2013年1月17日(木)
防衛相の沖縄初訪問
聞き役には徹するが県民総意に耳貸さず
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「安倍首相からの指示は『しっかり沖縄の声を聞いて来い』ということだ」―。就任後初めて沖縄を訪れた小野寺五典防衛相は、訪問目的をこう説明し、関係者との懇談では名護市辺野古への新基地建設、オスプレイ配備推進という真意を隠して、終始、聞き役に徹しました。しかし、行く先々でその耳に入ったのは、これ以上の基地負担を望まない「オール沖縄」の声です。
以前より厳しい
「今の日本は米国から糸を引かれている」(翁長雄志・那覇市長)、「日米安保のためにこれ以上、町民の命を危険にさらすことはできない」(當山宏・嘉手納町長)。保守派首長からも相次ぐ政府への批判に、米軍基地所在市町村長らとの懇談後の会見で、小野寺防衛相は「以前に比べて厳しい指摘を頂いた」と初訪問を振り返らざるをえませんでした。
稲嶺進・名護市長が「昔は保守対革新と位置づけられがちだったが、今は県民全てが自分たちの生活を守ると自覚している状況だ」と述べるように、沖縄は安倍自公政権復活を、新基地賛成、反対で分かれていたかつてとは異なる県民総意の怒りの声で迎えました。
県庁前の抗議行動だけでなく、普天間基地(宜野湾市)視察に訪れた高台でも、「基地を持って帰れ」など、市民からの厳しい声が、航空機の爆音に混じって防衛相に投げかけられました。
政府方針示さず
県庁では、入院中の仲井真弘多知事に代わって上原良幸、与世田兼稔の両副知事が応対。普天間基地の代替とした辺野古への新基地建設については「事実上不可能」として県外移設を要求、オスプレイ配備見直しも求めるなど従来の県の立場を説明しました。
普天間基地「移設」については、安倍首相が「新基地推進」を明言しているにもかかわらず、政府方針を説明することなく、「普天間の危険性の除去は急がなければいけない」と述べるにとどまりました。
会談後の会見でも、首相訪米前の2月にも辺野古への公有水面埋め立て許可を知事に申請すべきとの意見が政府内であがっていることを問われ、「まだ何も決まっていない」と明言を避けました。
自公政権の閣僚が、自公県政に対して本音を言えない―。政府と沖縄の亀裂の根深さが改めて示されました。(池田晋)