2012年10月25日(木)
主張
「離島奪還」訓練
日米一体の危険な戦争準備だ
陸上自衛隊と沖縄駐留の米海兵隊が11月に沖縄県の無人島で計画していた「離島奪還」の共同訓練が、地元沖縄などの反発で中止になる見込みです。
「離島奪還」は武力行使を伴う本格的な軍事作戦です。訓練とはいえ、武力で事を構えるのは地域の緊張を激化させます。しかも訓練が想定するように、自衛隊が米軍とともにたたかうような事態になれば、文字通り憲法に違反することになります。たとえ訓練でも憲法を踏みにじるようなものは許されず、中止や延期ではなくきっぱり断念すべきです。
アメリカの戦争支援
「離島奪還」訓練は奪われた島を奪い返すことを名目に、日本の陸自と米海兵隊が共同して上陸したたかうというのが想定です。9月にアメリカ領のグアムやテニアンなどでおこなった上陸訓練に続くもので、実施されれば国内での初めての訓練になります。
訓練が計画されたのは、那覇市の西北約60キロの渡名喜(となき)村に隣接する無人の入砂島(いりすなじま)です。出砂島(いですなじま)射爆撃場として米軍に提供されています。陸自の西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市・相浦駐屯地)と沖縄の第31海兵遠征部隊が参加する予定でした。
離島への上陸訓練や「離島奪還」訓練はもともと、アメリカの軍事戦略にそって計画されたものです。アメリカはグアムなどの米軍基地を本格的に強化し、オーストラリアやフィリピンなどにも部隊を派遣して軍事関係を強めています。アジア太平洋地域での影響力を維持・強化するために同盟国をまきこんで軍事態勢を強化・確立するのが狙いです。上陸訓練や「離島奪還」訓練はそうした戦略に役立てるためのものです。
日本が外国まで出かけてアメリカといっしょに他国とたたかうというのは武力の行使を禁止した憲法を踏みにじるものですが、他国の攻撃で奪われた日本の領土を「奪還」するなどというほとんどありそうもない前提でアメリカとの訓練を強行し、戦争を準備するのも憲法の趣旨に反します。日本の領土外で自衛隊が攻撃されたわけでもないのに、アメリカと一緒になってたたかうとなれば、憲法違反の「集団的自衛権」の行使にも当たります。
今年4月の日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交・軍事閣僚協議)の合意文書は、「南西諸島を含む地域における防衛態勢の強化」が日米同盟の「抑止力を強化する」とのべています。自衛隊の南西諸島防衛がアメリカの軍事戦略を支える役割を果たすということにほかなりません。「離島奪還」訓練がこうした狙いで行われるとすれば、日米軍事同盟の侵略的変質は明らかです。
安保なくせの声広げ
「離島奪還」訓練は尖閣諸島問題を念頭においたものともいわれますが、それ自体重大です。尖閣諸島問題は日中両政府が冷静な外交で解決すべき問題です。軍事訓練は外交努力に逆行するものであり、政府は問題の解決を困難にするような対応を自制すべきです。
野田佳彦政権はアメリカとの平時の訓練や監視など「動的防衛協力」でも、「集団的自衛権」行使でも前のめりです。
憲法を踏みにじる反動化の策動を許さないために、その根源である日米安保条約なくせの声を広げることが重要です。