2012年12月26日(水)
写真家がニコン提訴
朝鮮人元「慰安婦」展 中止通知めぐり
|
戦後、中国に置き去りにされた朝鮮人元「日本軍慰安婦」を題材にした写真展(6月)が、会場を運営するニコン側から開催直前になって突然中止通知がなされた事件で、韓国人写真家・安世鴻(アン・セホン)さんは25日、東京地裁に株式会社ニコンに対する損害賠償等請求訴訟を起こしました。
同写真展中止の理由をニコン側は後に「安氏の政治活動の一環と判明したため」としたものの、東京地裁がニコンに対し、施設を使用させる義務があるとして施設使用を命じる仮処分決定を行い、開催されました。しかし、ニコンは仮処分決定後も写真展に協力できないとの態度を変えず、9月に大阪ニコンサロンで予定されていた同写真展は開催できませんでした。
安さんは、開催への抗議電話などをきっかけとするニコン側の突然の中止通告とそれに続く写真展への協力拒絶行為は、原告に対する債務不履行にあたり、原告の人格権を侵害する不法行為に該当すると指摘。ニコンに約1400万円の損害賠償請求とホームページでの謝罪広告などを求めています。
会見した安さんは、「ニコンから受けた不当な待遇は私個人に対してだけでなく、写真家、表現する人全体へのものだ。訴訟を通して中止通告の本当の理由を明らかにし、同様の問題が二度と起こらないようにしたい」と支援を訴えました。
東澤靖弁護団長は、「写真家がその選んだテーマによって不利益な取り扱いをされることは許されない。表現の自由は憲法でも確立した原則です。この事件は表現の自由の諸原則を掘り崩すもの。暴力的な反対者を理由に表現の場を閉ざすことは危険な傾向だ」と話しました。