2012年11月2日(金)
福島原発事故 高濃度下で作業指示
元作業員 東電・関電工の違法を告発
「故意に被ばくさせられたも同然だ」。東京電力福島第1原子力発電所事故の緊急作業で被ばくした元下請け作業員の男性(46)が1日、東電と作業を請け負った関電工(東京都港区)を労働安全衛生法違反、電離放射線障害防止規則違反で、処罰と作業員への線量管理、放射線防護策の徹底などの是正を求めるよう、福島県いわき市の富岡労働基準監督署に告発しました。
申告書は2011年3月24日、3号機原子炉タービン建屋地下への電源ケーブル敷設作業などで男性が20ミリシーベルトを被ばくしたのは、現場で指揮した関電工の担当者が鳴り続ける線量計の警報音を「誤作動だ」として無視、事前に確認していない高い濃度の汚染水につかっての作業を5回にわたって指示したためだとしています。
同時刻に別の作業チームは現場の空間線量を400ミリシーベルトと測定、直ちに作業を中止し撤退していました。
男性は伊藤達夫同監督署長に「照明を復活させるだけならあの高汚染水のなかでの作業継続は避けるべきだった」と告発しました。
伊藤署長は「申告内容を確認し、改めて聞き取りなど適切な対応をしたい」と応じました。
日本共産党の渡辺博之いわき市議、いわき市労働組合総連合役員が同席しました。
関電工の話 勧告を受け、安全管理に配慮している。労基署の判断に従って対応したい。
東京電力の話 詳細を把握していないが、労基署から求めがあれば真摯(しんし)に対応したい。
安全な作業を願って
東電・関電工告発の思い
「作業員が危険な目にあわないで収束、廃炉に向けた作業を安全にできるようにしてほしい」。東電福島第1原子力発電所事故の緊急作業で被ばくした元作業員の男性(46)は1日、労働安全衛生法違反、電離放射線障害防止規則違反で東電と作業を請け負った関電工を告発した思いをこう語りました。
厚生労働省で記者会見した男性は、2011年3月24日の高濃度に汚染された水がたまった3号機原子炉タービン建屋でのケーブル敷設作業での被ばく事件について詳細に告発しました。
男性はタービン建屋の照明灯再点灯のためのケーブル敷設に従事。毎時400ミリシーベルトの空間線量を計測した別の作業チームが「駆け足で撤収しているのに、汚染水につかる作業を継続するのは“自殺行為”に近い」と批判しました。
男性は、作業終了後に関電工の担当者からケーブルの固定作業に地下に入るよう指示されましたが拒否。しかし1階から地下室をのぞくだけで線量計の警報がなり、結局、11ミリシーベルトを被ばくした、と語りました。
関電工の担当者が作業の危険性を知っていたと思うか、との質問に男性は、事故前から福島第1原発でメンテナンス作業を共にしてきた経緯から「そうだと思う」と答え、関電工が危険性を承知しながらの作業指示だったことを指摘しました。
男性は本紙のこれまでの取材に昨年12月、今年3月に受けた被ばく検査で「セシウム137、同134の内部被ばくがある」との通告を受けていることを明かしています。
会見で男性は、所属会社(2次下請け)や関電工は、定期的な被ばく検査、健康管理については放置状態だったと告発しました。
弁護団の水口洋介弁護士は、東電、関電工の労働安全衛生法違反、電離放射線障害防止規則違反に当たり、両社には発注者、元請けとして被ばくの実態や線量管理の詳細な事実の解明などで責任を果たさせたいと強調しました。