2012年11月26日(月)
原発ゼロ 欧州で進む
国民投票、建設反対が62% リトアニア
再生可能エネルギーの普及も ドイツ
世界を震撼(しんかん)させた福島第1原発事故から1年半余り。事故後、欧州では、ドイツ、スイスが原発からの撤退を決定、イタリアでは時の政府の原発復活の意図を覆し、国民投票で原発凍結政策の維持を決めました。今年も脱原発への着実な動きが出ています。(片岡正明)
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今年、原発建設中止へ大きく踏み出したのが、バルト3国の一つリトアニアです。
リトアニアでは、旧ソ連時代からあったチェルノブイリ原発と同型のイグナリナ原発を2009年に閉鎖。その一方で、新しいビサギナス原発を計画していました。
ところが、福島原発事故後、反対派が「危険で、廃棄物を処理できず、コストも高い」と批判。10月14日の国民投票では建設反対が62%を占め、賛成の34%を大きく上回りました。
国民投票の結果は法的拘束力を持ちませんが、国民の意思は明確に示されました。同時に行われた議会選で勝利を収め、22日に首相に就任した社会民主党のブトケビチュス党首は11月、「原発を建設しないという法案を議会は近く審議しなければならない」と民意を尊重する構えを示しています。
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昨年、22年までに原発の稼働完全停止を決定したドイツ。稼働していた17基の原発のうち比較的古い8基を直ちに停止したのに続き、15、17、19年に1基ずつ、さらに21年に3基、22年に最後の3基の稼働を止めます。
このため、急いでいるのが風力や太陽光・熱などの再生可能エネルギーの利用です。
福島原発事故前の10年の原発による電力量は、全体の20・3%ですが、11年には17・7%に低下。これに対し、再生可能エネルギーの割合は16・4%から20・3%に上昇。さらに今年は、政府発表によると第3四半期までで前年同時期比8%増となっています。
ドイツは20年までに全発電量の35%を再生可能エネルギーでまかなう計画を立てています。
課題もあります。再生可能エネルギー普及を促進してきた買取制度に必要な額が増え、来年から電気料金が値上げになります。また主力となる洋上風力発電建設や海底ケーブル敷設には巨額の費用がかかります。
しかし、ドイツ国民の脱原発への意思は変わりません。昨年、福島原発事故直後に実施された同国南西部バーデン・ビュルテンベルク州議会選挙では原発の早期廃止を求める90年連合・緑の党が躍進し、同党出身の初の州首相が誕生。同州では今年10月にも、州都シュツットガルトでやはり緑の党出身の市長が選挙で選出されています。
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原発推進国でも変化が生じています。
フランスでは国内の総発電量に占める原発の割合を75%から50%に引き下げると選挙公約でうたったオランド大統領が誕生しました。
福島原発事故を受け、原発問題が同国の大統領選で初めて争点に浮上したのです。4月には、国民の8割以上が原発の大幅削減に賛成、6割以上が段階的廃止に賛成との世論調査も発表されました。
最古のフェッセンハイム原発について、オランド氏は選挙で「耐用年数の30年が過ぎた」「投資するなら原発存続より再生可能エネルギーだ」と廃炉を公約。その後、9月には16年までに閉鎖すると具体的な時期も明らかにしました。
現在、26基を建設中の中国では、内陸部で事故が発生すれば膨大な被害が出ると安徽省望江県などで住民の反対運動が広がりました。中国政府は、昨年3月から凍結していた原発新設計画の審査を解除する一方、10月には内陸部での原発建設を停止することを明らかにしました。
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