2013年1月17日(木)
阪神・淡路大震災18年
孤独死 1000人超す
地震では助かった命なのに、誰にもみとられず亡くなっていく―阪神・淡路大震災後、仮設住宅と復興公営住宅で起きた被災者の孤独死が1011人に達しました。(グラフ)
抜本的支援が急務
「男性は餓死に近い。枕元に酒パックと履歴書。冷蔵庫は自治会が配ったリンゴだけだった」(97年、神戸市中央区の仮設住宅)、「死後2週間の男性は風呂上がりの裸のままうつ伏せになって、うじがわいていた」(07年、同市北区の復興県営住宅)。発見者の声です。
97年8月には、神戸市中央区の仮設住宅で、真夏にもかかわらず料金滞納で市に水道を止められた女性(53)が衰弱死し、大問題になりました。
「棄民政策」
被災者に自力再建を押しつけた国・自治体の姿勢は「棄民政策」とよばれましたが、この痛ましい死はその象徴といえます。東日本大震災でくり返してはいけない負の教訓です。
ほとんどの孤独死は、人と人とのつながりが断ち切られたこと、元の生活に戻る見通しがなく生きる希望を失ったことが主な要因と指摘されています。
震災後、地域のコミュニティーが壊され、「住み慣れた元の街に戻りたい」という被災者の願いがふみにじられました。仮設住宅と復興住宅は数が足りないうえ、県や市は郊外や埋め立て地など不便な遠方に多く建設。被災者は、仮設入居の際も復興住宅に移る際も抽選でバラバラにされ、追いやられました。
高齢化・貧困
仮設住宅では、仕事がなくアルコールに依存する人が増え、孤独死が社会問題に。断熱性がなく極端な寒暖、すきま風など劣悪な住環境が健康を悪化させました。
復興住宅では、仮設住宅でできたコミュニティーが再び壊されたうえ、鉄のドアで仕切られて孤立がさらにすすみ、高齢化、病気、貧困が孤独死増に拍車をかけています。
孤独死は一向に減らず、防ぐために被災者への抜本的支援が急務です。
地域・医療との連携強化が必要
金持(かなぢ)伸子・日本福祉大学名誉教授 日本は高齢者の独り住まいが増え、分断が広がっていますが、震災でいっそう表面化しました。
公営住宅の多くは家族からも職場からも遠く、高齢化とともに分断、孤立がすすみました。
県や市は見守り制度をつくりますが、スタッフは非正規職員で、戸をたたいて声をかけるのが精いっぱい。何に困っているかまで見守りできていないのが実情です。生活保護が必要な人が多いのに手が届かず、住民同士の助け合いも高齢化で難しくなっています。
これらの状況が孤独死を生んでいます。この時期に借り上げ復興公営住宅からの転居をすすめれば、孤独死は一段とすすむでしょう。せめて集会所などに支援のスタッフが常駐し、被災者の相談に乗ったり、地域包括センターや医療関係者との連携を密にするなどの支援がぜひとも必要です。
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