げました。
NATOによる軍事作戦の過程で、リビア国内に大量の武器が流出し、それが過激派組織の手に渡ったというのです。「しかも軍事作戦がもたらした混乱により、武器を手にした過激派組織がリビア、アルジェリア、マリといった地域を自由に移動できるようになった」(クバイシ氏)ことも見過ごせません。
今回のアルジェリア人質事件では、武装集団が仏軍による隣国マリでの軍事作戦の停止を解放の条件としました。少なくとも同作戦が犯行の口実に使われたことは明らかです。
この点について、汎アラブ紙アルクッズ・アルアラビのアブデル・バリ・アトワン編集長は「米国のイラク侵略が(国際テロ組織の)アルカイダに活気を与えたように、フランス軍によるマリ軍事介入が過激派組織に思わぬ幸運をもたらそうとしている」(同紙19日付)と指摘。フランスがアフガン、イラク、リビアの教訓を学ばないのであれば、再びアルカイダのわなにはまることになると警告しました。
地域に緊張
フランスによるマリへの軍事介入に関しては、今回の人質事件での強引な作戦で国際的批判を浴びているアルジェリア政府からでさえ、「武力介入でマリの領土的一体性を回復しようという試みは冒険であり成功の見込みはない。地域の緊張を激化させる軍事的対決を導くだけだ」(ウルドカブリア内相)と、政治的解決を求める声が出ていました。