2012年12月10日(月)
中国との南シナ海領有権問題
平和守る外交、粘り強く
ASEAN
尖閣諸島などをめぐりクローズアップされた領有権問題。アジアの国際会議でも南シナ海の領有権問題が大きな焦点となっています。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、平和と安定を守るための外交努力を粘り強く続けています。(洞口昇幸)
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11月18〜20日にかけてプノンペンで開かれたASEAN首脳会議、東アジア首脳会議(EAS)。最大の注目点はASEANと中国が南シナ海内の平和的なルールを定める「南シナ海行動規範」(COC)の制定に向けた公式協議に入れるかどうかでした。
中国が同意せず公式協議入りはできませんでしたが、ASEAN・中国の首脳会議(19日)は「信用・信頼と協力の強化のための対話と協議のモメンタム(機運)を維持し、合意を基礎にCOC採択に向けて共に作業する」とする「南シナ海行動宣言」(DOC)10周年声明を採択しました。
DOC以前、南シナ海に平和を確保する取り組みはありませんでした。1988年、南沙諸島付近でベトナムと中国が多数の犠牲者を出す武力衝突を起こしました。90年代には中国やベトナム、マレーシアが南沙諸島に建造物を構築。現在も、資源探査船に対する中国側の妨害などの事件が頻発しています。
ASEANは、時間を要する領有権問題の解決の前に、軍事力によらない国際ルールに基づく平和を確保しようとします。92年のASEAN外相会議で「南シナ海に関するASEAN宣言」を採択。武力に訴えずに平和的手段で解決する必要性を強調しました。
ASEANは中国と交渉を重ね、02年11月に法的拘束力はないものの、DOCを結実させます。中国と「論争を複雑化あるいは激化させ、また平和と安定に影響を与えるような行動を自制」すると約束し、法的拘束力を持つCOC締結を目指すことに合意しました。
11年には、中国とDOCの履行ガイドラインで合意。今年9月にはインドネシアがCOCのたたき台となる「ゼロ草案」を作成・提示しました。
今年の一連の会議では南シナ海をめぐる立場の違いからASEAN内の結束の乱れも見えましたが、COC策定に向けた方向性は守られています。
インドネシアのマルティ外相は11月20日、「(COCの)非公式協議はすでに途切れなく行われている。一歩ずつ物事を築いていくASEAN方式であり、ASEAN・中国の枠組みは息づいている」と強調しました。
11月24日、都内で開かれた日本平和大会のシンポジウムで、川田忠明・日本平和委員会常任理事はASEANの外交努力についてこう解説しました。「対話を継続させ、中国をテーブルにつけることで危険がかなり引き下がる。コントロールできるというところに狙いがあります」
東南アジア諸国連合(ASEAN) 1967年設立の地域協力機構。現加盟国はタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの10カ国です。
南沙諸島領有権問題 中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイは、豊かな漁場があり、海底にエネルギー資源が眠るとされる、南シナ海内の南沙諸島の領有権を争っています。