2012年10月30日(火)
「即時原発ゼロ」へ 共産党はこう考えます
「原発ゼロの日本を」と願う世論と運動が広がるなか、原発をどうしていくのか、廃絶か存続か―原発・エネルギー問題が大きな政治的争点となっています。「『即時原発ゼロ』の実現を」の提言を打ち出した日本共産党の見解をQ&Aでみてみます。
Q なぜ「即時ゼロ」か?
A 広がり続ける「福島」被害 圧倒的多数の国民が要求
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日本共産党が「即時原発ゼロ」の実現を求める「提言」を打ち出したのは、何よりも、福島第1原発事故から1年7カ月がたった今も「収束」するどころか、被害は広がり続けているからです。
事故で大量の放射性物質が放出されたため、福島県では避難者が16万人にのぼり、農業、漁業、林業や観光業をはじめ、あらゆる産業、経済への深刻な打撃が続いています。原子力規制委員会が24日公表した、全国16カ所の原発が事故を起こしたときの放射性物質拡散予測は、原発の危険性を目に見える形で明らかにしました。
しかも、同予測は福島第1原発事故の規模を基本にしたもので、原発事故がその規模にとどまる保証はありません。放射性物質がさらに大量に放出される事故が起こった場合の被害については、想定すること自体が不可能です。二度と原発事故を起こすことは許されません。
今年5月5日、全ての原発が運転を停止し、原発から供給される電力は「ゼロ」になりました。政府と財界は「電力不足」と国民を脅し、7月1日に関西電力大飯原発の再稼働を強行しましたが、原発なしでも猛暑の夏を乗り切れることが実証されています。
国民が原発への依存を拒否しています。政府が行った意見公募では8割が「即時原発ゼロ」を求めました。日本共産党は、明白に示された国民の願いにこたえるためにも「即時原発ゼロ」が必要だと考えます。
Q 「核のゴミ」が問題なのは?
A 処理方法なく増え続ける
原発を稼働すれば、さまざまな放射性物質を含む使用済み核燃料=「核のゴミ」が生じます。しかし、安全に処理する方法は見つかっていないことが「即時ゼロ」の大きな理由です。
国は使用済み核燃料を再処理してウラン、プルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクル計画を進めてきました。しかし、青森県六ケ所村にある再処理工場はトラブル続きで完成の見込みが立っていません。再処理した燃料を使う高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)も事故をくり返し、停止しています。再処理で生じた「高レベル放射性廃棄物」の放射能が、原料としたウラン鉱石のレベルまで下がるのに数万年、無害といえるレベルに下がるにはさらに長い時間がかかります。
使用済み核燃料は現在、福島第1原発を含む全国17カ所、54基の原子炉建屋などに設置された使用済み核燃料プールに1万4200トンが貯蔵されています(2011年9月現在)。各原発で貯蔵できるのは2万630トンで、原発をこれまで通り運転すれば、約6年で満杯となります。
これ以上、処理する方法のない危険な「核のゴミ」を増やし続け、将来の世代に押し付けることは許されません。
Q 電力は足りる?
A 猛暑乗り切り実証済み今冬も不足せず
今夏は全国において「原発ゼロ」でも電力不足は生じませんでした。政府は、今冬も節電などを行えば電力は足りるとの見通しを示しています。
政府は今夏、「電力不足」を口実に関西電力大飯原発の再稼働を強行しました。ところが、再稼働しない場合でも、供給が需要を上回る割合を示す予備率は、政府が「最低限必要」とした3%を超えていました。実際は、節電や他社からの電力融通などを行えば「原発ゼロ」でも乗り切れました。
全国でも、沖縄電力を除く9電力各管内でピーク発生日の予備率は6%以上です。政府は「節電が見通しよりも大幅に増加」したとしました。さらに、今夏は「需給のひっ迫がなかった」とした上で、「調整火力を稼働させる必要がなかった」とまで明言しています。
仮に、需給がひっ迫する場合、大口需要家などの電力使用を抑制することも可能です。いつ大事故を引き起こすかわからない原発を再稼働させる必要はありません。
Q 電気料金が上がる?
A 再生可能エネ 普及進めばコスト低下
政府が「安い」と宣伝してきた原発は、事故時に多大な被害をもたらす、最も高コストなエネルギーです。
再生可能エネルギーは導入時に一定の費用がかかります。しかし、普及や開発が進めばコストは下がります。普及が進むドイツでは発電した電気の買い取り価格(費用)が、当初価格に比べて太陽光で4割程度、風力で8割程度へとそれぞれ安くなりました。
再生可能エネルギーは、原油やウランといった燃料を使わないため、燃料の価格高騰リスクもありません。
政府試算で電気料金の上昇は、原発依存度が「0%」でも、現状をほぼ維持した「20〜25%」でも、あまり変わりません。事業費を全て料金に転嫁する総括原価方式などの制度を見直せば料金は下げられます。9月に値上げした東京電力は、貿易会社から天然ガスを対米価格の9倍もの値段で買っていました。電源開発促進税など原発推進予算の使途を転換し、再生可能エネルギー普及に使えば料金上昇の抑制は可能です。
Q 日本経済が衰退する?
A 新産業・雇用生み持続可能な成長実現
原発から再生可能エネルギーへの大転換により、新産業や雇用が生まれ、日本経済の持続可能な成長を実現できます。エネルギー自給率4%という「資源のない国」から転換することも可能です。
普及には、小型発電機の開発や製造に加え、維持・管理なども必要です。それらは高い技術力を持つ中小企業の仕事になります。風力発電機は2万点もの部品が必要で、製造には自動車産業などで培った技術を生かせます。
雇用効果は原発関連をはるかに上回ります。ドイツでは原発関連の雇用が3万人なのに対し、再生可能エネルギー関連は38万人と約13倍です。
再生可能エネルギーだけでなく、省エネの普及も必要です。住宅の断熱リフォームなど新たな雇用が生まれます。エネルギーを浪費する「24時間型社会」は地球環境の維持と両立しません。異常な長時間労働の是正、人間らしい生活や労働の実現のためにも、低エネルギー社会への転換が求められます。
「ゼロ」を口にしながら…
原発固執の民・自・公・維新
「原発ゼロ」を求める世論の広がりに押され、民主党政権や自民、公明両党なども「原発ゼロ」や「脱原発依存」を言い出しました。その内実は、原発再稼働や原発建設の再開を容認・推進するなど原発に固執するものです。
「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」。政府が9月にまとめた「エネルギー・環境戦略」は“原発ゼロ”を口にしながら、「再処理」を進めて新たな核燃料をつくり、中断している原発の建設を推進するという矛盾したものです。枝野幸男経済産業相は「2030年代までに『原発ゼロ』とすると決めたものではない」と述べ、大間原発(青森県)の建設工事再開を認めました。しかも民主党政権は財界やアメリカの圧力を受けて、この「戦略」を閣議決定することすら見送りました。
政権時代に54基もの原発を集中立地させた自民党は自らの責任に無反省です。安倍晋三総裁は原発再稼働を迫る日本経団連との懇談で「原子力の推進なしに経済成長も社会保障もあり得ない。自民党の守るべき一線だ」と表明。甘利明政調会長は、将来的に原発をゼロにすることは「不可能だ」とさえ言い切っています。
公明党は「一日も早く原発依存から脱却」(山口那津男代表)と宣伝しますが、中身は「既存の原発も稼働年数を『40年』とし、可能な限り原発ゼロを前倒しすることをめざす」(石井啓一政調会長、公明新聞9月12日付)と長期にわたり原発を続ける立場です。
「日本維新の会」は総選挙向けの公約に“30年代の原発全廃”を目指すとする一方、停止中の原発については再稼働を容認。原発の輸出も条件付きで認める方針です。
民主党政権や自公、「維新」などが、国民の求める「即時原発ゼロ」を明確に打ち出せないのはなぜか。原発の利益にしがみ続ける財界と、アメリカの圧力にいいなりになっているからです。自民や民主は、電力会社の役員・OBや電力業界の労働組合から献金を受けています。
日本共産党は綱領で財界・アメリカいいなり政治をただし、「国民が主人公」の新しい政治をめざす展望を掲げている政党です。原発に対しても住民とともに建設反対でたたかってきた歴史をもち、いま「原発ゼロ」をめざして声をあげ、立ち上がっている多くの人たちとの共同をすすめている政党です。日本共産党を選挙で大きく伸ばしてこそ、「即時原発ゼロ」の願いが実現できます。
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