2012年12月8日(土)
国公法弾圧2事件の最高裁判決について
市田書記局長が談話
国公法弾圧2事件の最高裁判決について、日本共産党の市田忠義書記局長は次の談話を発表しました。
最高裁第2小法廷は、国公法弾圧事件である堀越事件、世田谷事件の両事件の上告を棄却した。これによって堀越明男さんは無罪、世田谷事件の宇治橋眞一さんは有罪が確定することになった。
2人を裁いた国家公務員法の政治的行為の処罰条項は、憲法に保障された国民の表現の自由、結社の自由を侵す違憲の法律であり、われわれはこの裁判を通じて従来の判例(猿払事件)を改め、政治的行為の禁止を違憲とする判決を求めてきた。今回の判決が、そこに踏み込んで、憲法判断を改めることなしに、世田谷事件を有罪としたことはきわめて遺憾である。
一方、この2裁判が行われてきた8年余のなかで、国家公務員の政治的行為を細部まで禁止する国家公務員法とそれにもとづく人事院規則の不合理性はますます明らかになり、国民世論のなかでも政治的行為の規制の再検討を求める声は高まってきた。堀越事件の高裁判決が国民意識の変化を指摘し、勤務時間外までの政治的行為の全面的禁止に疑問を呈して、無罪判決をおこなったことは、その反映でもある。最高裁判決が「政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない行為は禁止されない」とし、結論として高裁判決を是としたのも、こうした国民意識の変化を事実上認めたものといえる。
いずれにしても、2人の被告と弁護団、支援組織をはじめ、この2事件の裁判闘争を支援、支持された多くの人々に敬意を表するとともに、国家公務員法の政治的行為の全面禁止という人権侵害の不合理な法律をあらため、国民の基本的人権がいっそうよく保障されていくよう、ともに奮闘していきたい。
国公法弾圧2事件の経緯
03年10〜11月 公安警察、堀越明男さんを尾行・盗撮
04年3月3日 堀越事件、逮捕
3月6日 堀越事件、国公法違反で起訴
05年9月10日 世田谷事件、住居侵入で宇治橋眞一さんを逮捕
9月29日 世田谷事件、国公法違反で起訴
06年6月29日 堀越事件東京地裁判決、有罪
08年9月19日 世田谷事件東京地裁判決、有罪
10年3月29日 堀越事件東京高裁判決、無罪
5月13日 世田谷事件東京高裁判決、有罪
12年12月7日 2事件最高裁判決
※ビラ弾圧事件は葛飾ビラ配布弾圧事件、立川反戦ビラ事件も発生し、いずれも最高裁で有罪が確定
解説
改憲策動が強まるなか
堂々ビラ配る権利 当然
国家公務員のビラ配布不当弾圧をめぐる二つの事件で、最高裁は堀越事件で無罪、世田谷事件で有罪としました。国家公務員の政治活動を制限した国家公務員法の規定をめぐり、最高裁での初の無罪判決は、公務員の政治活動を保障すると同時に、国民の思想・信条と表現の自由を守るうえで大きな意義をもっています。
国公法弾圧2事件の不当逮捕が起きたのは堀越事件が2004年3月、世田谷事件が05年9月と、自衛隊イラク派兵をめぐって国民の大きな反対世論が高まっている時期でした。同時期には、立川反戦ビラ配布事件、葛飾事件と同様の不当弾圧が多発しました。
これらの事件が平和と民主主義を願う団体・市民を意図的に狙ったものであることは、市民のたたかいと公判によって浮き彫りになっています。立川事件では、自衛隊情報保全隊と公安警察が仕組んだ謀略計画であったことが本紙報道で明らかになりました。
なかでも堀越事件は、公安警察を大動員するなど、公務員の政治活動の自由を奪うために国家権力が総力をあげたものでした。
堀越事件で無罪としたものの、最高裁は、国公法の政治活動の制限について、「合憲」とし、世田谷事件では、「管理職員」の地位を理由に有罪判断を維持しました。
この判断は、国家公務員法と人事院規則が国際社会の水準、市民社会の常識からも大きく遅れていることを追認した不当なものです。
ビラ配布は、誰もが参加できる基本的な表現活動であり、国民の当然の権利です。自民党や維新の会などが改憲策動を強めるなか、市民が堂々とビラを配り、意思表示をする―。一連の弾圧事件とたたかいを通じて、その正当性と重要さは、いっそう鮮明になりました。(森近茂樹)