2012年12月9日(日)
きょうの潮流
「来年のことをいうと鬼が笑う」といわれますが、鬼さん、どうぞ笑ってください。「左義長(さぎちょう)や武器という武器焼いてしまえ」▼今を代表する俳人、金子兜太(とうた)さんの句です。3年前の句集に収められました。左義長は、正月に飾った門松や書き初めを燃やす火祭り。金子さん自身が、こう解説しています▼「今次大戦の末期をトラック島で体験した戦中派の私は戦争反対の塊りである。だから、あの火勢を見ていても、まずそう思ったのだ」(『金子兜太 自選自解99句』)。金子さん22歳の1941年12月8日、太平洋戦争が始まります▼海軍の軍人として、南の島で終戦を迎えました。アメリカ軍の捕虜となり、46年に帰ってきました。「水脈(みお)の果(はて)炎天の墓碑を置きて去る」。復員船の中で詠んだ句です。次のように解説しています▼「戦争末期…朝目覚めると隣の人が冷たくなっている。餓死だ。それが日常である。…私は島を去りゆく水脈の果てにいつまでも墓碑の姿を見つめていた。反戦への意思高まる」。以来「焼いてしまえ」まで、一筋にますます激しく反戦の内なる炎を燃やしてきた、ことし93歳の金子さん。俳人「九条の会」のよびかけ人でもあります▼不戦の誓い、憲法9条を葬ろうと執念を燃やす政治家の声が騒がしい。彼らを上回る情熱をもって、アメリカと海外で戦争する国への道を退け、アジアと世界の平和を築く国への道をすすむときです。そう、金子さんの言葉を借りるなら、一人一人が「戦争反対の塊り」となって。