2012年12月8日(土)
雇用維持へ仏政府主導
鉄鋼・製薬・自動車大手の解雇
撤回へ進む協議
5月の大統領選で雇用拡大を掲げて誕生したフランスのオランド政権が、相次ぐ大企業の人員削減に歯止めをかけるため、政府主導で解雇撤回を迫っています。(島崎桂)
フランス国立統計経済研究所(INSEE)は6日、同国の今年第3四半期(7〜9月)の失業率が、1999年第3四半期以来最悪の10・3%になったと発表。14〜24歳の失業率は、24・9%に達しています。
雇用情勢が悪化する中、ルクセンブルクに本社を置く鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルは10月1日、フランス北部フロランジュ製鉄所の停止中の高炉2基を閉鎖すると発表しました。
仏政府は、閉鎖に伴う630人の解雇阻止に向け、ミタルとの協議を開始。欧州連合(EU)が進める低炭素型の製鉄技術開発計画に同高炉を活用するなどの対案を示し、11月30日には▽ミタルがフロランジュ製鉄所に5年間で1億8000万ユーロ(約190億円)を投資▽将来的な再稼働に備えた高炉の現状維持▽雇用の維持―などの合意を取り付けました。
しかし、今月6日にミタル側が合意内容の一部に難色を示しました。同社労組の怒りの声を受けたオランド氏は同日、ミタルの合意順守を確約。「私自身が政府とともに保証人となる」と述べました。
製薬大手サノフィは9月、国内914人の人員削減を含むリストラ策を発表しました。仏政府は同社に対しても雇用維持を求めています。
リストラ策の発表直後にテレビ出演したモントブール生産再建相は「サノフィが(昨年)50億ユーロもの利益をあげたのを知っているのに、(リストラを認めるのは)不可能だ」と発言。同社労組が求めた政府、労組、経営者による3者協議の要請について、政府報道官は「雇用継続の保証と問題解決を図るため、国家が労組と経営者を結びつけることは重要だ」(11月27日)と応じました。
雇用維持に向けた政府の取り組みは、深刻な経営難に陥った企業に対しても同様です。
自動車大手プジョー・シトロエン・グループ(PSA)は7月、経営難を理由に国内約8000人の解雇計画を発表しました。仏政府は同社経営陣や筆頭株主である創業家一族との協議を進め、自動車産業への支援策を条件に雇用維持を要求。解雇計画の撤回に向けて、現在も政府、労組、経営陣による協議が続いています。