2012年11月1日(木)
一時停戦失敗 シリア国民は
「抵抗さらに強化」 「国際社会に期待」
【カイロ=小泉大介】シリア内戦打開をめざしブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表が提案したイスラム教犠牲祭期間中(10月26日から4日間)の停戦が失敗に終わりました。国民は死者500人以上を生んだ今回の事態をどう受けとめ、今後何が必要だと考えているのか。電話やインターネットを通じて各地の声を聞きました。
政府軍の激しい空爆に見舞われてきた北部アレッポの男性人権活動家、アフメド・アロウロさん(27)は「停戦失敗の原因がアサド政権にあることは明白です。ここでは『自由シリア軍』は政府軍の爆撃に対抗しただけです。これまで住民を一方的に武力弾圧し数万という命を奪ってきた側の停戦約束を、どうして信じることができるでしょう」と政権を厳しく批判しました。
同じく北部イドリブの男性人権活動家、タリク・ハクさん(26)は「今回の事態が示したのは、政府軍が今後、住民への攻撃をさらに強化するに違いないということです」と指摘した上で、「政府軍が残忍であればあるほど、国民も強くなります。政権の打倒を目指してわれわれも抵抗を強化するだけです」と語りました。
一方、「一時停戦失敗の責任は、政府軍に加え、一部の反政府武装勢力にもあると思う」というのは首都ダマスカスの男性技師、アブアンマル・ハティートさん(35)です。
たしかに、イスラム過激組織「ヌスラ戦線」は当初から停戦を拒否し、26日にダマスカスで5人が死亡した自動車爆弾攻撃の犯行声明を出すなどしており、政府軍に攻撃の口実を与えたことは否めません。政府軍は何度も、「武装テロ集団による攻撃の継続」を空爆の理由に挙げたからです。
ハティートさんは「状況打開には、反政府勢力が一致して、国民の共感を得られるよう行動することが不可欠です。そうしなければ仮にアサド政権が倒れても、その後の国づくりでまたいさかいが起こるでしょう」と力説しました。
今回の停戦失敗でシリア情勢はより混迷を深めています。息子を政府軍に殺害されたという南部ダラーの主婦、オム・モハメドさん(48)はいいました。
「多くの若者が外国に脱出し、残ったものは爆撃におびえ、食料も電気もろくにない生活を強いられる…。これ以上の悲劇を食い止めるため、国際社会に団結した力を発揮してほしい」