2012年12月1日(土)
パレスチナ 「国家」に
国連総会が格上げ決議
【ニューヨーク=山崎伸治】国連総会は29日、国連におけるパレスチナの地位を「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議を賛成138、反対9(米国、イスラエル、カナダ、チェコ、パナマなど)、棄権41の賛成多数で採択しました。日本は賛成しました。
決議はパレスチナの地位を「非加盟国オブザーバー」とした上で、パレスチナによる国連への正式加盟申請について「安全保障理事会が前向きに検討すること」に期待を表明。パレスチナとイスラエルの「2国家共存」の実現のため、中東和平交渉の再開および加速化が緊急に求められるとしています。
採決前の演説では、パレスチナのアッバス議長が「イスラエル国家の正当性を否定するものではない」と強調。イスラエルのプロソール国連大使は「平和を後退させるものだ」と反対を表明しました。
結果が判明すると、会場から大きな拍手が湧き起こり、パレスチナ代表団に駆け寄る他国代表の姿もありました。
パレスチナは1974年11月、パレスチナ解放機構(PLO)として総会のオブザーバー資格を獲得。88年12月に現在の「パレスチナ」に改称し、98年7月には総会での発言権を得ました。
引き続き総会の投票権はないものの、「機構」から「国家」となることで、国際刑事裁判所(ICC)への加入も可能となります。
パレスチナは2011年、国連への正式加盟の方針を打ち出し、同年9月、安保理に申請。ただ米国が反対しているため、棚上げとなっています。しかしパレスチナは同年10月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に加盟しました。
一方、イスラエルは49年に国連に正式加盟しています。
解説
イスラエル・米国の孤立鮮明に
パレスチナの国連参加資格格上げ決議が圧倒的多数の賛成で採択されたことは、和平に背を向けるイスラエルと、その後ろ盾である米国の国際的孤立を浮き彫りにしました。
イスラエル政府は資格格上げを「一方的な措置」と非難し、とくに欧州各国に対して決議に反対するよう強力な説得活動を行ってきました。ナチス・ホロコーストの過去を持つドイツには反対を強く期待しましたが、同国は棄権に回り、欧州で反対はチェコ1カ国にとどまりました。
イスラエルの有力紙ハーレツ29日付(電子版)は、外務省幹部の「われわれは欧州を失った」「イスラエルはほぼ完全に孤立している」とのコメントを引用しつつ、「屈辱的な政治的敗北」だとする記事を掲載しました。
パレスチナが資格格上げを目指した背景には、和平交渉が約2年間にわたり中断していることがあり、その最大の原因となっているのは、イスラエルが国際法違反である占領地での入植地建設を今も推進していることです。ドイツ政府が棄権の理由として入植地建設を挙げたように、イスラエルの姿勢に国際的な非難が集中したことは疑いありません。
パレスチナ側は繰り返し、資格格上げはイスラエルに打撃を与えるためではないと説明。今回の決議でも、イスラエルが東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザなどを占領した第3次中東戦争前の境界に基づく2国家共存路線を前提に、ただちに和平交渉を再開することが明記されています。
しかし、イスラエル政府は、資格格上げを強行した場合には、アッバス・パレスチナ自治政府議長を打倒することまでちらつかせながら執拗に妨害してきました。
今回の投票結果ではっきりしたのは、米国など一握りの国を除く国際社会は、イスラエルの占領者のような態度を認めていないということです。イスラエル政府には、入植地建設を即時中止し、真摯な態度で和平交渉に臨むことが強く求められています。米国も含め、資格格上げの報復としてパレスチナに制裁を科すなどということはあってはならないことです。 (カイロ=小泉大介)