2013年1月19日(土)
「デフレ」主役はIT
「品質調整」が見かけの値下げ演出
一方で必需品値上げも
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2010年から11年において、消費者物価指数を押し下げたのは、テレビやパソコンなどIT関連商品でした。総務省発表の「消費者物価指数」年報から分かります。
政府の定義によると「デフレ」とは「継続的な物価下落」を指します。消費者物価指数の総合値は前年比で、09年に1・4%減、10年に0・7%減、11年に0・3%減と3年連続で下落しました。どういった品目が下落をけん引したのか、品目ごとの下落率を見ました。
もっとも下落したのは高校授業料です。10年比で94・1%も下落しました。これは政府の高校授業料無償化の影響です。2位以降はビデオレコーダーやデスクトップ型パソコン、テレビ、カメラなどIT関連やハイテク機器、家電などが並びます。
こうした商品の下落率が高くなるのは「品質調整」という作業が行われているからです。消費者物価指数は純粋な物価変動の測定が目的なので、同一商品の価格推移を追跡することが原則です。しかし、品質改良された後継商品が出され、追跡してきた商品が製造中止になるなどの場合には、調査対象を入れ替える必要があります。その際の品質や容量の違いが指数に入り込まないようにするために行うのが、「品質調整」です。
とりわけパソコンやカメラなど製品サイクルが短い商品は、新モデルが登場し、性能が向上するたびに、指数が引き下がることになるのです。
機械の進歩により見かけ上の「物価指数」が引き下げられる一方で、値上がりした品目では灯油やガソリンなど生活に欠かせないものや食料品なども目立ちます。
8日の第1回日本経済再生本部の会合後、安倍晋三首相は「10年以上にわたるデフレからの脱却、これへの取り組みは、人類史上、劇的な取り組みであろうと思います」と、「デフレ」脱却に向けた決意を表明しました。
具体的には、「物価目標」を設定して、金融緩和を行うつもりです。しかし、電化製品の見かけの「値下げ」を補うだけの値上げが生活必需品などで行われるならば、庶民の生活はいよいよ苦しくなります。(清水渡)
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