「しんぶん赤旗」
日本共産党
メール

申し込み記者募集・見学会主張とコラム電話相談キーワードPRグッズ
日本共産党しんぶん赤旗前頁に戻る

2013年1月5日(土)

マスメディア時評

国民あっての国家でないのか

このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 mixiチェック

 師走の総選挙で民主党政権が敗退し自民・公明連立の安倍晋三政権が発足した中での、新年の全国紙などの社説(主張)に目を通しました。「読売」「日経」「産経」など“右寄り”各紙が安倍政権の復活に力づけられたように、「政治の安定で国力を取り戻せ」(「読売」)などの主張を掲げる一方、「朝日」は「『日本を考える』を考える」などという思わせぶりなタイトルで、「なんでもかんでも国に任せてもうまくはいかない」などと主張してみせます。見過ごせないのは「朝日」が、「国家を相対化する」として、大阪府・市政で独裁的な行政をつづけ、「日本維新の会」を率いて国政に進出した橋下徹氏の発言を評価していることです。

肝心の国民が見えてこない

 一見対極的なようにも見える両者の主張ですが、実はその本質にはそれほど違いはありません。「読売」などがもてはやす「国力」にも、「朝日」が「相対化する」という「国家」にも、肝心の国民が見えてこないことです。

 「読売」が「取り戻せ」といい、「日経」が1日付から「国力を高める」として連打している「国力」論のねらいが、民主党政権によって破壊されたという経済や外交の、復活した安倍政権による立て直しへの期待にすぎないことは明らかです。「安倍政権の使命は、政治の安定によって、国力を維持・向上させることにある」という「読売」の主張や、よりストレートに、「長期安定政権で国難打開を」と注文を付ける「産経」年頭恒例の論説委員長の1面論評にもそれは表れています。

 「読売」は、「国力」の中身として経済再生や成長力回復をあげますが、「成長戦略練り直しは原発から」のサブタイトルが示すように、まず原発の再稼働を認め、「原発ゼロ」を見直して新増設にも踏み出していけというのがその核心です。まさに財界や電力業界の意向に忠実です。いまだ収拾のめどさえ立たない東京電力福島原発事故に向き合い原発からの即時撤退を求める国民の願いを、国家が力ずくで踏みにじれということであり、「読売」などが求める「国力」に、国民のことなど眼中にないのは明らかです。

 一方「朝日」社説はどうか。

 「朝日」が「なんでもかんでも国に任せてもうまくはいかない」というのは、これまで「非自民」や「二大政党」をあおり立ててきた「朝日」の挫折感の表れかもしれませんが、「国家を相対化する」根拠に、「維新の会」の橋下氏の主張を持ち出すというのでは説得力はありません。

 「朝日」は、橋下氏の「世界経済がグローバル化するなかで、国全体で経済の成長戦略を策定するのはもはや難しい」ということばを引いて、「国家」を「相対化」し、「地方」にも「道を選ぶ権限も渡してほしいというわけだ」と全面肯定してみせます。しかし、自ら「独裁者」を公言する橋下氏の視野に、肝心の国民・住民が入っていないことには目を向けないのか。橋下氏が掲げた「大阪都構想」なるものも、住民本位の地方自治とは無縁な、権力主義的な発想にすぎません。その橋下氏を持ち出して「国家の相対化」を正当化しようとするところに、「朝日」の主張の皮相さがあります。

国民が主人公貫く立場こそ

 いったい「国家」とか「国力」とは何か。国民を「国の主人公」と定めた日本国憲法が決まった直後、当時の文部省が発行した『あたらしい憲法のはなし』には次のことばがありました。

 「国の力のもとは、ひとりひとりの国民にあります。そこで国は、この国民のひとりひとりの力をはっきりと認めて、しっかりと守っていくのです」

 「読売」などが「国力」をいいながら「国家」を絶対化し「国家」の都合を国民に押し付けるのも、「朝日」が国家の「相対化」をいいながら自ら「独裁者」として君臨しようという人物を持ち上げるのも、国民を国の「主人公」とする憲法の立場とはかけ離れています。

 こうした全国紙の新年の論調にくらべれば、安倍政権復活に際して改めて「人間中心主義を貫く」と宣言した「東京」(「中日」など)社説や、「一地域に住む人々の圧倒的な犠牲を前提にしなければ成り立たないようなシステムをこのまま放置し続けていいのか」と、沖縄に集中する米軍基地を告発した「沖縄タイムス」社説など、地域に密着した地方紙の社説が憲法の立場に近いものを持ちます。

 日本の政治が「主人公」である国民の立場からかけ離れているのは、「アメリカいいなり」「財界中心」の政治のゆがみがあるからです。「国力」低下の元凶もそこにあります。国民こそ主人公の立場をつらぬき、政治のゆがみを正すことこそ、政治を国民に取り戻し、本当の国力を高める道であることを、マスメディアも大いに論じるべきではないでしょうか。(宮坂一男)


見本紙 購読 ページの上にもどる
日本共産党 (c)日本共産党中央委員会 ご利用にあたって