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2013年1月20日(日)

主張

生活保護費引き下げ

「貧困の連鎖」を拡大するのか

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 安倍晋三内閣は生活保護費の引き下げを2013年度から実行する構えです。田村憲久厚労相が「引き下げる」と発言し、公明党の石井啓一政調会長も「やらざるをえない」と述べました。1月末決定の政府予算案に盛り込むための協議を本格化させています。

 生活保護費は、国民の生存権を保障し、生活を維持する必要最低限の金額です。くらしの「最低ライン」に大穴を開け、貧困拡大に拍車をかける「引き下げ」強行は中止すべきです。

国民のくらしにも影響

 安倍政権が当面の“標的”にしているのは、食費や水光熱費、被服費という生活に欠かすことができない生活扶助費の支給です。

 「引き下げ」の根拠にしているのは、同相の諮問機関・社会保障審議会生活保護基準部会の報告書(18日了承)です。同報告書が、生活扶助費について、一般低所得世帯(全世帯のうち収入が低い方から10%の世帯)の生活費を上回っているケースもあるという、機械的な試算を公表したからです。

 しかし、この報告書をもって「引き下げ」のお墨付きをえたかのようにいうのは乱暴きわまる主張です。高齢者の単身世帯や夫婦2人世帯で比較した試算では、生活扶助費が低所得世帯の生活費を下回りました。受給世帯の過半数を占める高齢世帯の扶助費の貧弱な現実を浮き彫りにしたものです。

 一方、夫婦2人子ども2人世帯では、低所得世帯の生活費より扶助費の方が上回りましたが、このケースは受給世帯数の1%にも満たない世帯数です。扶助費全体の引き下げの根拠にはなりません。

 比較対象となった低所得世帯には、生活保護基準を下回るか、基準ぎりぎりの生活であるにもかかわらず、生活保護を受給できていない世帯も含まれています。その低所得世帯と比べて「高い」ケースがあったと生活扶助費を引き下げてしまっては、“際限ない引き下げ”の連鎖しか生みません。

 生活扶助をはじめとする保護基準の引き下げは、生活保護受給者だけの問題にとどまりません。最低賃金は、生活保護基準より下回らないことを法律に明記されており、基準引き下げは最賃引き下げに連動します。住民税の非課税限度額とも連動しているため、基準引き下げによって新たに課税される世帯が広がります。保護基準の引き下げは、国民に深刻な打撃をあたえることは明白です。

 生活保護大改悪は、自公政権時代の06年の経済財政諮問会議の「骨太方針」で明記され、第1次安倍政権も「確実に実行」する課題として引き継いだものの、国民的な反撃が広がり、断念に追い込まれたものです。政権に復帰するやいなや、生活保護大改悪の具体化を急ぐ安倍・自公政権の暴走は不当このうえないものです。

「生存権守れ」の声広げ

 生活保護は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障する責任を政府に課している憲法25条にもとづく制度です。消費税大増税と社会保障の「一体改悪」路線を推進する安倍政権は、生活保護大改悪を「突破口」にして、憲法が保障する戦後の社会保障制度の解体を狙っていることは明らかです。「生存権を守れ」の幅広い声を結集し、社会保障制度を守り、拡充する共同の力を広げることが重要です。


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