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2012年11月20日(火)

厚労省5か年計画 認知症患者に「温風」「冷風」

病院から追い出し「難民」化懸念も

施設建設も抑制

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 今後急速な増加が見込まれる認知症の人への支援をどうするか。厚生労働省が9月に打ち出した「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が波紋を呼んでいます。(杉本恒如)

 同省は、現在305万人いる認知症の高齢者が2017年には373万人に増えると推計。6月に省内で今後の施策の基本方針をまとめました。

■初期対応

 この中で同省は、認知症になっても施設や病院に入らずに「住み慣れた地域」で暮らせるよう、▽早期診断・早期対応の体制づくり▽地域での生活を支える医療・介護の整備▽若年性認知症施策の強化―などを進めるとし、5年間の数値計画を盛り込んだオレンジプランを作成しました。

 全国に約1万人の会員がいる「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は、初期の認知症への対応強化などは「会が訴え続けてきたことで、希望のもてる温かい風」と評価。「絵に描いたもちにならないよう実現を求める」といいます。

 一方、「冷たい風も吹いている」と指摘します。8月に消費税増税法が成立。10月には財務省の財政制度等審議会が介護保険の利用料(現行1割)アップや「軽度者」の保険外しを議論しました。高見氏は「これでは生活が成り立たなくなる」と心配します。

 厚労省の認知症施策そのものの中にも、医療・介護費削減の狙いが透けて見えます。

■一体改革

 同省は、認知症の人が自宅からグループホームを経て施設や病院に入るという「流れ」ができていることは「不適切」だと断定し、特に精神科病院に入院している5万2千人について「できる限り短い期間での退院を目指す」と強調。ある月に入院した人の50%が退院できるまでの期間を現在の6カ月から2カ月に短縮する目標を示しました。

 入院日数を短縮し、公費を4300億円程度削減するとした「税・社会保障一体改革」方針の一環です。

 日本精神科病院協会は「地域の受け皿や自宅での介護支援の不足」は「国の施策の貧困による」とし、精神科医療の関与を抑える方向に激しく反発しています。

 同省は特養ホームなどの施設建設も抑制。5年間で68万人増える見込みの認知症高齢者のうち、半数以上の37万人は在宅介護で対応する計画です。

 「本当に地域に受け皿ができるならいいが、現実はそうなっていない。このままでは『認知症難民』が生まれかねない」と全日本民主医療機関連合会の林泰則常駐理事は懸念します。


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