2012年12月31日(月)
戻ってこないロボットたち
福島廃炉作業に従事 今後の工程に影響も
東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で廃炉に向けた作業に従事しているロボットが帰れなくなる事態が次々発生しています。原子炉建屋内はもちろん、高い放射線量の同原発構内での作業にはロボットが不可欠で、今後の工程の進展にも影響が及ぶ可能性があります。
昨年3月11日の東日本大震災が発生した当時運転中だった1〜3号機は、原子炉が壊れ、溶け落ちた燃料を冷やすために注がれている水が高濃度の放射性物質を含んで下に漏れだしています。東電は、2号機の漏れている場所を特定する目的で、今月11日からその可能性が高い原子炉建屋地下のトーラス室でロボットによる調査を開始しました。
階段で転び
調査に使ったのは遠隔操作が可能な四足歩行ロボットです。カメラを搭載した小型走行車(子機)が、トーラス室内にある円筒形の圧力抑制室の上を走り回り、壊れている部分を探します。
しかし、このロボットは調査開始の翌日には入り口付近の階段で転び、あわてて作業員が回収に走るなど、最初からつまずきっぱなしでした。18日には、子機を目的の場所に置くための装置が動かなくなり、21日には子機をつなぐケーブルの巻き取りができなくなりました。結局、子機は本体から切り離され、置き去りとなりました。
ロボットが帰れなくなったのはこれが最初ではありません。昨年10月20日には、2号機原子炉建屋内の放射線量を測定し帰還しようとしていたロボットのケーブルが切れて制御不能となり、3階で立ち往生してしまいました。建屋内の放射線量が高いため、回収することもできず、置き去りになったままです。
今年7月11日には、3号機原子炉建屋トーラス室内で水漏れ箇所を調査していたロボットが、通信が切れたため帰れなくなりました。トーラス室内の放射線量が高いため、やはり回収できないままとなっています。
屋根に落下
帰れなくなったのは、原子炉建屋内を調査したロボットだけではありません。昨年6月24日には、水素爆発で吹き飛んだ原子炉建屋などを撮影していた小型無人機が、外形は無傷のままだった2号機原子炉建屋の屋根に落下、放置されたままになっています。
東電は「原子炉建屋内における多様な作業においては、原子炉建屋内が高線量環境下であることを踏まえれば、ロボット等の遠隔技術の開発・適用が必須となる」(廃止に向けた工程表)としています。このままでは使用するたびに帰って来られないロボットが増えるばかりです。
(間宮利夫)