2012年12月24日(月)
2012年総選挙 小選挙区制 害悪くっきり
4割得票で議席8割
「選挙制度はこれでいいのか」―先の総選挙結果を受けて噴出する選挙制度見直しの声。浮かび上がったのは小選挙区制の害悪です。
虚構の多数 ゆがむ民意
今回の総選挙で自民党が得た294議席のうち237議席は小選挙区でのものです。小選挙区での同党の得票率は43%でしたが、全300小選挙区議席に占める割合(議席占有率)は79%にもはねあがりました。自民党の大量議席は、小選挙区制がつくりだした「虚構の多数」です。
民主党が「政権交代」を最大争点にした2009年総選挙、自民党が争点を「郵政民営化の是非」にゆがめた05年総選挙でも“4割の得票で7割の議席”となっています。
得票率と議席占有率のズレが生まれるのは、そもそも小選挙区制が民意をゆがめる選挙制度だからです。各選挙区で最大得票の候補者1人しか当選できないため、それ以外の候補者の得票は議席に結びつかない「死票」になってしまいます。
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全有権者数からみた自民 比例投票わずか16%
自民党の「虚構の多数」をつくりだした小選挙区での同党の得票率43%(得票数2564万票)は、小選挙区での投票総数に占める割合です。これも全有権者数からみれば少数で、必ずしも民意を反映したものではありません。
総選挙当日の全有権者数は1億395万9866人。このうち小選挙区で自民党候補に投票したのは24・67%です。32・69%は自民党以外の候補者に入れ、42・64%は投票しませんでした。
政党名を書く比例代表選挙でみればさらに少数です。自民党へ投票したのは15・99%で、自民以外は41・9%。42・11%が投票しませんでした。
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過去最高の死票3730万
今回の総選挙の小選挙区で議席に結びつかなかった「死票」は、全300選挙区の合計で約3730万票にのぼりました。この数は、衆院の東京、北関東(茨城、栃木、群馬、埼玉)、南関東(千葉、神奈川、山梨)の3ブロックの当日有権者数約3535万人をも上回る規模です。
小選挙区候補の全得票に占める「死票」率は56・0%で、前回09年総選挙と比べ9・7%増。「死票」の数・率とも、96年に現行選挙制度が実施されて以来、過去最高を記録しました。常に3000万人前後の民意を切り捨ててきた小選挙区制の害悪は否定しようがありません。
300選挙区ごとでの「死票」率をみると、50%以上となった選挙区数は全体の6割に当たる188に及びます。前回09年総選挙に比べ99選挙区も増えました。
たとえば、衆院東京1区は前回、共産、自民、民主、無所属、諸派の9人が争い、最大得票は民主の約14万票で「死票」率は52・6%でしたが、今回は70・7%にはねあがりました。共産、自民、民主、維新、みんな、未来、無所属、諸派の9人と候補者数は同じでも、自民の最大得票約8万2000票に対し、共産を含め5党候補が約2万〜8万票台をそれぞれ獲得したからです。
小選挙区制は、中小政党を排除し、「二大政党」状況を人為的につくりだすものとして作用してきました。選挙を行うたびに過半数もの「死票」を生みだす小選挙区制は、民意の反映に最も不適切な制度です。
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民意反映の選挙制度こそ
衆院480議席が比例票配分なら
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選挙制度の最大の基準は、民意を鏡のように正確に反映できるかどうかです。
自民、公明、民主3党は来年の通常国会で国会議員定数の削減を行うことで合意しています。狙うのは比例代表の定数(180)です。民主党が主張する比例定数80削減となれば、衆院総定数400のうち75%を小選挙区制で選ぶことになり、民意のゆがみはいっそう大きくなってしまいます。
仮に衆院総定数を今回総選挙の各党の比例得票率で配分すると、自民党は133議席に激減するのに対し、共産党は29議席に増えます。小選挙区制が大政党に有利に民意をゆがめているのは歴然です。
日本共産党は衆院の選挙制度について、小選挙区制をなくし、現行の全国11ブロックごとの比例代表選挙にすることを提案しています。
同時に、3〜5人区の中選挙区制に改革することも、小選挙区制の害悪を取り除き、民意を保証する方向での抜本的改善につながるものとして選択肢にしています。