2012年12月7日(金)
原発、経済、消費税から外交まで
BSフジ 志位委員長大いに語る
日本共産党の志位和夫委員長は5日、BSフジの「プライムニュース」に出演し、「原発ゼロ」の道筋やデフレ不況脱却の方策などについて、1時間にわたって質問に答えました。
冒頭、安倍宏行フジテレビ解説委員が「第三極がこれだけ乱立する中で一番歴史が古い野党で、今回小選挙区で候補者を299人立てる共産党の政策を、これだけじっくり聞けるチャンスはない」と話しました。
「即時原発ゼロ」でエネルギーどうする
キャスターの八木亜希子氏が「(共産党の政策の)大きな特徴である『即時(原発)ゼロ』というところでうかがっていきたい」と発言。志位氏が「即時ゼロ」とは「いま動いている大飯原発も止めて、そのまま廃炉のプロセスに入るということです」と説明すると、八木氏は「代替エネルギー案を教えてください」というメールを紹介しました。
「コストが2倍」という宣伝はごまかし
志位氏は5〜10年の過渡的期間は火力と節電の努力で対応し、この間に自然エネルギーへの移行を最大限のスピードで進めるという具体的プログラムを説明。反町理フジテレビ政治部編集委員の「電気料金へのはね返りはどんなふうに見ていますか」との質問に、次のように答えました。
志位 「原発をゼロにすると電気料金が2倍になる」と政府が宣伝していますが、あれは“ゴマカシの数字”です。同じ試算の中で、原発の比率を20%から25%にしても(電気料金は)1・8倍になると示しています。ほとんど変わらないんですね。「2倍」というのは恣意(しい)的な数字で根拠にならない。
高すぎるLNG価格を見直す――自然エネは普及すすめばコスト安に
志位 自然エネルギーの初期投資には一定のお金がかかりますが、普及が進めば進むほど安くなります。2020年には火力より風力の方がコストが安くなるという形で、どんどん下がります。
当面のコストの問題でもう一つ、(電力を)LNG(液化天然ガス)に置き換える必要がありますが、日本の場合、LNGの価格が高すぎる。原油とLNGがリンクして輸入され、アメリカの輸入価格の9倍ものお金を払って買っています。こういうものは抜本的に見直して、普通の国際価格で買えるようにする。こうした対策をやりながら、自然エネルギーへ移行しようということです。
原発自体は止めたまま(廃炉のプロセスに)入る。これが一番現実的な方法だと考えています。
八木 再生可能エネルギーの中では特にどの分野(に力を入れますか)。
志位 日本の場合、風力、太陽光、小水力、地熱、バイオマスと、どの分野も相当な可能性がありますね。だから全面的にやる。全体の自然エネルギーの潜在量は原発の発電能力の40倍あります。
反町 地熱で言うと、あらゆる国立公園に地熱発電所をつくるみたいな話ですよね。
志位 国立公園だけじゃない。深いところを掘る技術を日本は持っています。日本の技術でニュージーランドで地熱発電をやっている。それが日本で使われていないっていうのはもったいない話ですから、そちらに移行していこうと(いうことです)。
反町 なるほど。
その上で志位氏は再稼働について次のように問題提起しました。
止めたまま廃炉に――「即ゼロ」こそ現実的
志位 例えば10年後、20年後、30年後、中には40年後に「ゼロ」にするという議論があります。しかしこういう議論になりますと、必ず原発を再稼働しなければいけなくなるわけです。
反町 そうですね。
志位 では、どの原発を再稼働するのか、という問題がある。例えば大飯原発の直下に活断層が走っている、これが最近になって問題になって、あの評判の悪い原子力規制委員会ですら否定できなくなりました。活断層の上には原発をつくれないわけですから、活断層とわかれば廃炉ですよね。相当の原発が引っかかってきますよ。
それから、あの大震災を経て、日本の地震と津波の学問的知見そのものを根底から見直さなければならないと、地震学会のみなさんもおっしゃっているわけです。
ではこの見直しにどれだけ時間がかかるのか。10年、20年でやれる話ではありません。そうなると再稼働はできないわけですよ。
反町氏が「『電力料金の多少のアップは仕方ないです』と、ここまで共産党は国民・有権者にいえますか」と質問したのに対し、志位氏は「世論調査をみても、原発の危険性を考えた場合、若干の値上げがあったとしても『やむを得ない』ということは、多くのみなさんが認めるのではないでしょうか」と述べた上で、次のように強調しました。
原発の“異質の危険”とコストをてんびんにかけてはならない
志位 この問題で私が言いたいのは、原発の危険とコストの問題をてんびんにかけていいのかを、根本から問わなければいけないということです。原発の危険は「異質の危険」だと私たちはいっていますが、他にない特別の危険があるということを、私たちは体験したわけです。いったん事故が起こってしまったら、取り返しがつかない。空間的にも時間的にも、ずうっと無制限に被害が広がる。
今日も福島に行ってきましたが、なお16万人の方々が避難生活を強いられておられる。だからこれは、安易にてんびんにかけられる話ではない。原発の事故を二度と起こさない、それを大前提にしなければいけない。
自然エネは、中小企業を元気に、地域経済を温め、町おこしにも
反町氏は「産業への影響をどうみますか」と質問。志位氏は、原発立地県の産業と雇用については国が責任を持っていく必要があると強調した上で、次のように語りました。
志位 これまで原発交付金という形で(原発推進が)やられてきたわけですが、そのお金を地域の再生可能エネルギー(開発)に向けていく。再生可能エネルギーというのは、地域に小さな発電所をたくさんつくることになるんです。ですから地域経済を温める上でたいへん大きな効果がある。
反町 分散化ですね。
志位 分散化です。そうなりますと、原発とは違う形で中小企業にもうんと仕事が回っていきます。町おこしにもなります。例えばここはバイオマスが得意だと、ここは風力が得意だと、地域、地域に合った形で産業がおこってくる。新しいイノベーション(技術革新)も生まれてきます。
そこに活路を見いだすべきです。原発はもうしょせん、産業としても成り立たない。先のない産業に頼るのはもうやめて、ここで決断するということですね。
再処理は中止――「核のゴミ」を考えても「即ゼロ」しかない
反町氏は「これだけは聞きたい」として核燃料サイクルをどうするかと質問。志位氏は、再処理工場の研究施設がある茨城県東海村を訪れた経験も踏まえ、「再処理の工程の危険はたいへんなもので、年がら年中事故を起こし、工場は動かせない。そして、再処理をやればプルトニウムが出てきて、また燃やさなければならなくなり、それも行き詰まりになっている」と指摘。「再処理はもうやめる」と強調しました。反町氏が「今あるもの(使用済み核燃料)はどうするんですか」と尋ね、志位氏は次のように述べました。
志位 残念ながら、人類はまだ使用済み核燃料の安全な処理方法を持っていません。ですから使用済み核燃料については、人類がこの「核のゴミ」を安全に処理できるだけの科学技術を開発するまで待つしかない。それまでは厳重に保存する。そういう問題なんです。
使用済み核燃料にはもう一つ問題があります。原発の稼働を続けるかぎり「核のゴミ」が増えるでしょう。再処理もできないということになると、あふれるわけです。
いま全国の原発施設の中にあるプール(反町「使用済み〈核燃料〉のね」)、プールがもう大体いっぱいになっていて、平均しますと(原発を)稼働するとあと6年間であふれるんですよ。そこまで「核のゴミ」の問題は深刻になっている。
これ以上、処分方法を持たない「核のゴミ」を出し続けることは、将来の世代にとてつもないツケを背負わすことになるわけです。
さらに、先ほどコストということをいいました。その中には入っていないコストがあります。例えば原発の事故処理のコスト。使用済み核燃料を保存・処分していく、廃炉を進めていく、このバックエンドの費用も全然入っていない。その費用まで全部あわせたら、原発ほど高コストなものはないですよ。
日本経済と産業、消費税をどうする
八木氏が「共産党は公約ではデフレ不況からの脱却を最初に掲げていらっしゃるんですよね。これは共産党として特に重視していると(いうことですか)」と尋ねたのを受け、志位氏は「不景気を何とかしてほしい、デフレを何とかしてほしいという声は強いですね」と答えました。
消費税増税中止、大企業の260兆円の内部留保の還元がカギ
志位氏は、働く人の所得が減り、消費が落ち込み、内需が冷え込んでデフレ不況の悪循環が起こっていると指摘し、「この悪循環をどこから断つかを考えると、どこの国でも内需を活発にするところから断つというのが基本中の基本です」と強調。昨年、フランスのカンヌで開かれたG20(20カ国・地域首脳会議)で、「リーマン・ショック」後の大不況から抜け出すために内需を活発にしようということが国際合意になり、「特に日本は内需が弱い」と名指しされたことを紹介しました。
「内需は大部分が家計消費ですから、いかに家計消費、毎日のお買い物の力を活発にしていくかを対策の最大のカギにすえなければいけない」と力をこめ、消費税大増税を中止すること、大企業の内部留保260兆円を雇用や中小企業に還流させていくことを提案しました。そのためには「政治が乗り出す必要がある」として、▽中小企業に手当てをした上で最低賃金を引き上げる▽電機産業などによる13万人もの首切り計画をやめさせる▽大企業と中小企業の公正な取引のルールをつくる―などを提起しました。
“合成の誤謬”ただす政治の出番
八木氏は「リストラをやめさせたり、いろいろなルールで縛っていくと、余計に(企業が)守りに入って、難しいところでは」と質問。次のようなやりとりになりました。
志位 逆にいま、不景気で業績が上がらないからと大企業が率先して首切り競争をやり、「合成の誤謬(ごびゅう)」とよくいいますが、社会全体の需要がなくなり、ますます景気が冷え込んでいく。ますます企業の活動も萎縮してしまうという悪循環に入ってしまっています。
ですから、ここは政治の出番だと思うんですね。(内部留保の)260兆円というお金を雇用や中小企業に回るようにして内需を活発にすれば、新しい投資先ができる。ビジネスができる。そのことによって内需主導で日本経済を活発にすることが大事ですね。
いま、どこの国も内需を重視しているでしょう。アメリカだって内需をどうやって立て直すかを考えていますよね。それが大事だということがはっきりしているのに、「内需を活発にしろ」という議論が民主党からも自民党からも出てこない。もっぱら金融緩和の話になっている。これでは問題解決にならないと思います。
中小企業――一部の企業だけを「線引き」して「支援」するやり方は、全体をダメにする
安倍 中小企業が日本の企業の99%です。中小企業が元気にならないといけない。もっと研究開発をやらせるとか、海外に出られるならそこをバックアップしてあげるとか、そういうことが必要なんだと思います。
志位 中小企業に対するバックアップは国がもっと予算を増やして、1兆円ぐらいのお金を使って、例えば販路の拡大、技術開発、人材の育成、そういう企業自体が元気になるような支援も必要だと思っています。
ただ、中小企業と大企業の関係で、私も国会でとりあげたことがずいぶんあるけれども、例えば下請けとの関係があるでしょう。
反町 下請け、孫請けね。
志位 4次、5次、6次と、末端までいきますと、下請け単価は4割〜5割ぐらいまで減ってしまう。ぎりぎりまで絞り上げるというやり方を続けていくと、一番技術をもっている町工場を壊してしまう。もっと下請け単価をまともなものにして、中小企業で働く人の賃金を、大企業で働く人の賃金と同じようなところまで引き上げていく必要があります。
調べて驚いたのは、日本の場合、大企業と小企業の賃金の格差が倍ぐらいあるんです。こんな国は主要国の中にない。ヨーロッパでは大企業と中小企業の労働者の賃金に、ほとんど差がないんです。日本は倍もある。これは何としても引き上げていく必要がある。
反町氏が「(中小企業には)いい企業も悪い企業もある」「それを守ること自体が、産業構造の変革つまり強化につながらない」と述べたのに対し、志位氏は「一部の企業を上から選んで線を引き、『ここから先は支援しますよ。ここから先はつぶしますよ』というやり方をしている限り、全体が崩れていく」と強調しました。
目先の利益だけのため、働く人を粗末に扱っては、未来はない
産業政策が議論になり、志位氏は「大企業にもいいたいことがある」として、次のように述べました。
志位 特に電機産業はいま、競争力がなくなっているでしょう。
反町 リストラの真っ最中ですよね。
志位 なんでこんなに競争力がなくなったのかを財界は真剣に考えてほしい。ノートパソコンなんて、ほとんど日本のシェアがなくなっています。液晶テレビも日本の企業名が書いてあっても、後ろをみたら「メード・イン・台湾」とか「メード・イン・マレーシア」になっている。
完全に競争力を失ったわけですね。どうしてか。これは率直にいって、働く人を粗末にしてきた。短期の利益、四半期の利益を上げようと、働く人をどんどん切っていく。技術者も切っていきました。高いプライドをもった技術者ほど、いやになって出て行く。
反町 あとやっぱり円高が大きいですよ。
志位 円高も大きい。けれども、そういう企業経営のあり方、短期の利益で人を切っていくというやり方が、日本の産業を壊してきた。ヨーロッパでは解雇規制がありますよ。大企業の身勝手を許さず、政治がルールをつくって働く人を大事にして、技術、販売、製造が一体になってすりあわせをやってこそ、初めて新しい商品ができる。(日本では)そういう商品をつくる能力がなくなってしまっている。それはあまりにも短期の、目先の利益に集中するやり方をとってきた、「構造改革」でやってきた結果ですよ。
例えばNECの場合、1万人のリストラをやる理由は株主への配当を始めることです。株主にお金を出すのは大事ですが、そのために首を切るというやり方が企業経営として果たしていいのか。
八木 苦しい大企業もリストラするべきでないと。
志位 苦しくても内部留保を持っているんだから、その内部留保で雇用は守ることが必要だと思います。
反町 なるほど。
「応能負担」にもとづく税制改革、国民の所得をふやす経済改革を、同時にすすめる
八木氏は日本共産党のめざす「将来像」について「最も理想的な国は」と質問。志位氏は「どこの国を理想にするとはいっていませんが、社会のあり方として参考になるのはヨーロッパ」だとして、35時間労働制や解雇規制、高い最低賃金、医療の窓口負担が無料であることなどをあげました。反町氏が「財源があれば全部やりたい。どこを財源にするんですか」と尋ねたのを受け、志位氏は次のように語りました。
志位 私たちはまとまった財源政策を出しています。無駄遣いの一掃はもちろんやりますが、税制全体で「応能負担」、つまり「負担能力に応じた負担」という原則に即した税制改革を行います。まず富裕層や大企業。
反町 累進性の強化ですよね。
志位 そうです。ただ、ここでいっておきたいのは、富裕層と大企業への「応分の負担」といった場合、例えば富裕層についていいますと、株でもうけても10%しか税金がかからない証券優遇税制のような、世界でも日本だけの、ゆきすぎたものをただそうと(いうことです)。
法人税も上げろという要求ではない。これ以上下げるなと(いうことです)。それから中小企業と大企業を比べると、中小企業の法人税の負担率は実質(国税ベースで)26%なんですが、大企業は19%です。研究開発減税とかいろいろな優遇税制があって、中小企業より低いのはおかしい。ここをただそうという当たり前のことをいっている。
これをやりながら、もう一つの柱があるんです。先ほど内需を活発にするという話をしました。内需を活発にする経済改革をやって、経済を内需主導の成長軌道に乗せる。
反町 自然増収。
志位 そうです。そのことによって、私たちの試算では、名目2〜3%の成長の軌道に乗せていけば、自然増収がだいたい10年後に20兆円出てくる。
反町 なるほど。
尖閣問題をどうやって解決するか
最後に八木氏が「領土、尖閣をどのように守ろうとしているのか知りたい」というメールを紹介。志位氏は次のように述べました。
志位 尖閣(諸島)についていいますと、日本の領有の正当性は明りょうです。歴史的にも国際法上も明らかだと、私たちは、政府以上に詳しい見解を出しています。
ただ歴代政権が、最初は田中(角栄首相・当時)・周恩来(首相・当時)の日中国交正常化(1972年)のときに、事実上、棚上げしてしまったという問題があります。それからもう一つ、「領土問題は存在しない」の一点張りで、硬直した対応をやってきた。そういうやり方をあらためて冷静な外交交渉によって問題を解決する、その中で領有の正当性も主張する、ということを提案しているんです。
私たちの党としても、中国政府に対しては程永華大使にお会いして「提言」の内容を伝えました。大使は「党と政府の指導部に伝えます」とおっしゃいました。もちろん機会をみて、中国共産党の指導部とも会談できる機会があればと願っています。
八木 共産党の志位委員長にうかがいました。ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。