2013年1月4日(金)
農業復興へ 踏ん張る
福島市・産直カフェ
福島原発事故を起こした東京電力と国の責任を問い、放射能汚染による困難打開へ立ち上がった福島市内の農産物直売所「産直カフェ」のたたかいは、今年3年目に入ります。7月には設立10周年を迎える節目の年でもあります。安全・安心な農産物を消費者に届ける決意を固めたスタッフ、農業復興へ足を踏み出した後継青年たちの思いを聞きました。(福島県・野崎勇雄)
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昨年の年末セールで行われた餅つき大会。湯気が立ち上るつきたての餅が、あんこ、きなこ、ごまでくるまれ、お客に振る舞われました。「おいしい」と広がる笑顔の輪。しかし、手伝う生産者たちの表情は曇りがちです。
2年半前から農作物を出している男性(69)=国見町=は「事故後、ガクッと売れなくなった。借りた畑10アールの家庭菜園だが、農家の苦しみが分かる。東電をうらむよ」と言います。
売り上げ激減
「産直カフェ」の大震災・原発事故後の売り上げは、7割弱に落ち込みました。店長は「売り上げは今も7割弱のラインまでいったり、いかなかったり。まず農産物を出してくるのが少なくなりました。農家も、農産物の量も。そしてなじみの客も減り、その娘たちが県外や会津へと避難している。ここが踏ん張りどころ」と説明します。
スタッフの一人も「事故後、お客がどんどん離れていき、ものすごくショックだった。ストレスもあるが、がんばって続けています。少しずつ戻っているところ」と言います。
一方、生産者も農業復興に足を踏み出す動きが出ています。
二本松市在住の男性は、父の後を継ぎ2009年から自分名義で農産物を「産直カフェ」とJA直売所に出すようになりました。やっと慣れ始めたときの原発事故。家族から「農業をやめるしかないか」という意見がでました。男性は事故から約1カ月後、手作業で1週間かけ畑を除染。ある程度放射線量が下がったため、農業を続けると決めました。
少量多品目というやり方だったものの、放射性物質を取り込みやすい作物は控えたため、売り上げは半分以下になりました。
原発は止めて
昨年4月、「産直カフェ」で催されたささやかなイベントで、常連客から「大変だけど絶対やめるな。待ってるから」と言われ、奮い立ちました。7割ぐらいまで出荷が戻っています。
「放射能が検出されないよう、今まで以上に緊張感を持って農作業をしている」と語る二本松市在住の男性。「国や東電は早く以前の土地に戻し、原発をすぐ止めてほしい」と言います。
「産直カフェ」の玄関脇には、高さ3メートル以上の縦長の設立宣言文が張り出されています。店長は「農民が立つ『大地』は放射能で汚されてしまいましたが、放射能不検出、安全・安心な農作物を追求し、お客さんを呼び戻したい」と決意しています。