2012年12月6日(木)
エジプト 「新たな独裁許さず」
数十万人が宮殿包囲
大統領にメディアも反発
【カイロ=小泉大介】エジプトのモルシ大統領が「権力集中宣言」に続き憲法国民投票を実施すると決定したことを受け、数十万人の国民が4日、首都カイロ郊外の大統領宮殿を包囲し、新たな「独裁」は許さないとの声を深夜まで上げました。中心部のタハリール広場にも数万人が詰め掛けました。
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大統領宮殿周辺には夕方から人々が続々と集結し、中にはデモをしながら数時間かけてたどり着いたグループもいました。
「選挙ではモルシ大統領に投票したのに、完全に裏切られました」と怒ったのは女子大学生のオラ・イブラヒムさん(19)。「権力集中も国民投票の強行も、新たな独裁のためだとしか思えません。容易なことではありませんが、新たな独裁には新たな革命で対抗するだけです」と続けました。
「権力集中宣言」に端を発した国民の怒りの火に油を注いだのが、新憲法草案がモルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団などイスラム主義者が圧倒的多数を占める憲法起草委員会で強引に決められ、すぐさま大統領が15日の国民投票実施を決めた(1日)ことでした。
4日には同委員会を離脱したリベラル・世俗派の委員らが会見し、「委員会での審議は最初から、ごく少数者の意向によって方向性が決められていた」と告発しました。
大統領宮殿包囲を呼び掛けた「革命」派著名政治家や政党がつくる「国民戦線」は同日の声明で、「権力集中宣言」と憲法国民投票の撤回、草案起草作業のやり直しを改めて要求しました。
国民の懸念は、新憲法草案の中身にも及んでいます。メディア関係者は、草案が「いかなる人間も侮辱されてはならない」などとしていることは、国民から大統領批判の自由を奪うためだと反発。有力紙アルマスリ・アルヨウムなど独立系12紙が4日付を休刊にして抗議する事態となりました。
権力集中宣言 モルシ大統領が11月22日に発した宣言。新憲法制定と新人民議会(下院)選出までという期限付きですが、大統領令が司法を含むすべての機関の判断に優越して効力を持つというもの。
新憲法草案 ムバラク前政権の退陣後に憲法起草委員会が論議し、11月末に採択。大統領任期は2期8年と制限していますが、イスラム法の原則を「法の主要な源泉」と定めた旧憲法の解釈を維持し、表現の自由や女性の権利などの保障が不十分との声があがっています。