2012年10月29日(月)
被災地のまちづくり 首都直下地震の防災
「住民本位」支援
東京 建築家らが取り組み
東日本大震災の被災地で住民本位のまちづくりを支援し、大震災を踏まえた東京の防災をすすめる新建築家技術者集団東京支部は28日、東京都豊島区内で「建築とまちづくり展2012『あらためて生活の豊かさを問う』―地震・津波・原発災害を体験して―」を開催しました。建築の専門家や市民ら210人が来場しました。
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会場では、会員の取り組みを「被災地への支援と復旧・復興」、「エネルギー利用、原子力依存からの脱却と環境共生」、「安心・安全のまちづくり」などのテーマにわけて展示。実行委員長の渡辺政利新建東京支部幹事は「6年ぶりに、1年かけて準備した。大震災後、市民が自らの手で社会をつくる動きが起きている。新建も居住空間とまちづくりの専門家として、今こそ出番だ」といいます。
日本災害復興学会の室崎益輝会長(関西学院大学教授)が講演し、行政依存の防災から脱却し、自治会や事業者、ボランティアなどさまざまな人が防災・減災に参加する「人間の足し算」を提起。首都直下地震の火災被害想定は過小だとして、高層マンションのスプリンクラー耐震化、感震ブレーカーの設置といった対策の必要性を強調し「事前減災は事後復興に勝る取り組みだ」と訴えました。
片方信也日本福祉大学教授は、まちづくりのあり方について「個々の土地利用のぶつかり合いで生じる影響を予測して計画するだけでなく、人間が生きる自然環境への責任も求められる」と、福島第1原発事故の教訓を語りました。
新建の鎌田一夫全国常任幹事は、被災者が仮設住宅の集会所でまちづくりを議論する様子などを紹介。復興の障害を、▽津波や放射能汚染の被害で元の場所に帰れない▽復興事業や制度が実態にあわない▽まちの復興する姿が描けない▽復興予算が流用され、被災地と関係ないところに使われる―としました。
被災地支援を報告するパネル展示では、生活再建のために早急に実施すべき制度上の課題に再建資金の拡充や復興事業による支援格差の解消などをあげ、住民が納得するまで話し合う場と時間を確保するなど「住民の力を引き出すまちづくり」が被災地再生の基本だということを示していました。