2012年11月29日(木)
エジプト全土数十万人デモ
“権力集中宣言撤回を”
【カイロ=小泉大介】エジプトで27日、モルシ大統領に絶大な権力をもたらす「憲法宣言」の撤回を求めるデモが全土で取り組まれ、6月に大統領が就任して以来最大規模となる数十万人が参加しました。首都カイロのタハリール(解放)広場には夜になっても人波が押し寄せ、「革命は続いているぞ!」などのシュプレヒコールが響きました。
|
仕事を終えタハリール広場に駆けつけたのは男性弁護士のアリ・イブラヒムさん(33)。「こんな宣言が許されたら司法は死んだも同然だ。モルシ大統領と出身母体である(イスラム主義勢力の)ムスリム同胞団は、昨年の革命で犠牲になった若者たちの無念さをどう思っているのか。私は二度と独裁者の奴隷にはならない」と力を込めました。
モルシ大統領が22日に発した「憲法宣言」は、大統領が出す命令は司法でさえも覆せないという絶対的なもので、宣言発表直後から「新たな独裁者の出現だ」と広範な国民や各界の激しい反発を招きました。
抗議の声に押された大統領は26日に司法機関トップの「最高司法評議会」メンバーと会談。宣言の適用期間は新憲法制定と新人民議会(下院)選出までに限定されると強調するとともに、権限が及ぶ範囲は主権にかかわる分野だけだと「譲歩」しました。しかし国民は納得せず、27日のデモ決行となりました。
大統領選挙でモルシ氏に投票したという女子学生のサマル・アフメドさん(20)は、「革命を継続するという公約を信じましたが完全に裏切られました」と怒り心頭。「モルシ大統領と(退陣した)ムバラク前大統領との違いがわからなくなってしまった今、やるべきことは一つ。再び革命の声を力いっぱい上げることです」と続けました。
今回の「憲法宣言」に対しては、「革命」派の著名な政治指導者らが「国民戦線」結成を呼び掛け、撤回を強力に求めています。
男性医師のエハブ・ヘルミさん(31)は「正直いえばこのような統一戦線がもっと早くできれば良かったと思います。しかしまだ遅くはありません。国民の団結した力で新たな独裁を必ず阻止したい」と語りました。