2013年1月5日(土)
工場と雇用14年間守る
早期退職も転籍も拒んだ100人の力
JMIU高見沢電機支部 長野・佐久
長野県佐久市にある電子部品メーカー、高見沢電機の信州工場。14年前、親会社の富士通につぶされるはずでした。JMIU(全日本金属情報機器労働組合)高見沢電機支部の組合員100人が団結して早期退職も転籍も拒み、工場を存続させました。不屈のたたかいで、職場も雇用も守り抜いています。(酒井慎太郎)
昨年末、工場内の食堂で開かれた支援共闘会議の総会。これまで全国から寄せられた檄文(げきぶん)が壁一面を埋める食堂は、地域の支援者らで満席でした。
議長の高村裕・長野県労連議長は「不当な攻撃に抗して今日まで雇用を守り続けている。これこそが労働者の団結の力だ」とあいさつ。全員で腕を組み、労働歌「がんばろう」を歌いました。
富士通内で
工場はいま、現役の組合員34人が働いています。うち正社員は男性1人、女性2人の計3人。そして、定年を迎え、再雇用された31人です。
「無事に定年を迎えられて幸せです。信頼できる仲間がいたから頑張れました」。今月、再雇用契約を満了する女性(63)は喜びました。高卒の18歳で入社して45年間、製造現場を勤め上げました。
女性が働き続けられる職場です。「業績査定のない男女同一賃金や母性保護の諸権利など、女性の労働条件はピカ一です」と誇る支部の小林透委員長(62)。富士通グループ内で唯一のたたかう労働組合が勝ち取った成果です。組合員の団結を守ってきました。
壁作り分断
1999年、工場閉鎖と全員解雇が提案されました。組合員数にあわせた早期退職枠。子会社に転籍すれば4割の賃下げ、勤務時間は年間200時間増えました。
第2組合はこの提案を丸のみし、「富士通がバックだ。たたかっても無駄だ」と宣伝。しかし、約350人の従業員のうち、JMIUの100人が踏ん張りました。
女性(63)はその一人。「体を張って弱者を守る執行委員を何人も見てきた。この人たちのいうことは間違いない」と残ることを決心。会社幹部は団体交渉で「100人も残っちゃった」と嘆きました。
会社は、工場の中央を貫く壁をつくり、東西に分けました。建設費は約7500万円。同居させる子会社と分断するためで、今も「ベルリンの壁」と呼ばれます。建設業者も「こんなことは初めてだ」とあきれました。屋外の駐車場までロープで分けられました。
組合員は仕事を干されました。終日、構内の草むしりや雪かき、補修をしました。5年ほど、本来の仕事がない人もいました。一方、隣の子会社では残業続きでした。
その上、兵糧攻めにあいました。2002年以降、定期昇給を含めて賃上げはなし。03年には一時金もなくなりました。
あわせると、年収は2割、約100万円も減りました。退職金も出ないと脅されました。子どもの進学時期に重なる組合員が多く、進学を断念させた人もいました。
賃上げ実現
組合員の合言葉があります。「たたかってこそ展望が開ける」。全組合員が各地をオルグに歩きました。これまで、一人も脱落していません。
10年には一時金支給を再開させ、11年には賃上げを実現しました。以降、再雇用者を含めて賃上げ、一時金とも獲得しています。
定年まで勤め、退職金も支給させました。定年後は希望者全員が再雇用で働いています。03年に提案された賃下げとリストラも阻止し続けています。
一方、子会社に移った第2組合は、成果主義賃金や派遣労働を容認しました。結局、08年のリーマン・ショックで、派遣社員、再雇用者もほぼ全員が解雇され、雇用を守り通せませんでした。
会社はこの14年間、新規採用をしていません。組合員の自然減を待ち構えているようです。
支部にはOB分会があります。全組合員が工場の存続・発展を求めています。小林委員長は話します。「たたかいは100人でスタートしました。解決するまで100人でたたかい続けます」